【2ch長編SS】男「好きです。つきあってください」 女「・・・条件がある」(3)

 

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601: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/23(水) 20:33:53.12 ID:8z+ST3avi

ガチャ

友「はぁ。何なんだよ、マジで。」

男「本当に悪かった。反省してる。」

友「わかったから!なんでわざわざトイレなんだっつーの!おかげで今日も出なかったじゃねーか!」

男「そ、それも、なんか悪かったな」

友「いや、それはいいよ」

トイレから出ると、友は真面目な口調で話した。

友「笑ちゃんの事は、好きだ。ほら、カラオケ行っただろ?あれ以来結構仲良くなれたと思ってるんだ」

男「そうか。俺から見ても、お前といる時の笑子はいつも以上に楽しげに見えるんだよな」

それを聞くと友は嬉しそうに俺の肩を殴ってくる。

友「本当かよ!すげー嬉しいぜ!」

男「・・・なぁ。笑子が答えを出すのを待つつもりなのかよ」

友「ああ。サッカー部の先輩だろ?俺も知ってる。いい人だ。あの人の事を笑ちゃんも好きだったら、その時は仕方がないから、諦めるさ」

隣を歩く友は、いつも通りのアホ面で、お世辞にもイケメンとは言えない。
それでも今の友はブルーハーツの歌詞に出てくるドブネズミの様な美しさを感じてしまう。

男「俺はさ、お前と笑子がくっつけばいいって思ってんだ。」

友「ありがとな」

 

603: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/24(木) 03:26:08.95 ID:uw4nQaQli

放課後、鞄に教科書を詰め込んでいると、笑子が俺の席にやって来た。

笑子「友君とは、仲直りしたの?」

男「ああ。元通りだ。言ったろ?心配すんなって」

笑子「喧嘩の原因。やっぱり私が告白された事だってね。友達に教えて貰ったよ」

男「ま、まあ、でも気にすんなよ。お前はお前の答えを出せばいいんだ」

笑子「・・・それで、友君は何て言ったの?」

男「ん?」

笑子「私が先輩に告白されたって聞いて、友君は何て言ったの?」

男「ああ、関係ないって言ったな。お前が自分で決めるべきだって」

それを聞くと、笑子は俯き、寂しげに笑った

笑子「あはは。私、告白受けようかな。」

男「え?好きなのか?」

笑子「ううん。話した事ないからわかんないよ。でも、そのうち好きになれるかも知れないし」

男「そうか。おめでとう!これはお祝いしなきゃいかんですなぁ!」

サッカー部の先輩と付き合う、これが笑子の出した答えなら俺は応援する。
友も諦めると言っていたし、仕方がないことだ。

笑子「・・・うん、ありがと」

友も帰り支度が終わったのか、俺の席にやって来た。

友「よう、なんの悪巧みしてんだ?俺も混ぜろ」

笑子「・・・」

男「いや、笑子の奴、告白受けるってさ」

友「え!」

友は持っていた鞄を落とし、慌てた様子ですぐに拾った。

友「そ、そそそそそそそそそうなんだ?ほ、ほほほほほ本当に良かった。・・・そ、それじゃ」

早口でそれだけまくし立てる様に口にすると、背を向け廊下に向かって歩き出した。

男「お、おい。ちょ、まてよ!ちょ、待てって!」

俺の呼びかけも無視して、友は教室のドアに手を掛けた。

 

604: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/24(木) 03:27:33.94 ID:uw4nQaQli

笑子「止めてくれないんだ!」

友「!」

突然の笑子の大声に、友は足を止める。

笑子「私がサッカー部の先輩と付き合っても、友君は何とも思わないんだ!」

男「おい、友はお前の為をおもってだな」

笑子「男は黙ってて!」

男「はい」

しばらく口を閉じることにする。どうも今の俺は場違いな感じが否めない。
今の俺はまさに脇役。状況を第三者に伝えるだけのモブキャラと化していた。

友「・・・俺は」

振り返る友は情けない事に泣いていた。さっきはあんなにカッコイイ事を言っていたのに呆れてしまう。

友「俺は!笑ちゃんが好きです!サッカー部なんかに渡したくないよー!」

聞いているこっちが恥ずかしくなるような告白を友は涙と鼻水でグッシャグッシャになりながら叫ぶ。
これはいくら何でも酷すぎる。俺なら迷わず、サッカー部の先輩に行ってしまう。

笑子「・・・分かった。行かない。」

友「・・・べ?」

笑子はティッシュを取り出し、友の顔を拭いた。
まるで出来の悪い弟と優しい姉みたいだ。

笑子「あはは!酷い顔だよ」

友「ご、ごべん。だっで、笑ぢゃんがあ。」

笑子「友君は私がいないと、駄目だから。だから一緒にいてあげる。」

友「ゔわぁぁぁん!ありがとう!ありがとう笑ぢゃーん!ゔわぁぁぁぁぁん」

笑子「もう、馬鹿なんだから」

もうみてらんない。何だこの茶番は。俺は二人を残して教室を後にした。

 

608: 名も無き被検体774号+ 2013/10/24(木) 07:50:59.18
やべw
涙出た。

 

609: 名も無き被検体774号+ 2013/10/24(木) 10:54:14.20
高校生に戻れたら、こんな茶番をしてみたい(。-_-。)

 

610: 名も無き被検体774号+ 2013/10/24(木) 13:22:52.81
全力で本気の茶番なんて早々出来ないもんな
何でも無くしてから気付く

 

618: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/25(金) 10:36:22.15 ID:UGU7KOCJi

男「・・・茶番」

頭の片隅で何かが閃きそうな予感。

男「・・・不条理」

数学教師の教えを思い出す。

「いいですか?彼女を笑わすには彼女をもっと知る事です。穴だらけの数式では答えがでませんからね。」

頭の中でスパークが走った気がした。

男「そして、女さん自身の事」

気が付けば俺は駆け出していた。
俺の出した計算結果、それが正しい答えなのかが今すぐ知りたい。

数学教師「どうしました?そんなに息を切らして」

職員室には数学教師以外の教員は居なかった。
数学教師だけは、残業しているらしい。

男「ハァハァ!先生!俺、答えが出ました!」

数学教師「それは本当ですか!ぜひ、私にも聞かせて下さい」

笑子と友の茶番劇から俺は不条理、女さん自身と言うキーワードの他に、
新たに茶番と言うキーワードを得た。
これらを掛け合わせた結果、一つの解を導き出すことが出来た。

男「それは・・・」

壁に染み有り障子に穴ありという、ことわざがある。
数学教師以外に誰もいないとはいえ、あまり大きな声は出せなかった。

数学教師「・・・ふむ。良いのではないでしょうか。」

男「本当ですか!」

数学教師「私は不条理が苦手です。面白いかは分かりません。しかし、君の計算結果は、実に温かい。」

そう言って、にこやかに微笑むと、俺の頭に手を置いた。

数学教師「頑張りましたね、男君。私は正しいと思いますよ」

男「ありがとうございます!」

 

621: 名も無き被検体774号+ 2013/10/25(金) 15:18:15.78
悔しいが続きが気になる

 

622: 名も無き被検体774号+ 2013/10/25(金) 18:15:12.32
数学教師好きだわ

 

625: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 01:55:08.52 ID:mTUchQ0Qi

少し時は遡る
女「う、うん。・・・仲直りしなさいよ」

男「うん。」

教室にもどり、自分の席に座る。
楽しげに話しているクラスメイトを横目に一人で校庭をぼんやり眺めていた。

私は対人恐怖症という心の病気だと思う。
以前インターネットで調べたら、症状が同じだった。
一番酷かった時は人混みを歩いているだけで頭が真っ白になり、
気持ちが悪くなって道端で吐いてしまった事もある。

でも、最近は良くなってきた。女友にも指摘されたけど、
何より自分自身が良くなって来ている事を実感している。

凍りついた心がゆっくりと溶けている。そんな感じがする。
男君、女友、笑子ちゃん、友君、心から笑いあえる友達が出来たから。

少しづつ、カタツムリみたいにゆっくりと、私は未来に進む事が出来た。

でも

もし、男君と出会う事がなかったら。

もし、私があの時、男君にごめんなさいと言っていたら。

私はきっと過去を振り返るばかりで、ちっとも未来を見る事をしなかった。
凍りついた心はいつかヒビ割れ、粉々に砕け散っていたかもしれない。

楽しげに談笑しているクラスメイトを今度はじっくりと観察してみた。

女A「昨日空みたら流れ星見えたんだ~!マジ凄くない?」

メガネ女「私はUFO見たけど何か」

女A「そういうのいいから。流れ星だよ?あー私も夜空を流れたい、なーんてね」

メガネ女「牛と一緒にアブダクションされましたけど何か」

女A「私の話を聞け!このマイペースメガネが!」

思わず肩の力が抜けた。

女「・・・なんだ、私と同じじゃない。私と同じただの高校生じゃない」

 

626: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 01:56:35.73 ID:mTUchQ0Qi

席を立ち、二人の元に向かう。
変わりたい、今度は受け身じゃなくて、自分から行動して、未来に向かって進みたい!

そばまで近づくと、二人とも私に気が付いた

女「あ、の」

女A「あ!どしたの?女さん。君から話しかけて来るなんて珍しいね」

女「私も、見たよ」

女A「え!マジで?凄かったよね!私以外にも絶対誰か見てたと思ってたのよ~」

女「光の柱が降りて来たと思ったらメガネ女さんと牛がUFOに吸い込まれるんだもの。驚いたわ」

女A「って!そっちかい!」

メガネ女「ワレワレワウチュウジンダ」

女A「お前は宇宙人に連れ去られた側ちゃうんかい!」

女「トラストミー」

女A「あー、それは鳩山由紀夫か?ハァハァ、ええ加減にせぇや!」

女「あはは」

女A「女さん、君って結構面白いね。さっきも廊下でうんこうんこ言ってたし」

女「そ、それは!」

メガネ女「ユーモアセンス、あると思う」

それから、しばらくたわいも無い会話を続けた。
私は何を恐れていたんだろう。
あれだけ人を怖いと思っていたのに、少しの会話だけで、恐怖心は消えている。

私はきっと、未来に進める。

 

633: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 13:38:51.72 ID:1TxAzPl9i

まだ残業をしていくらしい数学教師を残して、職員室を後にする。

自分の教室には誰も残っていなかった。友と笑子は二人で仲良く帰ったのだろう。

男「女さん、まだいるかな」

隣の教室を覗くと、いつも通り窓際に座っている女さんの姿があった。

男「あ、女さん!まだ帰れないの?」

女「・・・ようやく帰れそうよ」

男「そうか!なら一緒に帰ろうぜ?」

女「ええ。」

まだ短い付き合いとはいえ、なんとなく女さんが上機嫌なのが分かる。

男「何か良い事あった?」

女「うん!お友達が出来たの!」

声が弾んでいる。

男「そうなんだ。どんな子?聞かせてよ」

女「うん!女Aさんと、メガネ女さん。
女Aさんはボーイッシュな感じ、メガネ女さんはちょっと変人かな。それでね」

ニコニコと楽しそうに友達の事を語る女さん。
きっと、話したくて仕方がないんだろう。
誰かに聞いて貰いたくて仕方がないんだろう。

男「あはは!それで?」

女「それから、メガネ女さんがね」

T字路が見えてもまだ、女さんの話は止まらない。
俺はワザとゆっくりと歩いた。
この道が宇宙みたいに膨張していって、あのT字路がドンドン離れて行けばいいのにって本気で思った。

女「あ、そっか。ここでお別れだね」

男「・・・あー、そういえば女さんの家の方に新しい本屋が出来たんだってな。ちょっと覗いてくかな」

女「・・・うん!」

 

635: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 15:22:49.72 ID:1TxAzPl9i

女さんの家の前に着いた。白い外壁の一軒家は、とても1人で住むには広過ぎる。
それでも、女さんがこの家で暮らしているのは、
きっと沢山の思い出が詰まっているからだと思う。

女「ん、じゃ。また明日」

手を振り、門を潜ろうとする背中に声をかけた。

男「土曜日、俺の家に来てくれないか?」

女「え?明後日?どうして?」

男「どうしてもさ。」

不思議そうな顔をする女さんに手を振り、俺は元来た道を戻り家路に着いた。
本屋は別の日にでも行くことにする。

家に帰り、台所に立つ母親に相談をする。

男「ちょっといい?土曜日の事なんだけどさ」

母「あら?土曜日?何かあったかしら。・・・あ、あー。あれね。それがどうかしたの?」

男「その、友達を招待してもいいかな。」

母「友達って、あんた何考えてるのよ」

男「い、いいだろ?それにきっと、盛り上がるぜ?」

母「おかしなこねぇ?ふふ、でもいいわ。素敵じゃない。」

男「お!おお!センキュー!」

母「沢山呼びなさいね?母さん頑張っちゃうから!」

男「は?た、沢山?1人の予定なんだけど」

母「よーし!これはご馳走かしらねぇ」

駄目だ、聞いちゃいない。まあ、多少計画は狂ったけどどうにかなるだろ。

たぶん。

 

636: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 16:02:31.20 ID:1TxAzPl9i

翌日
男「よお。」

下駄箱で友に会った。昨日の告白を思い出し、ニヤニヤしてしまう。

友「お、お前、何を笑ってんだ!」

男「ププププププ」

友「こ、こんにゃろ!」

俺の頬をつねってきた。

男「わ、わかった!笑わん!笑わないから手を離せ!」

友「ちっ!分かればいいんだよ、分かれば」

男「・・・ぶ、くくくく」

友「あ!今笑っただろ!」

男「いいえ。笑っていません」

友「そうか」

男「ブワッハハッハハ」

友「てめえこのやろぉ!」

下駄箱で馬鹿騒ぎをしていると、笑子がやって来た。

笑子「あはは!朝から元気一杯ね?」

男「よう!助けてくれよ、お前の彼氏が暴れやがって参るぜ」

笑子「わわわわ!あ、あんまり大きな声で言わないでよ!」

友「そ、そうだぞ!お前にはデリカシーってものがだなぁ」

笑子「それを言うならデリバリーだよ」

友「そうそう、お前には時間通りにピザを配達するっていうプロ根性ってものがって!デリカシーで合ってるから!」

笑子「あはは!40点かなー?」

こ、こいつら、俺の存在を忘れて2人の世界に入ってやがる。

男「あー、ごほんごほん。ちょっといいかね」

笑子「あ、なに?どうかした?」

男「土曜日、お前らも俺の家に来てくれないか?」

 

637: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 16:14:35.24 ID:1TxAzPl9i

男「次は、あいつか」

2年6組の教室を覗くと、女友が数人の女子と馬鹿笑いしている。

男「よお、久しぶり」

女友「おやおや!めんずらしいねぇ。てっきり私の事なんて完全に忘れていると思ってたよ」

男「いやー。忘れるはずがないだろ?」

そう、忘れるはずがない。女友はずっと女さんを支えてくれた人だ。だから、忘れていいはずが無い。たとえ忘れたとしても、きっといつか思い出していたに違いない。

女友「・・・目が泳いでるんですが、それは」

男「おほんおほん!所で、明後日俺の家にきてかれないか?女さんもくるからさ」

女友「え?うーん?意味わかんないけど、女っちくるならいくよ」

 

638: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 16:57:26.19 ID:1TxAzPl9i

男「あー、次は」

今回の件で、親身になって話を聞いてくれて、適切なアドバイスをくれた数学教師を呼ばない訳にはいかない。

「せんせー!この問題がわかりません」

数学教師「・・・これは、ジャンプの巻末クイズですか?」

「はい!」

数学教師「恐らく前号のジャンプを見返せば答えは見つかるのではないでしょうか?」

「ありがとうございました」

ちょうど、数学教師は廊下で生徒に絡まれている。

男「先生!今いいですか?」

数学教師「おや、男君。こんにちわ」

男「こんにちわ!明後日の件なんですけど、一つ問題が」

数学教師「問題ですか。男君、大事にトラブルは付き物です。慌てずに対処しましょう」

男「母親に話したんですけど、人を沢山呼べって言われまして。先生も良ければ来て頂けれると嬉しいのですが」

数学教師「え?私もですか?」

しばらく、数学教師は頭をかきながら唸っている。

数学教師「実に不条理ですね。構いませんよ、私で良ければ同席させて下さい。」

男「ありがとうございます」

 

639: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/26(土) 17:17:42.34 ID:1TxAzPl9i

用務員さんも誘おうかとも考えたが、それは不条理の範囲を超えて単なるギャグになってしまう。
不条理の笑いと、ギャグ。似ているようで違う。
数学教師の例で言えば、不条理はコカコーラのボタンを押したら缶コーヒーが出てきたが、
ギャグだとコカコーラのボタンを押したら自動販売機が爆発する。

男「アジアのパピヨンズ、いいコンビだった。だが、解散をここに宣言する」

誰も居ない体育館。俺は静かにマイクを置いた。
不思議と涙は流れない。特に思い出が無いから。

 

647: 名も無き被検体774号+ 2013/10/27(日) 01:59:24.22
そろそろ終盤?

 

696: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/29(火) 18:34:16.47 ID:T8WXMkypi

放課後
男「・・・」

一人になりたいとき、俺はいつも屋上に来てしまう。
フェンスにもたれて見下ろす街並みはちっぽけで、あくせく動く人間は蟻みたいだ。

男「女さん、喜んでくれるかな?」

夕陽が街全体に照らし、まるでオレンジ色の絨毯が敷かれみたいだ。
こんな綺麗な夕陽をみれば、どんな極悪人だって改心したくなるに違いない。

男「夕陽のあっち側ってどうなってんだろ?」

子供の頃、俺は夕陽に向かって走った事がある。
別に昔の青春ドラマに憧れた訳ではなくて、単なる好奇心で。
結果、夜になり迷子になって泣きながらお巡りさんに保護されたという落ちもついている。

男「・・・気になるな」

もしかしたら夕陽の向こう側に、俺の知らない未知の世界が広がっているかも知れない。

男「って!何を馬鹿な事を!んな訳あるか!んな訳あるか!んな訳あるか!」

わざとらしく肩を竦め、屋上を後にする。
夕陽の向こう側?そんなのきっと偉い学者がすでに探索とかして論文でも出してるだろ。
馬鹿な考えは止めてのんびり家に帰るとする。

 

708: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/29(火) 23:04:36.42 ID:eQTaniaTi

母「あら、あんた凄い汗ね?どーしたの?」

男「ハァハァ。いや、ちょっと身体を鍛える為に走ってた」

母「へぇ、そりゃ感心感心。今日はおでんよ」

男「いいね。先に風呂に入るよ」

風呂から出て、リビングに行くと、今日も親父がTVを独占している。

妹「あ!お兄ちゃんおかえり。今日もTV見れないんだけど何とか言ってよ!」

親父はTVに文字通りしがみついて、歯軋りしながら巨人戦を観戦している。
妹の言うとおり親父の後頭部しか見えない。

親父「とりあえず落ち着けよ?しっかりボールを見るんだ!ばっ!おいおい、そこに手を出しちゃいかんでしょ!もーう!パパが代打で出場してあげたい」

ビール腹の中年親父が何を抜かすか。

男「妹よ。諦めるんだ。ああなると親父はテコでも動かん」

妹「えー!つまんなーい!野球の何が面白いのか分からないもん」

男「はは、まあそういうなよ。分からない物ってのは分かるチャンスがあるって事なんだぜ?」

親父「お?なんだ、男。気付かない内に随分と大人っぽい事を言う様になったな。何かあったのか?」

男「ん?あ、やっぱ分かる?なんだろ、愛する意味を知った、みたいな?」

カッキーン!

親父「おっしゃ!良い当たり!抜けろぉー!オンドリャアー」

男「話を聞けよ糞親父」

妹「私、あんな風になりたくないから、野球の事は知らなくていいかも」

男「うーん。これもリスクか」

 

711: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/30(水) 00:38:08.16 ID:1ArfJtbJi

母「はいはい。みんな~おでんよ。」

母さんがおでんを鍋ごと食卓机に設置する。

親父「おお!すんばらしい!おでん最高~!」

妹「パパ。もうチャンネル変えていいでしょ?見たいのあるの!」

親父「えぇー。でもでもぉパパが応援しないと巨人負けちゃうよ?」

母「あなた!いい加減にしなさい!玉子抜くわよ!」

親父「妹ちゃん、チャンネル変えていいよ。」

妹「やった!」

妹は探偵物のドラマにチャンネルを合わせる。
それにしてもドラマの探偵はどうしてこうも変人揃いなのだろうか。

TV「く!またしても殺人を止められなかった!」

TV「またしてもか!」

母「ほらほら!妹ちゃんも席に座って!」

全員が席につき手を合わせ、いただきますを口にする。
母曰くこの儀式が料理を美味しくする秘訣らしい。





720: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/30(水) 12:12:23.37 ID:jL+VF1nvi

部屋に戻り、何と無く窓の外をのぞくと手を伸ばしたくなる様な消えそうな三日月が浮かんでいた。

コンコン

男「どうぞ。」

妹「お兄ちゃん。ちょっといい?」

男「ん?なんだ?」

妹は顔を赤くして、モジモジとしている。

妹「お、お兄ちゃん。さっき言ってたよね。」

男「何か言ったか?」

妹「あ、愛する意味を知ったって」

俺はそんな恥ずかしい事を口走っていたのか?
タイムマシンがあったらその時の俺を連れ去って時空の狭間に置き去りにしてやりたい。

男「そ、それが?」

妹「私、ね。す、好きな人ができたの。」

男「ふーん。それで?」

妹「どうすればいいの?わかんない」

涙目で訴える5つ下の妹には、まだ恋愛経験がないらしく、
初めての恋心に戸惑っているらしかった。

男「まー、経験上俺に言えることは一つだけだ」

妹「え!なになに?」

男「愛する事とは、すなわち、笑わせるということなり」

妹「え!」

目を丸くして驚いている。無理も無い。

男「好きな人を振り向かせたいなら、まずは笑わせてみろ。」

妹「そうなんだ!分かった!私、笑わせてみる!ありがとうお兄ちゃん!」

妹は顔を輝かせて俺の部屋を後にした。

 

721: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/10/30(水) 12:16:40.64 ID:VQKAbk1Ni

翌日
今日はいつもよりも早く教室に着いた。
誰も居ない教室。なんとなく教卓の前に立ち、教室を見渡してみる。

男「・・・先生か」

数学教師という人物と出会い、俺の頭の中でぼんやりと将来の夢が出来ていた。
中学時代は、プロ野球選手になりたいと本気で思っていたけど、
ヒジを悪くして俺はその夢を諦めた。

男「・・・学校の先生に、俺は成りたい。」

口に出すと、ぼんやりとしていた物が形を持ち始める。

男「俺は、学校の先生になりたい!」

野球が出来なくなった時、何か大切な物も音を立てて消えてしまった気がした。
もう、夢を見る事も出来ない何て考えていた。

友「なれよ、絶対なれ!」

いつのまに教室に入っていたのか、友が真面目な顔で俺を見ていた。

男「聞かれてたか。照れるな」

友「前、笑ちゃんが俺に話してくれた。野球出来なくなったんだってな。お前が無茶ばっかするのは、それが原因なんだろ?」

教室の外を見ると、笑子が立っていた。
2人で登校してきたんだろう。笑子は泣きそうな顔で俺を見ていた。

友「簡単に死のうなんてすんな!お前は先生になれ!笑ちゃんを泣かすな!友達だろ!」

別に死のうなんて考えた事はない。
でも、どうなっても構わないとは思っていた。
マウンドに立つことが出来ない俺には存在価値がない。
だから、それ以外の事で、俺は自分の居場所を作りたかった。

友「人を笑わせる前に、自分が笑えるようになれよ!」

俺が女さんを好きになった理由。

それは、

上手く笑えなくなった自分と少し似ていたから。

俺が彼女を必死になって笑わそうとしていたのも、俺自身を彼女に投影していただけなのかも知れない。

男「・・・なるよ。学校の先生に。それが、俺の夢だ」

友「俺はお前の友達だ。応援するよ」

笑子「良かったね!本当に良かったね!新しい夢ができて。私、嬉しいよ。嬉しくて涙がでるよ」

喜ぶ友人2人を見ながら、俺の心をゆっくりとぶ厚い暗雲が覆い始めているのを感じていた。

 

724: 名も無き被検体774号+ 2013/10/30(水) 14:08:00.70
なんで男君が女さんを好きなのかわからなかったけど、これで少しスッキリした

 

725: 名も無き被検体774号+ 2013/10/30(水) 14:30:50.14
話がだんだん濃くなってる

 

728: 名も無き被検体774号+ 2013/10/30(水) 17:23:51.81
期待

 

742: 名も無き被検体774号+ 2013/10/31(木) 23:56:53.06
はよ

 

761: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/02(土) 22:58:16.25 ID:psxc3UCvi

昼休み
男「女さん。昼飯を一緒に食べよう」

女「そうね」

久しぶりに体育館の裏に2人で行く。
この場所は俺が初めて彼女を笑わせた場所だ。

男「・・・」

女「どうしたの?今日の男君、ちょっと悲しそうに見えるけど」

男「そんなことないよ」

俺が女さんを好きになったのは、ただ俺と似ていたから。

それは、本当に女さんの事を好きになったと言えるのだろうか。

本当に彼女の事が好きなら、好きって言えるはずだ。

俺は女さんに顔を向けた。

男「女さん、俺は君の事が、」

好き。

あれ?

言えない。

前はあんなに簡単に言えた言葉が、喉の奥でつっかかって出てこない。

女「どうしたのよ。」

心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。

男「あぁ、最悪だ」

気が付いてしまった。
俺が彼女を好きになった本当の理由を理解してしまった。

俺は、彼女を憐れんでいただけ。
可哀想な自分と重ねていただけ。
彼女を好きに成る事で、どうしようもない自分を少しでも許せると思っていただけだったんだ。

 

792: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04(月) 19:40:56.16
やっと追いついた
幸せにしてやってくれ…!

 

811: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/05(火) 22:03:38.45 ID:eU8IBEOEi

男「俺は」

俺は彼女を騙していた。

自己満足だけのために。

あの時好きでもないのに、女さんの事を好きだと言ったんだ。

男「俺は、君に謝らないといけないことがある。」

女「え?謝る?」

これ以上、嘘をつきたくない。

男「俺は君に告白しただろ?好きだって。」

女「・・・ええ。」

優しく微笑んでいた表情が少しづつ強張っていく。

男「本気じゃなかったんだ。」

女「・・・え?」

男「あれは、君に向けた言葉じゃなかったんだ。」

女「・・・嘘だったの?」

男「・・・ああ」

女「私を騙して、影で笑っていたの?」

男「それは違う」

女「私の事が、好きではないの?」

男「・・・それは」

咄嗟に言葉が出なかかった。重苦しい沈黙が、2人を包む。
遠くの方でチャイムが鳴っているのが聞こえた。

女「・・・もう、話しかけたりしないで。私に近づかないで下さい」

女さんは立ち上がり、俺に背を向け歩き出した。
どんどん距離が離れて行く。俺は追いかける事も、声をかける事もしなかった。

放課後になっても、帰り支度をする気にならない。
教室からクラスメイトが全員吐き出され、
下校の放送が流れても俺は何処にも帰る気がしなかった。

担任「何してる、教室を閉めるぞ」

男「・・・」

学校を出て、汚い野良犬みたいに街を彷徨い歩いた。
なんだか胸の真ん中に穴が空いてしまった気がして、手を当ててみる。
当然、空いてはいなかった。

男「・・・女さん」

好きでもないはずなのに、気が付いたら女さんの事ばかり考えている。
女さんの笑った顔が頭の隅で常に浮かんでいる。

男「・・・優越感に浸りたかっただけだったのかもな」

きっと今の俺は世界で一番醜い男に違いない。
ノートルダムの鐘でも衝きたい気分だ。

 

812: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/05(火) 22:06:49.15 ID:eU8IBEOEi

翌日
今日は、いよいよ例の計画を実行する日だ。
しかし、女さんは来ないだろう。
つまりこの計画の半分以上はやる価値がないものだった。

母「男?暇なんでしょ?あんたもリビングの飾り付けを手伝いなさい。」

ベッドで寝ていると階下から母さんの声がして、仕方なしに起き上がる。

男「分かった。今行くよ」

リビングには既に笑子と友が来ていて、妹と一緒に折り紙を折っている。

友「よう!なんかこういうの久しぶりだぜ」

笑子「あはは!楽しいねぇ?妹ちゃん」

妹「うん!喜んでくれるかなぁ!」

母「ふふふ。ありがとうね。手伝って貰っちゃって。きっと喜ぶわよ」

気を紛らわす為に俺も壁にボンボンを貼り付ける。

昼過ぎに、笑子たちとクラッカーやパーティグッズを買いに町に出た

男「クラッカーこんなに必要か?」

友「まあ、多いに越したことは無いだろ。あ、このタスキいいな。【今日は私が主役です】ってなぁ」

笑子「あはは。あ、こっちのウサギのカチューシャ可愛い!みんなでつけよう!」

友「えぇ!俺はしない!笑ちゃんだけしろよ!」

笑子「あ、そういう言い方するんだー。へー」

友「あ、ああ。ご、ごめん。笑ちゃん、付けるから!俺も男も付けるからさあ!冷たい目を向けないでぇ」

くだらないコントを見ながら胸が痛む。
この2人には、まだ昨日の事を話していない。
女さんが来ない事をこいつらは知らない。

 

813: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/05(火) 22:09:25.18 ID:eU8IBEOEi

家に戻ると母さんが何処からか引っ張りだしてきたイルミネーションを天井から吊るしていた。

男「お、おいおい。危ねえから椅子から降りろ。俺と友がやるから!」

笑子「あはは!おばさん張り切り過ぎー」

母「あら、じゃあお願いしようかしら。そろそろターキーが焼き上がるころかしらね」

そう言うと、鼻歌交じりにキッチンに向かう。今にも踊り出しそうで恐ろしい。

男「相当浮かれてやがる」

笑子「ふふふ。なーんか、素敵」

食卓机にはケーキやらピザやらサラダやらが所狭しと並んでいる。
どれも母さんの手作りらしい、かなり気合が入っている事は間違いない。

ピンポーン

笑子「あ、女さん来たんじゃない?」

男「・・・」

ドアを開けると、数学教師と妹の友達が数人いた。
妹の友達は何を勘違いしているのか魔女の変装をしている。

数学教師「こんにちわ。随分賑やかですね」

男「・・・先生」

数学教師と妹の友達達をリビングまで案内する。

友「げぇ!なんで数学教師がきてんだよ!」

笑子「え!やだ、こんな日に家庭訪問?」

数学教師「ははは、違いますよ。今日は教師として来たわけではありませんから。・・・おや?女さんはまだ来ていないのですか?」

男「・・・多分、彼女は今日来ません」

数学教師「ん?それは、一体どういう事でしょうか。」

男「俺は、嘘つきだったんですよ。最低な人間だったんです」

俺は女さんに告白し、笑わせる事が出来たら付き合うと言う条件を貰った事を話した。
今まで、俺は女さんと付き合いたいが為に、必死で笑わそうとして来たことを話した。

そして、昨日女さんに好きと言えなかった事、
俺が本当は女さんを好きで告白した訳ではない事を話した。

 

814: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05(火) 22:15:08.87
なぜこの展開にした

 

815: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/05(火) 22:15:13.37 ID:eU8IBEOEi

数学教師「・・・なるほど、貴方が女さんを笑わせようとしているのには、そんな理由があったのですか」

男「はい。隠していて申し訳ありませんでした」

数学教師「構いませんよ。」

母「あ、先生。そこのソファに座って下さい。お茶も出しますから」

数学教師「どうもすみません。私、場違いではありませんか?」

母「場違いだなんて、とんでもないですよぉ。ほら枯れ木も山の賑わいと言いますでしょう?」

笑子「お、おばさん。それ使い方が」

数学教師「ははは。では、遠慮なく今日は楽しませて頂きます」

数学教師はソファに腰を下ろした。俺も隣に腰を下ろす。

男「本当にすみません。先生には、色々お世話になってたのに」

数学教師「良いんですよ。謝る必要なんてありません」

数学教師は床に落ちている折り紙を一つ手に取ると、細い指先で何やら折り始めた

数学教師「懐かしいですね。私も子供の頃は沢山折り紙を折りましたよ。・・・と、ほら、カブトです。」

男「はぁ」

数学教師「大人になるとは、どういう事だと思いますか?」

大人になる事。20歳になれば自動的に大人になるのだろうか?たぶん、そんな事はないと思う。

 

816: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/05(火) 22:16:48.21 ID:eU8IBEOEi

男「たぶん、慣れる事だと思います」

コーヒーの苦さに慣れる。人とのコミュニケーションに慣れる。世の中の汚さに慣れる。
そうして、俺達はつまらない人間になっていく。たぶんそれが大人なんだ。

数学教師「ふふふ。随分とひねた答えですね。」

男「・・・」

数学教師「貴方から見て、多分私は大人でしょう。貴方のお母さんも大人でしょうね。」

男「はい」

数学教師「男君の言った様に私達は君達よりも色々な事に少し慣れているかもしれません」

妹の友達が数学教師に飴玉を手渡した。
数学教師は笑顔で受け取り、少女の頭を優しく撫でた。

数学教師「私だって昔は少年でした。今の君達の様に息苦しさを感じながら生きていたんですよ。」

男「はい」

数学教師「大人になること、それは子供だった事を自覚し振り返る事ができるか?ですよ」

男「・・・振り返る?」

数学教師「ふふふ。男君、これは教師としてではなく、一人の大人として言わしてください」

そういうと、数学教師は身体を向け、手を俺の肩に乗せた

数学教師「Don’t Think. Feel!」

男「・・・」

数学教師「格闘技はわかりません。しかし、この言葉は恋愛にも通じると思いませんか?」

男「・・・」

数学教師「自信を持って子供だった事を振り返れる人間こそ、本当の大人です。その為に、君は今逃げてはいけない。」

俺の心の中から熱い何かが湧き上がってくる。
せきたてられるように、ソファから立ち上がる

男「先生!俺、チョット出かけてくる!」

 

818: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05(火) 22:27:17.20
数学教師なのに哲学すごいな

 

819: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05(火) 22:28:44.47
いいぞ

 

820: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05(火) 22:32:36.07
はよおおおおおーーー!

 

824: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/06(水) 00:32:23.09 ID:xb2ob11Pi

Don’t Think.

男「考えるな!」

Feel!

男「感じろぉぉぉぉ!」

ドアを蹴り飛ばし、家を出た。

ひたすら足を交互に動かし走る。目的地は、もちろん女さんの家。
何も考えず、ただがむしゃらに、誰よりも早く、一秒でも早く。

男「ファタタタタタタタタ」

魚屋が呆気に取られた顔で俺を見ている。
八百屋が腰を抜かして倒れた。子供が水風船を俺に投げつけてくる。

でも、そんなの関係ねぇ!

成金の家のワン公が俺に向かってバカみたいに吠える。
ゴミ捨て場のカラスが俺に向かってカアカアと鳴く。
ベビーカーの中の赤ちゃんが泣き出す。

でも、でも、でも、でも!

そんなの関係ねぇ!

男「ファタタタタタタタタ」

気付けば目の前に女さんの家があった。

男「オォワタァァァァァァァァ!」

ガラ

女「え?なんの音?」

二階の窓から女さんが顔を出した。

男「女さん!俺だ!男だ!」

女「!」

ピシャッ

俺の顔を見るなり、窓を閉めてしまった。

 

825: 名も無き被検体774号+ 2013/11/06(水) 01:01:58.86
吹いたwwww

 

826: 名も無き被検体774号+ 2013/11/06(水) 01:03:38.44
勢いにわろた

 

827: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/06(水) 06:47:50.47 ID:xb2ob11Pi

男「聞いて欲しい!」

最初に告白した時、俺は本気で好きになってはいなかったかもしれない。
でも、一緒に過ごしているうちに、笑わせようと彼女の事ばかり考えているうちに、
可憐な笑顔をみるたびに、彼女の存在が心の中で大きくなっていった。

男「さっき、俺は女さんにもう一度告白しようとした!でも、出来なかったんだ!好きだって、そんな簡単な言葉が口に出せなかった!」

玄関のドアが開き、女さんが出てきた。

女「何よ!もう近づかないでって言ったでしょ!」

男「そんなの無理だ!出来るわけないだろ?」

女「これ以上私を苦しめないで!悲しませないで!」

男「好きなんて言葉じゃ足りないんだ。」

ゴスペラーズも言っている。
本当に人を好きになると、簡単に言葉に出せなくなってしまうんだ。

男「もう女さんが居ないと、俺は生きて行けそうもない。」

女「・・・なによ、それ」

男「つまり、これは、なんだ。その、あ、あ、あ、愛の告白って奴だ」

愛って言葉は妙に生々しくて、口にするだけで顔が熱くなってしまう。
目の前の女さんは目を丸くして俺を見ている。
恥ずかしくて視線をそらした。

 

832: 名も無き被検体774号+ 2013/11/06(水) 10:38:42.82
なんか、ウザ暑苦しいキャラだな

 

841: 名も無き被検体774号+ 2013/11/06(水) 22:35:43.51
>>832
そこがいいんじゃん

 

837: 名も無き被検体774号+ 2013/11/06(水) 20:48:48.64
まだかなまだかなー

 

850: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/07(木) 22:36:42.67 ID:sz/kOCQfi

女「・・・ぷっ!あはははは!」

男「な、何も笑うことないだろ」

女「だって!すんごく顔が赤い!耳たぶまで真っ赤!」

男「し、仕方ないだろ!ほ、ほら!俺の家に行こう!」

女「あ、そういえば今日何の集まりなの?」

男「パーティだよ。」

女「パーティ?こんな普通の日に?」

男「普通じゃないさ。特別な日だ。さあ、行こう」

女さんの手を取り走り出す。
日が暮れる前には家に着かく必要がある。時間がない。

女「え!ちょ、ちょっと!なに?走るの!」

男「悪いけど全速力で頼むよ。6時には着かないとまずいんだ」

女「は、はあ?訳を話しなさいよ!」

男「ま、そのうち分かるさ」

俺たちは走り出した。今なら夕日の向こう側にでも何処にだって行ける気がする。
でも、それは今度にとっておこう。

 

853: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/07(木) 23:03:32.32 ID:sz/kOCQfi

家に戻るとリビングの食卓椅子に皆座っていた。
全員三角形のパーティハットを頭に乗せていて、手にはクラッカーを用意している。
すでに部屋の飾り付けは終わっていて、イルミネーションもピカピカうるさく光ってる

男「ただいま」

母「何してんの!はやく席に着きなさい!リビングの電気も消す!クイックリープリーズ!」

男「あ、あはん」

数学教師「男君、そして、女さん。さあ、早く頭にこれを載せなさい。このクラッカーは一人二つ用意されています。さあ、手にとって」

女「な、なんで数学教師が?」

友「あ、あのよ。今更なんだけど、これ何のパーティ?」

笑子「え?クリスマスでしょ?」

友「馬鹿!今日は11月9日の土曜日じゃねーか!」

笑子はクラッカーを友に向け、紐に手を掛ける。こいつ、撃つ気だ。

笑子「え?なに、聞き間違いかな?私の事馬鹿って言ったの?」

友「え?ち、ちがうよ?馬鹿お前男お前馬鹿だろ!」

母「は?うちの子が馬鹿ですって?」

男「お前らとにかく落ち着け!」

 

854: 名も無き被検体774号+ 2013/11/07(木) 23:15:13.89
母ww

 

855: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/07(木) 23:22:56.18 ID:sz/kOCQfi

母「いいわね!私が席を立つと同時にクラッカーを鳴らす!いいわね!」

一同「ラジャー」

ガチャ

その時、玄関のドアが開いた音がした。

母「シーっ!誰も喋らないで!いいわな?」

一同「ラジャー!」

この見事な一体感。

ガチャ

リビングのドアが開いた

女友「あのぉ、お邪魔します。」

母「誰だお前!」

母が席を立ちあがった。

よし、今だ

一同「パーン!」

母「やめろぉ!」

 

856: 名も無き被検体774号+ 2013/11/07(木) 23:23:27.17
このスレ最初はクソスレとか言われてたけど今は人気しかないな

 

858: 名も無き被検体774号+ 2013/11/07(木) 23:46:18.88
誰だお前でワロタ
ビーストウォーズリターンズ思い出した

 

859: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/08(金) 01:58:22.43 ID:oXIc4K0ai

親父「お、おいおい。何だこの騒ぎは?」

女友の後ろから、親父が出てきた。

母「あなた!」

親父「おお?え?な、なにこれ?」

親父が目を丸くしてリビングを、見回している。

母「ほら!みんな!なにしてんの?クラッカーを鳴らしなさい!」

一同「パーン!」

親父「おお!ビ、ビックリした!」

母「あなた。今日は何の日か覚えてるでしょ?」

親父「ん?今日?俺の誕生日は、先月だったよなぁ?」

母「あなた!まさか忘れたの?」

親父「え?ま、まさか!覚えてるさ!結婚記念日だろ?」

母「あーなーたー?」

我が家の記念日はやたらに多い。
それぞれの誕生日はもちろん、結婚記念日、親父が母さんにプロポーズした記念日、
初デート記念日何てのもある。親父が忘れるのも無理は無い。

妹「もう!パパ!今日はママがパパの告白をOKした日だよ!」

親父「あ、ああ!そうそう!忘れるわけがないだろ?」

母「ふふふ。あの時のあなたの顔、今でも思い出すわ」

親父「そうだな。あれから20年か。今でもあの時の事を思い出すと心臓がバクバクする」

母「私もよ」

二人は俺達の存在も忘れ、見つめあっている。
たぶん今、二人の頭の中ではホール・ニュー・ワールドでも流れてるんじゃないか?
ディズニーだったら観客置き去りのミュージカルが始まる所だ。

友「お、おいおい。まさか今日のパーティってこれじゃねーだろーなぁ!」

妹「そうだよ」

友「ぜっんぜん俺達関係ないんですけど!」

笑子「あはは!でも、とっても素敵じゃない。おばさん!おじさん!おめでとう!」

数学教師「さあ、とにかく、折角のパーティですから楽しみましょう!」

親父達を放っておいて、俺達は俺達でパーティを楽しむことにした

女友「あの、全然話が見えないんですが。なにこのアウェー感」





868: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/08(金) 13:13:10.31 ID:oXIc4K0ai

ピザ、ターキー、パスタ、チキンにポテトにショートケーキ。
俺達は気の行くままに食事をし、この場の仲間達と会話を楽しんだ。

男「楽しんでる?」

女「ええ。気分は最高よ」

男「OK!そいつは最高にハッピーなお知らせって奴だ。」

女さんも積極的に会話をしているみたいで、今では妹達の輪の中に溶け込んでいた。

親父「あー、皆さん。楽しんでくれている中で、申し訳ない。一度、席に戻ってくれませんか?」

親父が手を叩きながら、声を張り上げる。

友「OK。おい、みんなボスの声が聞こえたろ?さあ!ケツを蹴り上げられる前に席に戻るんだ!」

笑子「なんで友君が仕切ってるのよ!」

全員が席に座ると、親父が口を開いた。

親父「皆さん、楽しんでるみたいで何よりです。」

にこやかに全員に目配せをする。

親父「こんなサプライズパーティがある何て思いもしませんでした。クラッカーの音と共に会社の疲れと機密情報も何処かに飛んで行ってしまいましたよ。その辺に転がってるかも知れません。機密情報を見かけたらシュレッダーにかけておいて下さい」

一同「ワッハッハ!」

いつもTVのまえで巨人を熱烈に応援していて、妹にとことん甘く、
母さんに頭が上がらない親父の姿はそこにはなくて、別人のように立派な大人が居た。

親父「もう少しだけ、退屈な私の話に付き合って下さい。どうぞ、食べながら、飲みながらで結構です。」

 

869: 名も無き被検体774号+ 2013/11/08(金) 15:15:01.13
OK!

 

870: 名も無き被検体774号+ 2013/11/08(金) 16:38:04.24
いいね

 

872: 名も無き被検体774号+ 2013/11/08(金) 17:21:15.12
親父age

 

874: 名も無き被検体774号+ 2013/11/08(金) 18:50:31.04
なにこの家庭楽しい

 

882: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/09(土) 15:30:47.27 ID:OMAWgkXJi

親父「私が社会人に成り立ての頃、右も左も分からずに、ただ必死になって毎日仕事をしていました。そんな時の毎日の楽しみは、毎朝の電車で見かける一人の女性でした」

誰もが親父に注目し、一言も口を挟まない。

親父「年齢は私と同じか少し上。いつもきちんとしたスーツを着ていました。その清楚で美しい姿に一目で恋してしまった。私は毎朝、彼女と同じ車両に乗り、彼女の視界にギリギリ入るくらいの所で立っていました。」

母さんは顔を赤くしながら親父をみている。きっと一字一句聞き漏らしたくないのだろう。

親父「最初は彼女を見るだけで良かった。でも、すぐに話がしたくなった。私の事を知って貰いたくなった。」

そこで親父は照れ臭そうに頭をかいた。

親父「ははは。いやぁ、恥ずかしいものですね。すみません、白ワインを一口頂きます。」

照れてる親父も初めてみた。

親父「私は当時、恋愛経験の一つもなくてね。彼女に話かけることができずに半年が過ぎてしまった」

 

883: 名も無き被検体774号+ 2013/11/09(土) 16:26:23.79
ドキドキ///

 

886: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/09(土) 18:47:52.98 ID:OMAWgkXJi

親父「そんな時、仕事で1年間マレーシアに出張に行くことが決まった。マレーシアに行くことは別に苦では無かったけどね。電車で彼女に会う事が出来なくなるのが嫌だった。」

友「oh my god!!こんな悲劇って他にある?」

女友「Fuckin shit!何てことなの!」

数学教師「君達、私語は慎みなさい。」

親父「ははは。でも考えてみると、彼女は私の事何て知らない訳だ。私の一方的な片思いだからね。それに、私だって、一年間もマレーシアにいれば彼女の事何て忘れるに決まってるだろ?」

そう言うと親父は再び白ワインを口にする。

親父「彼女の事は忘れる事にしたよ。でも、最後にマレーシアに行く前に、ほんの少しでもいいから、話かけてみることにしたんだ。」

ゴクリ。誰かの生唾を飲み込む音がする。
親父は反応を確かめるように全員に視線をおくる。
会議慣れしてるんだろうな。

 

893: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 00:09:17.05 ID:7Gx1WCKAi

親父「マレーシアに行く前日。いつもの車両に彼女を見つけた。拳を握りしめて、何度も深呼吸をして、何駅か過ぎたとき、ようやく決心がついて彼女に近づいた」

それにしても、いつもガハガハ馬鹿笑いしている親父からは想像も出来ない程の純情っぷりだ。
この青年からどう成長するとこの中年親父に成り果てるのだろうか。

親父「徹夜で考えていたスマートな言葉は、まるで口から出てこなかった。戸惑う彼女の前で数分間私はただ黙って突っ立ていたよ。」

笑子「あはは!おじさん!それじゃあ不審者だよ!」

親父「参ったね。その通り、不審だったと思うよ。」

 

894: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 00:15:33.16 ID:7Gx1WCKAi

回想
彼女の前に立ったは良いが、頭の中が真っ白になってしまった。
プレゼンで予期していない質問をされた時もこんな風に頭の中が真っ白になった事がある。あの時は先輩の助け舟があったけど、今は誰も助けてくれはしない。

とにかく、とにかく、何か声を出さなければ。

若親父「あ、あの!」

声が上擦った。

女性「は、はい!」

若親父「わ、私は!明日から一年間マレーシアに行きます!」

女性「はぁ」

若親父「その前に!貴女に伝えたい言葉がある!聞いて下さい」

深く息を吸い込む。肺の奥の奥まで。そして、息を止めて一気に吐き出した。

若親父「貴女は私を知らないと思います。でも、私は貴女をずっと見てきた。上手く言葉に出来ないけど、私は貴女に恋しています。好きです、付き合って下さい」

乗客が全員、私たちに注目しているのが分かる。目の前の女性は口を手で覆い隠している。

女性「あ、の」

若親父「すみません。こんな馬鹿みたいな事をして。皆さんも朝から大変失礼致しました」

振り返り、乗客に頭を下げた。

女性「わ、たし」

何か言おうとしている女性の口を手で制した。

若親父「一年後の今日、私はこの時間のこの車両のこの場所で貴女を待っています。さっきの答えはその時に聞かせて下さい」

女性「そんなの、忘れてしまいます。気持ちも変わってしまうかもしれませんよ?」

若親父「でも、私は忘れない!そして、気持ちも絶対変わりませんよ!」

私の身勝手な言葉に、女性は苦笑交じりにこう言った。

女性「こんな告白、忘れようがありませんよ」

 

896: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 03:30:02.06
親父かっけぇ

 

898: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 08:57:51.80
親父ィ.…

 

900: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 09:42:04.25 ID:i8hvjGcTi

回想終わり
親父「そして、私はマレーシアに旅立ったんだ」

笑子「それで、どうなったんですか?一年後、その女の人はいたの?」

親父「それがね、話はそう簡単にも行かなくてね。出張の期間が半年延長してしまったんだよ」

友・女友「Holy shit!」

 

901: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 10:13:31.78 ID:i8hvjGcTi

回想
マレーシアから日本に戻ると、まずその寒さに震えた。
マレーシアは一年を通して常に暑く私の皮膚も真っ黒に日焼けしている。

会社には翌日から出勤する事になっていた。
まあ、出張報告やらの事務処理で忙殺される事は目に見えている。
そんなことは、問題では無かった。

彼女はあの日、電車で私を待っていたのだろうか?

もし、あの時の告白をまだ彼女が覚えてくれていて、私にどちらかの答えを出そうとしていたとしたら。

私は何て酷い人間なんだろうか。

その事を考えると夜も眠る事が出来なかった。
いっそ、彼女が告白の事何て微塵も覚えていない方が、まだ良い気もした。

翌日、もし彼女がまだあの車両を利用していて、今日も乗っているとしたら、
私はあの日の事を謝る事が出来るかもしれない。
そんな事を考えながら電車に乗り込んだ。

しかし、そこに彼女は居なかった

若親父「・・・はは。私は何を期待しているんだ。居る訳がないだろ。いい加減忘れるんだ。」

 

902: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 10:41:45.33 ID:i8hvjGcTi

女性「何を忘れるの?」

背後から声を掛けられ飛び上がる程驚いた

若親父「あ、貴女は。」

そこには、あの日と変わらぬ女性の姿があった。

女性「ホームに貴方を見つけてね。驚かせたくなりました。それにしても、逞しくなられましたね」

若親父「あの、私の事をまだ覚えているんですか?」

女性「ふふふ。忘れる訳がありませんよ。あの告白から毎日カレンダーをめくりながら、一年間待っていたんですよ?」

若親父「そ、んな。私はあの日、電車に乗らなかった。最低な男です。それでも貴女は許してくれるのですか?」

女性「正直、あの日は仕事を休んで家で泣いていました。悲しかったわ。でもね、貴方は言いました忘れないし、気持ちも変わらないって」

そんな言葉まで覚えてくれているのか。

女性「私はその言葉を信じて、毎日この車両で貴方を待っていたんですよ?」

生まれてから今まで聞いた中で、一番胸に響いた言葉だった。私の胸は一杯になり、声を出す事も出来ずにいた。

女性「あの時の告白の前から、貴方の事は知っていましたよ?だって、毎朝同じ車両に乗っているんだもの。それに、私に気があるって事も分かってましたよ?」

若親父「ははは。お見通しでしたか」

女性「ふふふ。コホン。では、あの時のお返事をしますね」

 

903: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 10:59:37.13 ID:i8hvjGcTi

回想終わり
親父「・・・少し長く話し過ぎたね。これで私の話は終わりだ。」

笑子「え?それで、その女性の答えは何だったんですか?」

笑子の疑問に親父は母さんの肩を抱き寄せて答えた。

親父「その女性が今の妻だよ。さぁ、みんなグラスを手に取って、もちろん未成年はジュースだ。乾杯をしよう」

全員がグラスを手に取る。

親父「えー!では、妻と私の変わらぬ愛、そして、来年の巨人軍優勝を祈りまして、カンパーイ!」

一同「カンパーイ!」

みんながグラスを掲げる中、一人だけグラスを下ろした人がいる

数学教師「申し訳ありませんが、その掛け声では私はグラスを掲げる事はできませんね」

親父「んー?あなたは、学校の先生ですかな?」

数学教師「最後をこうしませんか?くたばれジャイアンツ!ゆけゆけタイガース来年こそ優勝!カンパーイ!」

親父「あんた、トラキチか」

数学教師「くたばれジャイアンツ!」

 

904: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 11:37:26.63 ID:i8hvjGcTi

さっきまであんなにカッコ良く見えた親父が今では数学教師と野球の話で熱く語りあっている。

数学教師「タイガースファンこそ、真のプロ野球ファンだと、私は考えています。だいたいジャイアンツを応援して何が面白いのでしょうか」

親父「ガッハハ!野球の華はホームランよ!巨人といえば、ホームラン!ガッハハ!」

完全にいつもの親父だ。それにしても数学教師がトラキチだったとは、あの人は野球とか興味ないと勝手に思っていた。

女「素敵なお話だったわね」

男「ん?まーそうだね。あの親父が昔、あんな風だったとはなぁ」

女「私、男君にまだ返事をしていないわ。」

男「あー。でも、俺はまだ君を笑わせていないだろ?」

女「ううん。沢山笑ったわ。毎日とても、楽しいもの」

このパーティはもう終わりが近づいている。妹の友達はみな帰ったし時計は10時を指している。

友「おう!男!俺達ももう帰るぜ?またな」

笑子「楽しかったよ!また、パーティ開いてよね!」

女友「次はもっと早く来るから!女っち、またねー!」

花火大会の終わりの様に、人が少なくなると急に寂しさが襲ってくる。楽しい時間は寂しさをより深く感じさせるんだ。

 

906: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 12:32:05.41 ID:i8hvjGcTi

数学教師「来年からタイガースの快進撃が始まるんですよ」

親父「ガッハハ!あんたたちは毎年毎年あきもせずにそればっか言っとるけどね!来年は巨人軍よ。」

男「こっちはまだやってるのか」

母「ほら!あなた!いい加減なさい!先生も、そろそろお帰りになられた方がいいのではありませんか?」

数学教師はしこたま酒を飲んだのか、フラフラになりながら帰って行った。
残ったのは、俺と親父、母さんと妹、それに女さんだけだった。

母「女さんも、そろそろ帰らないと、ご両親が心配されているわ」

女「いえ、私の両親は、もういませんから」

母「そうだったの。ごめんなさい。辛い事を思い出させて。」

女「いえ、いいんです。もう、昔の事で忘れました」

そう言って笑う女さんは、やっぱり何処か寂しそうに見える

親父「もう遅いからね。今日はうちに泊まるといい。なあ、妹ちゃん、お姉ちゃんと一緒に寝なさい」

妹「うん!お姉ちゃん大好き!」

いつのまに馴れたのか、妹は女さんに抱きついた。

女「いいんですか?」

親父「何を遠慮する事がある?君と私達は一緒の飯を食べて笑い合った仲じゃないか。これ以上の絆が何処にある?君はもう我が家の一員だよ」

母「ふふふ、可愛い娘が1人増えたわね」

茶番でもいい。おせっかいだって構うもんか。
寂しそうな女さんを俺はもう見てられなかったんだ。

だから、俺は今日家に招待した。

もう一度、人の愛を温かさを感じて貰いたくて。

 

919: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 18:20:08.39 ID:cJdUaeloi

女「・・・ありがとう」

親父「ま、とにかく。今日はもう疲れたろう。風呂にでも浸かってゆっくり休みなさい」

女「はい」

妹「私も一緒に入る」

親父「さてと、私も見るかな」

母「あなた!」

親父「お、おいおい、何を勘違いしてんだよ。スポルト見るんだってスポルト!」

 

921: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 18:58:30.64 ID:cJdUaeloi

女さんは日曜の昼過ぎに家に帰った。
俺はもちろんやましい事なんて一つもしてない。
ただ女さんが座った椅子の座布団を、こっそり俺のと交換したってだけだ。

月曜日
教室に入り席に着くと、友と笑子がやって来て、土曜日のパーティの話で盛り上がった。

笑子「あはは!それにしても、数学教師が居たのには驚いたよ!なに?親戚?」

友「数学教師メチャクチャ酔ってたよな?タイガースがどーのこーの、かなりレアだぜあれは」

男「あの人にはお世話になってるからな」

笑子「だったら授業もちゃんと受けなさいよ!」

友「そーだそーだ!」

男「お前に言われたか無いわ!」

生徒あ「おい、男君。隣のクラスの女子が君を呼んでいるぞ?」

隣のクラスの女子か。わさわざ呼び出す何て窓枠事件以来の俺のファンかな?

男「なんだ、女さんか。どうかした?」

女「ご期待に添えなくて悪かったわね。」

男「わざわざ呼び出す必要なんかないのに。」

女「放課後、体育館裏に来ること。いい?」

男「あの、ジメジメした場所?勘弁してくれよ」

女「何度も呼び出したくせに!」

男「ははは。冗談だよ。その話はここでは出来ない事?」

女「ええ。あの場所じゃないと駄目。絶対来なさいよ!」

それだけ吐き捨てる様に言うと、女さんは隣の教室に帰って行った。

放課後、グラウンドにはサッカー部と野球部が声を張り上げている。
体育館では卓球部と、バスケ部が練習をしている。

いつも通りの放課後。

男「さてと、行くか」

体育館裏で俺を待っている人がいる。

その人はきっと、笑顔で俺を待っている。

そして俺も彼女の前で笑うだろう。

これからも、ずっと一緒に笑うだろう。

 

922: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 19:03:25.07

終わっちゃったーーーーー!!

番外編出せ!番外編!

 

926: 1 ◆I3cgeKYICg 2013/11/10(日) 19:41:10.42 ID:cJdUaeloi
保守ありがとうございますた。

 

928: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 19:49:53.62
面白かった!次回作待ってます

 

929: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 19:57:07.13
おつー!!
楽しく読ませてもらったよー
ありがとー!

 

930: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 20:11:18.90
返事するとこまで書いてくれ・・・orz

 

936: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 21:17:21.29
>>930
そこをあえて書かないのがいいんじゃん
想像の世界でいくらでもつけたせる

 

941: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 21:50:43.79
>>936
それは分かるんだけど、このスレ約2ヶ月続いたから
しっかりハッピーエンドでおめでとーと言いたかった

 

931: !ninja 2013/11/10(日) 20:23:47.03
楽しく読まさせ頂きました!
ありがとうございます!
また次に期待!
乙!

 

933: 名も無き被検体774号+ 2013/11/10(日) 20:45:18.01
追いついた瞬間に終わった
最近読んだ中で一番面白かった!乙!
次に期待します!

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転載元:http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1379184384/

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