星新一っぽいショートショートを作るスレ

 

1: 創る名無しに見る名無し 2010/08/07(土) 17:58:51

スレタイの通り、星新一っぽいショートショートを作ってみようというスレです
ジャンルはSFでもコメディーでも何でも良い
「ショートショート」なので、長くても1レス(=60行)に収まる程度が望ましいかと
二次創作は他所でお願いします

コツというか特徴
・人名は極力使わない(変わりに有名な「エヌ氏」や「エフ氏」を使う)
・細かい描写は省く
・激しい性描写は使わない

2: 創る名無しに見る名無し 2010/08/07(土) 17:59:14

Wikipediaにもう少し詳しく書いてあったので一応

作品の特徴

星の作品、特にショートショートにおいては通俗性を出来る限り排し、具体的な地名・人名といった固有名詞はあまり登場させない。
また、例えば「100万円」とは書かずに「大金」・「豪勢な食事を2回すれば消えてしまう額」などと表現するなど、地域・社会環境・時代に関係なく読めるよう工夫されている。
また、機会あるごとに時代にそぐわなくなった部分を手直し(「電子頭脳」を「コンピュータ」に、「ダイヤルを回す」を「電話をかける」に直すなど)したという。

激しい暴力や殺人シーン、性行為の描写は非常に少ない。
このことについて星は「希少価値を狙っているだけで、別に道徳的な主張からではない」「単に書くのが苦手」という説明をしている。
加えて、時事風俗は扱わない、前衛的な手法を使わない等の制約を自らに課していた。

星新一 – Wikipedia
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%E6%B0%E4%B8%80#.E4.BD.9C.E5.93.81.E3.81.AE.E7.89.B9.E5.BE.B4

 

8: 創る名無しに見る名無し 2010/08/16(月) 22:59:27
保守

 

9: 創る名無しに見る名無し 2010/08/16(月) 23:19:50
ネタが思いつかない・・・
このままじゃ落ちちまうぜ・・・

 

11: ◆PDh25fV0cw 2010/08/17(火) 00:21:47
なんか落ちそうなので適当に作ったショート

『不幸な男』

ある不幸な男がいた。
彼はことあるごとに自転車を盗まれるのだ。
鍵をかけ忘れたら当然、鍵をかけていても盗まれてしまう。
男は折り畳み自転車を買い常に持ち歩くことにした。
しかし、今度は家の保管場所で盗まれてしまった。

怒った男は自転車の保管場所に張り付き、盗む奴を懲らしめようとした。
しかし、男が疲れてうたた寝している隙に、またもや盗まれてしまった。
自分で監視しては寝てしまう、ならば機械を使おう。男は保管場所に赤外線センサーを張り巡らし、警報をならすようにした。
これでひと安心と思った男だが、運の悪いことにその夜、町中が停電し機械が止まってしまった。
その隙にまたもや自転車を盗まれてしまった。

途方にくれた男は一つの作戦を考え付く。
買った自転車を鉄の箱に入れ、蓋を溶接する。
これをシャベルカーで掘った穴に埋める。
これで誰も自転車を盗むことはできない。

男は安心して夜眠ることができた。

 

13: 創る名無しに見る名無し 2010/08/18(水) 00:51:39
>>11
投下乙です!
即興に近い形でこれだけ書けるなんて、すごいなぁ
このスレも10レス超えたから、もう落ちないと思うので、
また、マイペースで投下してね
次の作品も期待してるよ

 

14: 創る名無しに見る名無し 2010/08/18(水) 02:20:50
>>11
ラストもうちょいひねりが欲しかったけど、楽しく拝読させてもらいました。

 

20: 創る名無しに見る名無し 2010/08/21(土) 01:26:33

『新薬の実験』

 ある製薬会社での実験室。
 ここでは実用に耐えうる新薬を作り出す為、動物実験が日夜行われていた。
 其処を歩いていた白衣姿の研究員Fが、無数に並ぶ実験用マウスの入ったケースの内の一つに目を止め、
その傍の机でノートに研究データを書き込んでいた、もう一人の研究員Nへ声を掛ける。

「おい、15番ケースのマウスが弱り始めてるぞ? そろそろやべーんじゃねーか?」
「あー、こりゃちょっと失敗臭いな…原因は注射した試薬の副作用かな」

 研究員Fの指差す先には、ケースの隅っこで毛を逆立てて震えるマウスの姿があった。
数時間前、実験を行う前のマウスは元気に動きまわっていた事から見ても、
元気を失った原因は実験で注射した試薬であるのは間違いなかった。

「どうする? このまま放っておいても死にそうだし、とっとと安楽死させるか?」
「いやいやまてまて、まだ失敗と決めつけるのは早いと思うぜ? ひょっとしたら持ち直す可能性もある」
「まぁ、そうだったら良いんだけど。本格的に駄目だったら処分してくれよ?」
「へいへい」

 適当に相槌を返すと、研究員Nは再びノートへと意識を傾けた。
それを見て溜息を付いた研究員Fは立ち去る間際、ケースの隅で震えるマウスに声をかける。

「お前、命拾いしたな……」

 その頃、大宇宙の、人間には知覚出来ない領域の世界。
 ここでは外宇宙へと漕ぎ出す強き生命を生み出すべく、惑星へ対する実験が数百億年行われていた。
 世界を揺らいでいた大いなる存在の一人が、無数に並ぶ銀河の内の一つに目を止めて
その傍で新たな秩序と混沌を生み出そうとしていた、もう一人の大いなる存在へ声を掛ける。

「おい、15番目の銀河の第三惑星が弱り始めているぞ? そろそろ危ないのではないか?」
「むむ、これは少し失敗の様だな……原因は、この惑星に生み出した人間の副作用かもしれん…」

―――――――――了―――――――――

ちょっとした勢いに任せて書いた、反省していない。

 

22: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2010/08/21(土) 13:03:13
本格的にダメになったら人間は地球ごと処分されるのか
外宇宙に存在する者から見れば、人間って副作用が強すぎる試薬のような物なのかもね

 

27: ◆PDh25fV0cw 2010/09/15(水) 00:04:28

『高度映像社会』

30年前、世界的企業の某社が開発した小型軽量の空間への立体映像化装置は、開発競争による価格破壊も進み、個人が複数台所有できるまでになっていた。
少し大きい街で上を見れば、立体広告が所狭しと並んでいる。
交通の関係で5m以下の立体広告は規制されているのが幸いと言ったところだ。
ここも、大都市の例に漏れず、巨大なうさぎの立体映像が空で熱心にシリアルの宣伝をしている。

「気味の悪いことだ」
元々どがつく田舎の出身で立体映像など無縁の生活をしていたので、未だにこういった映像には慣れない。
触れそうなほどリアルな物が空にある、それがどうも納得できないのだ。
周りのやつらは、生まれた頃からあったものなので、この違和感を理解してはもらえない。
「異物か…」
何となくわいて出た言葉に返す者はなく、相変わらずウサギは空で笑っていた。

「おわっ」
ぼんやり上を眺めていたのがいけなかったのだろう、人にぶつかり、壁に向かってよろめいてしまう。
壁に手をついて止まろうとするが、壁は手を支えることはなく、体は壁の中に入り込んでしまう。
「いつつ…」
少し皮が剥け血がにじむ手をなめながら、辺りを見回す。
人一人がようやく入れる程度の細い路地。
後ろを向くと、入り口は立体映像で偽装されている。
「シークレットドア?」
入り口を映像で偽装する、シークレットドア。
ドアに壁の映像を写し隠すことからこの名前がきているらしい。
テーマパークなどで似たような物を見たことがあるが、せいぜい子供だまし程度のものだった。
しかし、これは通路を一つ完全に隠している。
それも、完璧なほどに。
これほどの精度の装置ならば相当な値段がするはずだ。
理由は分からないが、誰かが大金を払ってでもこの通路を隠したいと思っている。
得てしてこういった場合は危ないものが隠されている。
直ぐに逃げた方がいいだろう。

しかし、俺の考えとは裏腹にいきなり世界が歪む。
今まで通路だったところが、極彩飾の、抽象画に移り変わる。
壁も床も無くなり、場所の起点が無くなる。
合わせるべき起点が無くなったことで平衡感覚が失われる。
すぐに立っていられなくなり、吐き気もしてくる。
もしかしたらこれが噂で聞いたことがある、映像兵器なのかもしれない。
この状態から精神を守るためか、いきなり意識が失われた。

まず、この状況はなんだろう。
起きたらいきなり草原に寝かされていた。
気絶している間に、草原に運ばれたという可能性もあるが、たぶんそれはないだろう。
この場所には草の臭いがしない、それに床はリノリウムのような感触。
つまり、これは立体映像。

「起きたかね」
目の前に茶色のスーツをきた老人が立っている。
「何らかの偶然で我々の秘密通路を見つけてしまったようだね。我々の手違いで侵入者撃退用の装置が作動して君には迷惑をかけた」
やはり、何らかの施設の通路を隠していたようだ。
「一体ここはどこなんですか?」
老人はその質問に答えず、質問を返してきた。
「君は、ここをどこだと思うかね?」
?何を言っているんだろうか。
「周りを見てみたまえ。どこまでも広がる草原。素敵だとは思わないかね?」
その言葉で少し理解できた。
つまり、この映像の元の場所はどこかと聞いているのかも知れない。
だが、映像は映像だ。
その場所に移動しているわけではない。

「映像は映像。そう思っているのかね?」
心を見透かされたような言葉にドキリと心臓が跳ねる。
「たしかにこれは映像、まやかしだ。しかし、それを確認するためにはどうすればいい?」
いきなり老人の姿が掻き消える。
「我々が映像を映像として確認するにはどうしたらいい。現実と変わらないリアルな映像はどうしたら虚像と確認できる」
いきなり後ろに現れる老人。
声も後ろに移っている。
「触ってみる。これは原始的だが確実な方法だ。しかし、触れられないものはどうすればいい?」
今度は上に現れる。
「確認できないなら、それは本物だってことが言いたいのか?」
また消え、今度は最初と同じく真正面に現れる。
「その通り、触れられないならばそれはいかに馬鹿げていてもそれは現実の可能性もあるということだ」
老紳士は本当にうれしそうに笑う。
何がそんなに嬉しいのだろう。

「さて、私も時間がなくなってきた。君は最初にここはどこか、と聞いたね?今からその答えを示そう」
老紳士が指をパチンと鳴らすと、いきなり床が開く。
捕まるものも無く、為す術も無く下に落ちていく。
軽い浮遊感のあと、硬い地面に叩きつけられる。
打ちっ放しのコンクリートの床、周りを覆うフェンス、どうやらビルの屋上のようだ。
上を見ると、ピンク色の巨大な何かが見える。
「え?ウサギ?」
そうそれは、さっき見た広告用の巨大ウサギの映像。
そう映像のはずだ。
しかし、俺はその映像から落ちてきた。
呆然としていると、元から無かったかのようにウサギは消えてしまう。
「どうなっているんだ……」

『確認できないならそれは本物かもしれない』
さっき自分で言った言葉が頭で繰り返される。
空に浮かんでるウサギは本物で、俺は中に入った。
こんなこと誰が信じてくれるんだろうか。
精神障害を疑われて終わりだ。
だが、それでも構わないではないか。
今やこの世界はリアルな虚像に満ちている、その中に実在する虚像があったとしても。

ビルを降り、外に出る。
空を見上げると、新しい広告が映し出されるところだった。
どうやら、紳士用の靴の広告らしい。
俺は苦笑しながら、空に一礼して再び街を歩き始めた。


 

31: 創る名無しに見る名無し 2010/09/15(水) 23:07:35
>>28
アイディアがすごくいいと思う。
現実→混沌→仮想草原→現実 と、元いた場所に戻ってるから話が纏まってる感じがしていい。

 

32: ◆PDh25fV0cw 2010/09/16(木) 15:06:15
>>31
特に意識したわけではないんですが、そうなってますねw
話まとめようと、いじってたらそうなったのかもしれないです

 

29: 創る名無しに見る名無し 2010/09/15(水) 00:56:49
こうゆうSFチックな作品はすごく好き
未来っていうのはいいものじゃないけど悪いもんでもないみたいな感じのがいい

 

32: ◆PDh25fV0cw 2010/09/16(木) 15:06:15
>>29
個人的にもSFっぽいの好きですね。
個人的にガチガチのSFじゃなくてゆるい、こうなるんじゃないかとか

こうなったらいいなって感じのが好きなんで、設定上無理があったりすることが多いんですよねw

 

33: ◆PDh25fV0cw 2010/09/17(金) 01:34:28
『王の頷き』

ある国に絶対に賛成しない王さまがいた。
大臣がどんなにいい案を持っていっても首を横に振り、美女が誘惑しても決して流されない。
そんなことをしていれば、国が運営できないものだが、しばらくすると皆が持ってきた案より優れたものを、王自身が考えついてしまうので、皆は文句も言えず国もうまく回っていた。
しかし、大臣たちは面白くない。
かといって、王に歯向かう気もない。
王としては歴代でも1~2を争う名君なのだ。
しかし、大臣たちは王が皆の意見に賛成する場面をどうしても見てみたかった。

そんなある日、ある男が王の謁見にやって来た。
王は民衆の知恵を借りるために、様々な国民と謁見を行っている。
この男もそういった一人だった。
基本的には、王との謁見は1対1で行われる。
これは大勢の前では気後れするものもあるだろうという王の配慮だった。
しかし、王の安全のため何人かの兵士は配備されている。

さて、その謁見をおこなっていた男は王にある紙を渡す。
その様子を窓の奥から偶然見ていた見ていた大臣は驚いた。
王はなんと首を縦に振ったのだ。
大臣はあの男が渡した手紙の内容を知りたくて仕方がなかった。
しかし、王に直接聞くわけにもいかないだろう。
わざとではないにしろ、盗み見たようなものだからだ。
いったいどんなに素晴らしい内容だったのだろう。
最高の統治方法、最高のレシピ、想像は膨らむ。

大臣は謁見を管理する部門に立ち寄り、男の素性を聞いた。
男はどうも街で服屋を営む仕立て屋らしい。
大臣は男に使いをやり、内密で自宅に呼び出した。
なぜ呼び出されたのかわからないのか、少し緊張気味の男に大臣は聞いた。
「お前はどんな内容の進言をしたのだ?内容を言えばこの金貨をやろう」
そう言って、家が二つは建つであろう量の金貨を男の前に置いた。

それに驚いた男は
「私は王の服の新しいデザインを、献上に来ただけです。王が新しい服を考えていると、掲示があったので。それだけです、決して怪しいものではありません。そんな金貨を貰うほどのものではありませんよ」
男は慌てて答えた。
「別に君をどうにかしたいわけじゃないさ。ただ、私は王がなぜ頷いたのかを知りたかっただけなんだよ」
それを聞いて多少安心したのか、男は冷静になる。
「そうなんですか。しかし大臣様が見た、王が首を振る動作は、肯定をする動作ではないでしょうね。今着ている服をを確認した動作を大臣様が勘違いしただけでしょう」
そう言って男は金貨を貰うのを辞退した。

「そうか。それならば、お前を宮廷専属の仕立て人として採用する」
「え?なんででしょうか?」
男は狼狽えた。
王の動作の謎も勘違いとわかったのだ、一介の街の仕立て屋である自分がいきなり宮廷専属なんて名誉職に取り立てられるなんて、わけがわからない。
「確かに、王が首を縦に振ったのは、服を確認するためかもしれない。しかし、あの後、王は首を横に振らなかった。君のデザインが優れていたためだ。それに、これだけの金貨を前にして誠実に答えたのも良い。私は誠実な人間は好きだ、それは王もおなじであろう」
そう大臣は答えた。

大臣の頼みを聞き入れた男はこの後、王や王の側近のために数々の素晴らしい服を仕立てるが、それはまた別のお話だ。


 

34: 創る名無しに見る名無し 2010/09/17(金) 19:56:24
服を見る動作が首肯にみえたんだね
もし腕を横に伸ばして袖を見ようとしてたら首を振ったように見えたんだろうか

 

35: 創る名無しに見る名無し 2010/09/18(土) 21:54:21
星新一のイソップ物語があったけど
それに雰囲気が似てるな

 

36: 創る名無しに見る名無し 2010/09/21(火) 19:05:30

【屋上】

「またここへ来てしまった」
S氏はそうつぶやくと、錆付いたパイプ椅子に腰を下ろした。
ここはとあるビルディングの屋上。
さほど高層でもない、どこにでもありそうな場所だ。

彼は悩み事があるとこの場所に来る。
いや厳密に言うと来てしまうのだ。
ここが、どこの何ていうビルディングなのかはまったく覚えていないし、また覚えていたとしても、きっと自分の意思ではたどり着けない所なんだと何となく感じていた。
いずれにせよ、ここがどこであろうとどうでも良かった。

S氏は平凡なサラリーマン、上司からは叱られ部下からは突き上げられ、御多聞に漏れない中間管理職であった。
悩み事と言っても、大それたものではなく些細なことが多い。
自分の成果を上司に横取りされたり、データ収集や難交渉など人がやりたがらない仕事を押し付けられたり。
だが、S氏は仕事にそれ程不満があるわけではなかった。
彼にとって常にそれが自分の役回りであると思っていたからだ。

いつものように小一時間ここでぼんやりと夜景を眺め、ため息をひとつつくとそろそろ帰ろうかと腰を上げた。
その時、「カチャリ」とドアのノブが回る音がした。
『誰か来る』
勝手に入り込んだ後ろめたさもあり、S氏は物陰に身を潜めた。
ここには明かりがなく、どんな風体なのか良く見えない。
警備員なのか住人なのか…。
すると、
「誰かいますか?いますよね」
『しまった!見られてた!』
いきなり声を掛けられ、S氏は体が硬直し声も出ない。
不法侵入という言葉が頭をよぎる。

「いることは判っています。何もしませんから、そのまま私の話を聞いてください」
『?』
「これからもあなたは何度もここに来ることになるでしょう。でも、決して会社を辞めようなどとは思わないでください。」
誰とも判らぬ人影は勝手に話を続ける。
「今あなたがやっている仕事は、将来きっとあなたの出世の足がかりになります。どうか、この調子で仕事を続けてください。」
『何なんだこの人は、何で私の事を知っている?もしかして!』
もしかして、未来の自分がタイムマシンで自分を励ましにやって来たのか?
S氏は、星新一でも思いつきそうにないベタな空想をしてしまった。

「では、これで失礼します。決してあきらめないでくださいね!」
最後にそう言い残すと、誰とも判らぬ人影は去っていった。
S氏はしばらく放心状態になっていたが、やがて正気を取り戻した。
「いったい何だったんだ?」
そう言いつつ、なんだか笑いが込み上げてきた。
おかしな事に、いつもより元気が出てきたような気がする。
自分の努力を認めてくれる人がいるのはうれしいものだ。
あの人影がどこの誰であれ、とても感謝したい気持ちになった。

それから何日かして、S氏は思いきってある行動に出た。
会社からの帰り道、適当なビルディングの屋上にのぼり、こう話しかけるのだ。
「誰かいますか?いますよね…」

 

37: 創る名無しに見る名無し 2010/09/21(火) 20:02:20
これは面白い

 

39: 創る名無しに見る名無し 2010/09/21(火) 22:30:01
読後感がすっきりしますね
正のサイクルが繋がっていく良いショートショートです

 

40: 創る名無しに見る名無し 2010/09/22(水) 12:25:43

【最強の兵器】

F博士の研究室

「これでよし、完成じゃ」
「やりましたね博士!と言っても僕はこの装置のことをよく教えてもらってませんが…」
「そうじゃったな。完成する前にこの装置の情報が漏れては命が危なかったのでな。すまんかった」
「もしや兵器…ですか?」
「まあそんなもんじゃ。この装置はミニブラックホールを発生させて一瞬に周囲の物をすべて飲み込んでしまう」
「それはすごい!」
「そこまで知らんかったとは。君を助手に採用して正解だったようじゃ」
「お褒めに預かり恐縮です。ところでいったいどれくらいの範囲まで有効なのですか?」
「それは設定次第。半径1メートルから1万3千キロ以上」
「それでは地球も一飲みじゃないですか」
「そういう事になるな」
「しかし博士、もしこれが悪人の手に渡ったら大変ですね」
「そう思うじゃろうが、この装置の最大のポイントはそこなのじゃ」
「どういう事ですか?」
「ブラックホールの中心がこの装置だからじゃよ」
「と言うと」
「…もしや君はかつてどこかで頭をぶつけたことがあるのでは?」
「ええ、小学校の頃に1度」
「そうじゃろうな。打ち所が悪かったのか良かったのか。まあ良い、この装置がブラックホールの中心にあるということは、この装置もろとも飲み込まれてしまうということなのじゃよ」
「なるほど、つまりこの装置を作動させた人間も消えてしまうわけですね。しかし遠隔操作で…」
「この装置は所有者自身が自らの手で操作した時だけ作動すようにプログラミングしてある」
「自爆テロならぬ、自滅テロですか…ぷぷっ」
「笑い事ではない」
「でも何だか売れそうにないですね」
「売るつもりはない。進呈するのじゃ」
「誰にですか?」
「この世で最も不甲斐無く、心配性で、臆病で、周囲の国からも馬鹿にされている…」
「わが国の国王!?まさかこれで消えていなくなれと?」
「いや、国王がこの装置を持っていることを周辺国にアピールするのじゃよ」
「あそうか、周辺国が下手な行動に出れば、いつ何時あの臆病国王がスイッチを押すかもしれないと…」
「今度はいやに察しがいいな。その通り、だからこれはわが国にとって最強の兵器になる」
「でも、あの国王のことですよ。ちょっと自信喪失しただけで使ってしまいそうだ」
「それはさすがに側近が止めるじゃろうが、まあわしもそう長くはないその時はあきらめよう」
「博士!」

次の日、博士は国王に謁見し予定通りその装置を献上することができた。
世界的に有名な大科学者F博士の発明とあって、すぐさま新兵器として採用され、その情報は瞬く間に周辺国に伝えられた。
その抑止力たるや、言うまでもない。
「これでしばらくの間、この国も安泰じゃろう」

その後博士は失踪した。
どうしても隠しておかねばならない秘密があったからだ。
実はその装置は空っぽで、ブラックホールなどまったくのハッタリだったのだ。

 

42: 創る名無しに見る名無し 2010/09/22(水) 14:16:30
面白かったです
「もしや君はかつてどこかで頭をぶつけたことがあるのでは?」ってF博士のきつい冗談ww

 

43: 創る名無しに見る名無し 2010/09/22(水) 15:36:08
ありがとうございます。
どこかで聞いたような話かもしれないですけど、まあアレンジということで。

 

44: 創る名無しに見る名無し 2010/09/22(水) 21:32:01
すごいなあ
独創的だからというか、短い話だけどすごく引き込まれるような魅力があるよね

 

45: 創る名無しに見る名無し 2010/09/23(木) 12:51:48

【移植】

「どうかね、その後の調子は」
N医師はやさしく青年に語りかけた。
「ええ、だいぶ良くなりました。自分で食事も食べれるようになりました」
「うむ、やっぱりちゃんと口から栄養を摂らないと早く回復できんからね」
「でも…」
「どこかに痛みでも?」
「いえ痛みはないんですけど、なんとなく…その…」
「なんとなく?」
「自分が自分でないような…」
「ああ、それならしばらくすれば段々と慣れてくるはずだよ。移植患者にはよくあることだよ」
「よくあること?」
「移植された患者さんは最初のうち、漠然とした違和感を訴える。体に他人の臓器を
 入れたことによる精神的なものなんだがね」
「そんなもんでしょうか」
「ああ、そんなもんだよ。では、しっかりと体力をつけて早く退院できるようにしなさい」
「ありがとうございます、先生」

N医師はそんな会話をした後で、青年の両親が待機する部屋へと向かった。

「先生、いかがでしょうか」
「ええ、まだ記憶は戻っていないようですが順調に回復されていますよ」
「ですが、あの子は病室で話をするたびに、何だか自分じゃない…と」
「私にも同じ事をおっしゃいましたよ。いずれ理解できるようになると思いますが」
「実は、私達もなかなかなじめなくて…」

「無理もないでしょうな。あの大事故で奇跡的に無傷なのは彼の脳だけだったのですから」

 

46: 創る名無しに見る名無し 2010/09/23(木) 13:26:51
これも似たような話があったかも知れませんね。

 

47: 創る名無しに見る名無し 2010/09/23(木) 15:49:20

今日はもう一つ、いいオチではないんですけど…

【世界がもし100人の村だったら】

「『世界がもし100人の村だったら』のみなさんの感想文、読ませていただきましたよ。
 とってもよく書けていました。じゃあ今からお返ししますね」

「M子ちゃん、ちょっと」
「はい、先生」
「少しお話があります。放課後、職員室まで来てくださいね」
「はい…」

放課後

「先生、何でしょうかお話って」
「M子ちゃん、感想文のことなんだけど」
「はい」
「M子ちゃんの感想文はみんなとちょっと違うのよね」
「どういうことですか?何がいけなかったんですか?先生」
「ううん、いけないわけじゃないのよ…」
「先生は、『みなさんがその100人の中の一人だったらどう思いますか?』っておっしゃいましたよね」
「ええ言いました」
「だから私も100人の中の一人になったつもりで書きました」
「そうよね、だけど『その内の二人は私のパパとママです…』っていう所からがね…」
「でも、私がその中の一人ってことはパパとママがいないとおかしいじゃないですか?」
「それはそうなんだけど、このお話は例え話で…でね、その次の『その内の4人は私のおじいちゃまとおばあちゃまです…』になってってるでしょ」
「パパとママはおじいちゃまとおばあちゃまの子供ですもん」
「ええ、その通りね。そのあとどんどん遡って、締めくくりが『だから100人はみんな私の家族です』 ってなってるでしょ?」
「はい」
「先生や友達や世界の人達はどこ行っちゃったのかなあ?」
「知りません」
「先生も入れて欲しかったなあ」
「なら、先生も自分で100人の村作ったらいいじゃないですか」
「そういう問題ではなくて…」
「もしかして先生、私の家族になりたいんですか?」
「何だか話が違うような気が…いいわ、今日はもうお帰りなさい」
「はい、先生。あっ、パパに話しておきますね、先生が家族になりたいみたいって」
「ちょっ…M子ちゃん…」

 

49: 創る名無しに見る名無し 2010/09/23(木) 18:50:23

すいません、今日は3本立てという事で

【家族の記憶】

「ねえN子、最近パパの様子がおかしいのよ」
携帯から聞こえる母の口調は弱々しいものだった。
「え、病気?」
「よくわからないんだけど…」
「いったいどうしたの?」
「記憶がだんだんと無くなって行くみたいなの」
「ええっ!アルツハイマー?」
「そうなのかしら」
「記憶って、どんな?」
「家族のこと…昔のこと…」
「どうしてわかったの?」
「最近やたらといろんなことを聞いてくるようになったの。『お前の誕生日いつだったっけ』とか
 『昔遊びに行った遊園地ってなんていう名前だったっけ』とか」
「それただの物忘れじゃないの?」
「私も初めはそう思ってたんだけど、今日ね…」
「うん」
「『お前の名前なんだっけ』って言うわけ。私悲しくなって…でも『何言ってるのよK子ですよ』って
 笑ってごまかしたんだけど…」
「ママ、早くパパを病院へ連れて行ったほうがいいわよ」
「ええそうね、そうするわ」

1週間後、N子から母への電話

「ママ、パパを病院へ連れて行った?」
「え?まだよ」
「早くしないと手遅れになるわよ。で、あれから何か変化あった?パパの物忘れ」
「そうね、今日はあんたの住所とか旦那さんの名前とか聞かれたわ」
「まだ大丈夫よね。近いうちにそちらへ行くから、あまり思い詰めないでね!」
「ええ…」

N子の実家にて

「N子いらっしゃい」
「パパはどこ?」
「書斎かしら」
「私、直接パパと話してみる」

父の書斎にて

「パパ!私の名前言える?誕生日は?電話番号は?私の通った幼稚園は?」
「おいおい、何だよ薮から棒に」
「いいから答えてよ!」
「ああ、そうか…ママが連絡したんだね。もうしばらく黙っておくつもりだったんだが…」
「どういうこと?」
「びっくりしないで欲しい。実はママは軽いアルツハイマーに罹っているんだ」
「え?パパじゃなくてママ?だってパパが物忘れがひどいって」
「あれはママの記憶を試すために、わざと忘れた振りをして聞いていたんだよ」
「病院へは?」
「連れて行ったよ、もうだいぶ前に。ママは忘れているかもしれんが…」

ありがちな発想で、途中からオチがわかっちゃったかも。
なんか、悲しい終わり方でごめんなさい。

 

55: 創る名無しに見る名無し 2010/09/25(土) 15:57:28

【緊急避難】

遥か彼方のS星からこれまた遥か彼方のN星へ航行する
大移民団を乗せた巨大宇宙船。
機械の故障により発生した非常事態に最早猶予はなかった。
当面の危機回避の為には何としても近隣の恒星を見つける必要があった。

「船長、あの恒星までが最短距離のようです」
「周辺の惑星への影響は?」
「おそらく皆無と思われます」
「そうか、では早速作業に取り掛かってくれ」

「間もなく最接近!」
「準備はまだか!」
「準備完了しました!」
「よしっ、発射!」
「発射!」

巨大宇宙船から巨大なカプセルが勢いよく放出された。

「これでしばらくは安心ですね、船長」
「ああ、運良く処理できる所が見つかって何よりだったよ」
「へたに処分すると最近では宇宙環境監視団体がうるさいですからね」
「次の恒星まではまだ遠い、早急に故障した『ゴミ焼却炉』の修理を急いでくれ!」
「はい船長!」

その頃、地球では…

『太陽に巨大黒点発生!天変地異の前兆か!』

 

56: 創る名無しに見る名無し 2010/09/25(土) 17:34:25
ここんところ自分しか上げてないんだけどこのまま続けていいものやら…

 

57: 創る名無しに見る名無し 2010/09/25(土) 17:55:43

投下乙です!
気にせず、どんどん投下しちゃってくださいなw

このスレの過去の賢人達も皆、そうだったから、大丈夫だよ
またの投下を楽しみにしてるよ

 

61: ◆PDh25fV0cw 2010/09/25(土) 18:50:06
遠慮せずかけばいいんじゃないかね
このスレ、投稿ないとき全くないし、投稿があるだけで違うもんだよ
自分は結構時間かけて書くほうだから投稿時間あくし、他の人の作品読むのも好きだしねw

 

63: 創る名無しに見る名無し 2010/09/25(土) 18:54:22

>>61
ありがとうございます。

お言葉に甘えて、
ちょっと長かったんで「他に行き場所の無い」スレに書き込んだやつを上げときます。

 

64: 創る名無しに見る名無し 2010/09/25(土) 18:55:39

【本当の価値】

その男は焦っていた。
働き口がないまま所持金が底を突き、しばらくは手持ちの物を売り払ってなんとかやってきたものの、滞納した家賃も大家の許容範囲を超え、わずかでも支払ができなければ、すぐに出て行けと言われている。
ただ、それよりも深刻なのは今日の飯代すらないということだ。
『このままでは、泥棒とかするしかないかも』
男は善人とは言えないまでも社会人になってからはまともに働いてきたのだが…。

そんな時、
「ただいまM公園にてフリーマーケットを開催しております。お時間のある方は…」
と広報車がやってきた。
男の家財はほとんど売り払ってしまったが、本と少しのガラクタがある。
『なんとかフリマで金に換えよう』
それが、男にとって最後の良心だったかもしれない。

男は片っ端から部屋の中のものをバッグに詰めるとM公園へ駆けつけた。
運の良いことに参加料は無料だった。
適当な場所を見つけると、男は地面の上に直接、本やガラクタをならべた。
1時間、2時間と時が経っても、客は皆素通りして行く。
それもそのはず、並んでいるものはどれとしてまともなものは無く、手垢にまみれた本や人気の無い古臭いフィギュア、その辺で拾ったようなちょっと綺麗な石ころ
といったものばかりなのだ。

終了まであとわずかという時間になって、ひとりの老人が男の前に立った。
「君、それはいくらかね?」
老人の指差すものを見ると、それは石ころの中に混じったタイルだった。
男が中学生の頃、後輩から巻き上げた財布の中に入っていたもので、瑠璃色に光る魅力的なアーモンド形のタイルだったが、宝石の類ではなかった。
今の境遇から察すれば、幸運のお守りですらないだろう。

「君、それはいくらかね?」
老人に再び問われると、男はここぞとばかりに言った。
「ご、5万円…です」
「おお、そうか。君にとっても大切なものなんじゃな、ではあきらめよう」
『しまった!』男は吹っかけすぎたことに後悔した。
この老人を逃してしまったら後が無いかもしれない。
「待ってくれ!3万…いや1万でいい!買ってくれ…買ってください!」
「本当にいいのかね?1万円でも?」
「ええ、それでけっこうです」
「ではいただこう。どうやら訳ありのようじゃ、3万円でどうかな?」
『ありがたい、これで2ヶ月は暮らせる』
男の顔に安堵の表情が浮かび上がる。
老人はタイルを受け取るとしみじみと眺め、本当にうれしそうに去っていった。

『待てよ…』
男はしばらくして、老人の言葉に何か引っ掛かりを感じた。
『あの爺さん「君にとっても」って言ってたな。「君にとっても」ってことは「わしにとっても」ってことだろ?もしかしてすごいお宝だったのかも!』
男は老人にまんまとだまされたと思った。
『だからあの爺さん余裕で3万払ったんだ!』
あわてて周囲を見渡すと、あの老人が公園から出て行くところだった。
『じじい!』
男の心は欲望に乗っ取られ、良心はすでに吹き飛んでいた。
『あいつの家をつきとめて、相応の金額を巻き上げてやる!』
男は老人の後をつけて行く。
山の手のほうへ向かう、高級住宅街だ。
やがて老人は一軒の邸宅に入っていった。
老人の物腰にたがわぬ大邸宅だ。

『10万…50万か』
勝手に値踏みをすると、意を決してチャイムを鳴らす。
屋敷の奥で重厚な音が鳴っている。インターホンではなさそうだ。
分厚い木製の扉が開くと、先ほどの老人が門の所までやって来た。
「ああ、先ほどの青年か、何か…」
言い終わらないうちに男はずかずかと敷地の中に入り込む。
「じじい、だましたな!」
「何のことじゃ?」
「とぼけんじゃねえ、さっきのタイルだよ!お宝なんだろ?」
「何を、あれはただのタイルじゃよ」
「嘘つけ!ただのタイルに3万も払うなんて、考えられねえ!」
「君だって大切にしておったんじゃ…」
「うるせえ!」
思わず手が出てしまった。老人は転倒し、鈍い音がした。

『意識が無い、やべえ死んだかも』
男は逃げようと思った、が
『いかん、タイル、俺の指紋がべったり!』
あわてて老人のポケットを探す。無い。
『くそっ、屋敷の中か』
男は袖にくるんだ手で分厚い扉を開けると、慎重に屋敷の中へ忍び込む。
人気は無い、一人暮らしのようだ。
目が慣れるまでは薄暗くてよく見えない。
しばらくすると重厚な造りが見え始めた。
高そうな調度品の数々。
シャンデリア、螺旋階段、テレビでしか見たことの無い洋館風の内装。
ふと、床に目を落とす。大きく絵が描かれている。鳳凰か?
さらに目が慣れてくる。絵だと思ったのは、モザイクだった。
細かい破片を埋め込んで、大きな模様を形作っている。
男の目にもそれは荘厳で完璧なものに見えた、たった1箇所
鳳凰の目に当たる部分にぽっかりと開いたアーモンド形の穴を除いて…。

 

67: 創る名無しに見る名無し 2010/09/26(日) 14:43:39

【物質記憶薬】

F博士の研究室

「よしっ、これで完成じゃ」
「博士、今度の発明は何ですか?」
「キミにはこれが発明品に見えるのかね?」
「いいえ、ただのハンバーグに見えます」
「そうじゃろう。どうもキミはわしが『完成じゃ』と言うと必ず何かを発明したと思うようじゃな」
「一種の職業病ですかね」
「わっはっはっ!すまんすまん、本当はこれもわしの発明品じゃ」
「えっ?どこから見てもハンバーグですが」
「これ自体は本物のハンバーグなのじゃが…」
そう言うとF博士はナイフでハンバーグを二つに切り分けた。
「食べるんですね」
「待て待て、早まるでない」

しばらくすると半分のハンバーグがそれぞれ1つのハンバーグにみるみる形を変えた。
「わっこれはすごい2つになった!これならどんどん数を増やせますよね」
「このハンバーグにふりかけた薬品が元の形を記憶し、まったく同じ物質で再形成するのじゃ」
「言うならば物質記憶薬ですね」
「その通り」
「では、いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
「いえ、この薬品をいただくのです」
「何じゃと?」
「博士、もうこんな貧乏研究所が嫌になりました。博士はいつも気前よく発明品を手放し
 儲けが少ないばかりか、私の給料だって上がりゃしない!」
「それはすまんかった。考え直す気はないか?給料は上げれんが…」
「考え直す気はありません、この薬品で財産を増やして大儲けしますよ。ではさようなら!」

「困ったもんじゃ、気の早いやつで。あの薬品が記憶できるのはハンバーグだけなんじゃが…
 まあハンバーガーショップでも開けば、当分は今よりましな生活ができるかも知れんがのう」

 

463: 創る名無しに見る名無し 2011/07/18(月) 22:33:06.49
>>67
>薬をいただく
不死身になるのかと思った

 

68: 創る名無しに見る名無し 2010/09/26(日) 19:26:38
面白いですけど、盗みが多いですね・・・

 

70: 創る名無しに見る名無し 2010/09/27(月) 22:55:40
助手の短絡的な性格が生きてるオチだね
最後にひっくり返すところが星っぽい

 

71: 創る名無しに見る名無し 2010/09/28(火) 11:34:27

【物質記憶薬(後日談)】

F博士の研究室

「博士っ!」
「誰じゃ、いきなり入ってきて…おおキミか。何じゃね今日は、ハンバーガーショップ開店の宣伝かね?」
「とんだ失敗作をつかませましたね」
「失敗作?」
「あの日家に帰ってさっそく試してみたんですよ、あの物質記憶薬を…チクワで!そしたら…」
「そしたら?」
「チクワからチクワ形のハンバーグが生えてきたじゃないですか!」
「そうじゃろうな」
「何でそれを先に言ってくれなかったんですか!」
「言う前にキミが出て行ってしまったからのう」
「しかも、それをやけ食いしたらおなかの中でどんどん増えていって危うく死ぬところでした!」
「なるほど…そこまでは気が付かなかった。何せわしはハンバーグが嫌いでのう」
「じゃ何で実験材料にハンバーグなんか使ったんですか」
「キミの大好物じゃからな」
「最初から私が実験台だったんですね!」
「まあまあ、とりあえず助かって良かった」
「良くないです!家のトイレが、吐き出したチクワハンバーグでつまってしまったんですよ!」
「で、トイレを貸せと…」
「違います!」
「では、何じゃね?」
「博士!こうなったらこの薬品を完成させるしかありません!」
「と言う事は?」
「もう一度雇ってくれませんか?」
「初めからそう言えば良いのに…」

 

72: 創る名無しに見る名無し 2010/09/28(火) 17:38:24
これはwwwww
こうゆうの好きだwww

 

73: 創る名無しに見る名無し 2010/09/28(火) 18:56:46

>>72
ありがとうございます。

盗みが多いって言われちゃったんで、ちょっと改心させました。

 

74: 創る名無しに見る名無し 2010/09/30(木) 18:16:52

【貧乏性症候群】

「先生、いかがでしょうか?」
「あなたの症状を総合して判断しますと『貧乏性症候群』でしょうな」
「『貧乏性症候群』…ですか?」
「ええ女性に多いのですが、輪ゴムをいくつも水道の蛇口に掛けておいたり、
 食堂で爪楊枝を余分に失敬したり、一番多いのはいつ使うとも分からない
 紙袋や空き箱をためこんだり…」
「いえ、私はそんなことはしていませんが」
「以前そういうことをしていたのに最近できなくなったとかはないですか?」
「思い当たりませんな」
「そうですか。大体の方はその収集作業ができなくなったことで発症するんですがねえ」
「もう結構だ!」

最近の体調不良の原因を知りたかったY氏は医師の診断に激怒して医務室を立ち去った。

Y氏の怒りは自分の事務室へ戻ってからも収まらない。
「とんだ藪医者だ!私がちまちまと使いもしない紙袋や空き箱を集めるような人間だとでも
 言うのか、まったく!専属医師とは言え信用ならん!」

Y氏の机の上に置かれたプレートにはこう書かれていた。
『防衛省武器調達室長』

 

75: 創る名無しに見る名無し 2010/09/30(木) 22:07:08
兵器類の値段は桁が違うからか……w

 

76: 創る名無しに見る名無し 2010/10/02(土) 14:17:23
いつ使うとも解らないだなんてひどいw

 

77: 創る名無しに見る名無し 2010/10/02(土) 17:49:59

【天国の控室】

ここは通称「天国の控室」、正式名称は「国立終末介護医療センター」である。
比較的裕福で身寄りの少ない重病患者が終の棲家として選択する医療機関だ。
ただ、すでに危篤状態になっている患者はここに入院することは無い。
なぜなら、寿命を全うするまでの期間たとえそれが数日であろうと、本人の意思で至福の時間を過ごす事を目的としているからだ。
人によっては数年間の長期入院になる事もある。
幸せな時間を1日でも多く過ごしたいという欲求がその命を永らえるのかもしれない。
N氏もそんな患者の一人であった。

「Yさん、ちょっとこちらへ来てくれないか」
「はいN様」
そう応えたのは、N氏が入院してからずっと付きっ切りで介護してきたY看護婦だった。
「もうどれくらいになるかな…」
「約4年7ヶ月になりますわ。正しくは4年6ヶ月と28日8時間46分…」
「ははは、君はいつも正確無比だな」
「恐れ入りますN様」
「私にはもう近々お迎えが来る。君には本当に世話になった」
「そんな気の弱いことをおっしゃってはいけませんわ」
「いや、分かるんだよ自分の事は」
「N様がそんな気持ちになってしまわれると、私が担当の先生に叱られます」
「そんな医者、私が怒鳴りつけてやる!わっはっは」
「うふふ…患者様から気を使われるなんて、看護婦失格ですわね」

「ところで、私が死んでからの事なんだが…私にはこれまで苦労の末築いた財産がある。それを君に相続してもらうわけにはいかんだろうか?」
「唐突なお話ですのね。しかし私には財産をいただく権利はございません。それにN様もご存知のように…」
「そう、君はロボットだ。だがロボットが相続してはいけない法律はないだろう」
「いいえN様、法律の問題ではなくて、私にとってはその財産が無意味なのですわ」
「そうなのか、私の財産は君には何の価値も無いということなのか…」
「申し訳ございません、私には物の価値を認識するデータがプログラムされていないのです」
「…確かにな、金や不動産や贅沢品は人の欲望が造り上げた物。君には無用か…」
「ご好意には感謝いたします」

「Yさん、今だから言えるが、私は起業には成功したが良い家庭は築けなかった。 家族ほったらかしで仕事に没頭し、愛想をつかした妻は一人息子を連れて家を出て行った」
「そうだったのですか」
「だが、今私はとても幸せだ。君のお陰で最高の死を迎えられそうだよ」

その時、一人の男性が病室に入ってきた。

「お、お前は…」
「父さん、久しぶりです」
「今更名乗りをあげても、お前達には財産はやらんぞ!」
「父さん、母さんはもう5年前にここで亡くなりました。最期まで父さんを愛していましたよ」
「そ…そんな人情話は通用せん!」
「僕は財産が欲しくてここに来たんじゃありません。本当のことをお話しに来たのです」
「何だと?」
「母さんは家を出たあと、大変な苦労をして僕を育ててくれ、大学にまで入れてくれました。 お陰で僕は思う存分自分の好きなロボット工学の勉強をすることができました」
「ロボット工学…」
「そうです。実は、この施設の介護ロボットはすべて僕が開発したものなんです」
「では、このYさんも…」
「ええ、今まではロックがかかっていたのでお話できませんでした。申し訳ございません」
「父さんは先程、彼女のお陰で幸せだと言っていましたね。どうしてだか分かりますか?」
「ああ、彼女は親切でよく気が利いて私の好みも分かってくれていて、まるで…」
「まるで?」
「…かつての私の妻のように…!」
「そうです、Yには僕の覚えている限りの母さんの性格やしぐさをプログラミングしてあります。ただ、父さんの好みまでは僕は知りませんが」
「そ…そうだったのか」

「母さんは本当に最期まで父さんを愛していました。これを聞いてください」

息子はY看護婦の耳たぶにそっと触れた。

「お父さん、お久しぶりです。もう、お互いに昔の事になってしまいましたね。 あの時は突然出て行ってしまってごめんなさい。ご苦労されたでしょうね。」

Y看護婦はN氏の妻の声で話し続ける。

「お父さんのお仕事の邪魔になってはいけない。私達が出て行かなければいけないって勝手に思い込んでしまって。でも大成功されたんですものこれで良かったんだと思います。 私が先に逝くことになってしまったけれど、本当に愛していました、さようなら…」

その後、幾日かしてN氏は天寿を全うしこの世を去った。
病室には1通のメモ書きがサインを添えて残してあった。

『遺言 私Nの全財産を Y看護婦の開発者に贈与する』

 

 

79: メス豚 2010/10/02(土) 20:28:16
全米が泣いた・・・

 

80: 創る名無しに見る名無し 2010/10/02(土) 23:06:21
いい話だな

 

81: 創る名無しに見る名無し 2010/10/04(月) 21:52:19
話を作ってくれる人がいてよかった
僕も頑張って作ろうかな

 

82: 創る名無しに見る名無し 2010/10/06(水) 01:18:07
みんな上手いよね。感心するわ。

 

83: 創る名無しに見る名無し 2010/10/06(水) 10:39:28
こう上手いのが投稿されちゃうと書き込み難いなぁ……

 

85: 創る名無しに見る名無し 2010/10/07(木) 21:06:12

『鈍感な男』

ああ、また今日も会社に行かなければならない。もう行かなくては。
テレビでは最近起こった殺人事件を頻繁にやっている。
生まれたばかりの子供が殺された事件だ。
「なんとも可哀相だ。生まれたばかりで殺されるなんて」
本当にそう思った。
だが人間というものは鈍感な生き物だ。
そのときはそう思ってもテレビから離れればそんなことは忘れてしまう。

嫌なニュースを見て私はひとつ、ふたつ、せきをした。
そういえば喉の調子が悪い。そりゃそうだ。
先週まで38度の猛暑日の連続、今日は20度を切っている。
夏にはクーラーでがんがんに部屋を冷やし、アイスキャンディーを食べながら「ああはやく冬になればいいのに」と嘆き、冬にはこたつで温まりみかんをほおばり「ああ寒い、早く夏になればいいのに」とわがままを言う。
ひどく鈍感な生き物なのだ、人間という生き物は。
おっともうこんな時間だ。
もう出なくては電車に遅れる。
私は家を出た。

ちょうど途中の駅まで電車が過ぎた頃だった。
猛烈な腹の痛さが襲ってきた。
もうこの世のものとは思えないほどの痛みだった。
痛すぎる。
駄目だ、この電車は特急だからあと20分は止まらない。
やばい、これはもたない。
となりのやつらがえらく幸せそうに見えた。
ふざけるな、何で俺ばっかりこんな目に。

だんだん脂汗が出てきた。
神様すいませんでしたもう悪いことはしません。
考えれば、便所に行きたい時に行って大をする、こんな当たり前のことがとてつもない幸せだったのだ。
そうだ、そうなのだ。
そのときになって苦しんでも遅いのだ。
なんて私は鈍感な男だったんだ…。
神様、これからは幸せをかみ締めながら大をします。
大をしたならば必ず「ふぅー今日も大ができました。私は幸せでした」と唱えながらしますから。

結局なんとか、トイレには間に合った。

私は変なせきをして大好きなタバコを2本いつもより余計に味わって吸った。
なにやら喉がイガイガするが「ああなんて上手いんだ。何気ないことがこんなに幸せだったんだ」
そういいながら吸い終わったタバコを2本道端にポイ捨てして、歩き出した。

 

 

89: 創る名無しに見る名無し 2010/10/08(金) 09:39:25
>>85
文章は大分ぎこちないけど、やりたいことは何となくわかる

 

86: 創る名無しに見る名無し 2010/10/07(木) 21:08:57
文章書くのムズ杉ワロタ・・・

 

87: メス豚 2010/10/08(金) 00:42:04
発想が面白いと思った

 

88: 創る名無しに見る名無し 2010/10/08(金) 09:16:51

『美女と野獣』

暑い。しかし、暑い。
外は35度を超えている。
仕事帰りに拾った財布を交番に届けて帰って来た所だった。
「普通100万も入った分厚い財布なんか落とさないだろ、まったく…」
お巡りさんには「こんなの届けるなんてあんた今時の若者にしては珍しいな」と言われたが、何が珍しいのか分からなかった。

テレビをつけると、今日から始まる月9のドラマが始まっていた。
ジャニーズ事務所の売れっ子超イケ面俳優と超美人女優の恋愛ものだ。
おそらく視聴率は軒並み30%超えだろう。
しばらくドラマを見ていると、耳元で夏にはおなじみの嫌な羽音が聞こえてきた。
私の血を吸おうとしている。
「しょうがないなぁ… どうだ旨いか?俺の血は」
たっぷり吸わせてやり、手で叩くのは可哀相だから窓から逃がしてやった。
窓に誘導するのに10分近くかかってしまった。

汗だくになった顔を洗おうと、洗面所の前に立った。
「しかし不細工だなぁ俺は。もうちょっとましな顔だったらもてたのになぁ」
その時だった。
誰かに後頭部をハンマーで打ち抜かれたような衝撃とともに私は意識を失った。
数分で意識を取り戻したが、どこか悪いのだろうか。

翌日、何事もなかったように会社に行くために電車に乗った。
なぜか今日は自分を見る周りの視線が多い気がする。
特に女性からの。
ふと女子高生の会話が耳に飛び込んできた。
「てか見た?ゲツク。主役不細工すぎじゃない?ヒロインもやばいでしょあの顔は」
『わかるわかる。あれはおかしい。もっと美男美女使うべきよ』
この子たちは美的感覚がおかしいのか?

会社に着き、午前中の仕事を滞りなく終え、昼休みに入った私の前に行列ができた。
「これ食べてください。」
 『お返しはいらないです…』 
今日はバレンタインだった。
だがおかしい。おかしすぎる。
私は生まれてこの方、チョコレートをもらったことなんてない。
周りを見ると、毎年山のようにチョコレートをもらう同期のNには誰もあげていない。
天地がひっくり返ったとしか思えない。

…そ、そうか天地がひっくり返ったのだ。
あの瞬間以来、世間の価値観がひっくり返ったのかもしれない。
つまり「イケ面は不細工に見え、美人はブスに見える =俺はめちゃめちゃイケ面」ということになる。

そして美人がブスに見えるということは…誰も美人に見向きもしなくなる!

私はあこがれの超美人のMさんに告白し、成功。
やがて結婚することになった。
同僚、家族口々に皆こう言った。
「こんな美人な嫁さんもらうなんてお前は幸せだな」
【絵に書いたような美男美女カップル】周りはみんなそう言った。
本当にその通りだ。
本来不細工な俺がこんなに美人な奥さんを…
あれ?Mさんは新しい価値観ではブスなはずだが…まぁそんなことはどうでもいい。
やっぱり新しい価値観では私はイケ面なのだろう。
Mさんは「あなたは本当にいい男ね」と言う。

3年後のある日、洗面所に立つとまた後頭部を殴られたような衝撃とともに私は意識を失った。
それ以来あれほど人気があった私には、誰も振り向かなくなった。
イケ面イケ面ともてはやされることも全くなくなってしまった。
そしていつしか私達夫婦は【世界有数の美女と野獣カップル】と呼ばれるようになった。

一つだけ変わらないことがあった。
それはMがいまだに私を「いい男」だと言っていることだ。

文章書くのムズ杉ワロタ・・・

 

91: 創る名無しに見る名無し 2010/10/08(金) 13:03:22
あああああああああああ夏なのにバレンタインにしちまったあああああ…

 

92: 創る名無しに見る名無し 2010/10/08(金) 15:30:16
よくあること めげずにがんばれ!

 

93: 創る名無しに見る名無し 2010/10/09(土) 09:59:26

 『卒アルカメラマン』

夕方、中学時代からの親友Nが家に遊びに来た。
こいつとは何をするときも一緒だった。完全に腐れ縁だ。
中学を卒業してもう何年が経つだろう。二人とも年を食った。
ふと中学時代のアルバムを久しぶりに見てみようということになった。
何もかも懐かしい。一枚一枚が記憶の片隅にあった風景を呼び覚ました。
「懐かしいなぁ。しかし、卒業アルバムってのは運動会とか修学旅行とかイベントの写真も多いけど、授業中とか休み時間とか何気ない日常を取ってるのがいいな。 しかも取られてる側がカメラマンを意識してないからすごくいい写真が取れてる」

『いや、実際バリバリに意識してたけどなー。でみんなカメラマンの方向に目向けちゃって普通でいられなくなってんの。そんで見かねたカメラマンが ”あー…私はいないものと思って普通にしててね、私目に入るとさ、いい写真とれないからさ”って』

「そういやそうだったな。おーこれも懐かしい。昨日のことのように覚えてるなぁ。こう考えると人生ってあっという間かもな。」

『うーん、なんだかさみしいな。死ぬ時に神様が人生の卒業アルバムみたいなのくれたらいいのにな。』

こんな会話を交わしているうちに私はある一つの事実に気がついた。
過去の記憶がふと思い出される時、なぜか決まって思い出されるのは毎回同じような場面が多いこと、そしてそれはなぜこんなことを覚えているのだろうというような、取り立てて特に印象深いことも起こらない本当に些細な日常の場面が多いことに。
まるで誰かが、その些細な日常の場面でシャッターを押しているかのように。

「きっと、神様が卒アルカメラマンを派遣してんじゃない? 死ぬ時に見せるためにってさ。あーもうこんな時間だ、帰るわ」

友人はおどけて帰っていった。

外はすっかり暗くなってしまった。
私は卒業アルバムを元の場所に戻し、部屋のカーテンを勢いよく引いた。

その瞬間、カーテンを引く「シャーッ」という音と同じくらいのタイミングで、かすかに【カシャッ】という音が聞こえた気がしたのだが、まぁ、気のせいだろう。

【あー…私はいないものと思って普通にしててね、私目に入るとさ、いい写真とれないからさ】

 

96: 創る名無しに見る名無し 2010/10/09(土) 23:55:48
>>93
OLとか主婦向けにいい話集めた本とかにありそう

 

94: 創る名無しに見る名無し 2010/10/09(土) 22:22:08

前スレで例の薬を書いた人です。
覚えてくれてると嬉しいんだぜ!

その部屋には、一人の男が一日中酒を飲んで過ごしていた。
とは言っても、今日は休日ではない。
男はかなり前から会社には行っていなかった。
普通は、すぐにお金に困るはずだが、男はそうならなかった。
彼は鞄を持っていた。
それは少し大きめでの色あせた、時代を感じさせる鞄だった。

もう一年ほど前になるだろうか。
男がまだ会社にきちんと勤めていた頃。
彼はとても真面目な人物だった。
真面目に働き、誤魔化しをしない。
嫌がられている仕事を進んでやる。
良い人の良い所ばかりを集めたような人物だった。
その人の良さが認められて、男は異例の昇進をした。
もちろん、昇進してもきちんと働いた。
むしろ責任のある地位ということで、仕事にかける熱心さはさらに強くなった。

それからしばらくした頃である。
男がベッドで寝ていると、夢の中で声を聞いた。
「君は真面目でしっかりした人物だ。そんな君にちょっとしたプレゼントをあげよう」
「あなたは一体……」
「うむ。名乗っても分かるまいが、強いて言えばお前たちの言うところの神だ」
「か、神様ですって」
「そうだ。そしてプレゼントというのは、この鞄だ」
「鞄ですか……」
「もちろんただの鞄ではない。なんでも取り出せる鞄だ」
「と、言うと」
「欲しいと思ったものを思い浮かべながら手を入れると、なんでも出てくるのだ。忙しいお前さんにはちょうどいいだろう」
「なんというすばらしい鞄でしょう」
「うむ。ただし一つ注意してくれよ。その鞄は……」
その時、ベッドから転がり落ちて、男は目が覚めた。
「なんだ、夢か。しかしあんな鞄が本当にあったら便利だろうな……」
しかし、男はそこで言葉を詰まらせた。
部屋の中に、先ほど神様が言っていた鞄があったのだ。

「や、するとさっきのは本当のことだったのか」
彼はおそるおそる鞄に手を入れた。
酒を思い浮かべながら。
最初は何もなかったはずの鞄に、手ごたえがあった。
引き抜いてみると、まさしく酒が出てきた。
しかも、思い浮べた通りの高級品だった。
それを飲むと確かに本物だ。
ということは、この鞄も本物ということになる。

かくして、男は会社に行かなくなった。
いつでも好きな物が好きなだけ手に入るのだ。働いて何になる。
「まさか遊んで暮らすのがこんなにおもしろいとはなあ。今まで忙しく働いてきたのがばからしくなってきたぞ」
最初こそ、同僚やら社長やらが男の家に訪ねてきたものの、彼が会社を辞めると言ってからは全く来なくなった。
もちろん鞄のことは誰にも言わなかったし、誰にも見せなかった。
「そういえば神様が何か注意しようとしていたけど、なんのことだったのだろう。きっとこの鞄を自慢するなと言いたかったんだろう。誰も欲しいと言うに決まっている」

腹が空けば鞄からあらゆる料理を取りだして食べる。
暇になれば鞄はあらゆる娯楽を提供してくれた。
まさに至れり尽くせりの生活だった。
今ではこの部屋に来るのは、部屋代を取りに来る大家くらいのものだった。
そんなときも鞄からお金を出せばいい。
男は完全に働く気が失せていた。

そんな生活が続いていたある日。
ノックの音がした。
今日は部屋代の日だったかなと思いながら、男は鞄からお金を取り出そうとした。
蓄えなどあるはずがない。
いつでも何でも手に入るのだから。
しかし、紙は紙でも紙幣ではなく、ただの紙が一枚だけ出てきた。
よく見ると、このような文章が書かれていた。

「毎度ながら、ご利用ありがとうございます。初使用から一年が経ちましたので、本日を決算日とさせていただきます。あなたは支出と収入のバランスが悪く、すでに貯金は底をついております。それでも使用されたため、多額の借金が発生しております。次回の使用は借金を片付けてから…… 」

そしてその下には、信じられない額の数字が書き込まれていた。
「や、この鞄はなんでも無限に出せる鞄ではなく、神様の買い物道具だったのだな」
借金を返さないといけないからか、もはや鞄に手を入れても、何も出てこなかった。

 

 

96: 創る名無しに見る名無し 2010/10/09(土) 23:55:48
>>94
これはうまい
星っぽくもある

 

95: 創る名無しに見る名無し 2010/10/09(土) 23:36:19
星新一先生のショートショートコピペしてんじゃねーの?
とでも疑いたくなるような次元の再限度の高さ
惚れた

 

98: 創る名無しに見る名無し 2010/10/10(日) 10:35:26

『見えなかったもの』    

2040年、ガソリン車はすっかり影を潜め電気自動車が主流となり、テレビは全て3D、テレビゲームも3D、音楽でさえも科学的にも目の前で歌手が歌っているのと変わらないと証明されるほどの3D音質なるプレーヤーも出回るような時代になった。

おじいさんとおばあさんは、孫のN君に3Dメガネをつけるとまるで目の前に敵がいるかのような最新のシューティングゲームソフトをプレゼントするためにN君宅へ向っていた。

「喜んでくれますかねぇ?」
「きっと喜んでくれるとも。なんたって最新のゲームじゃからのう。店員さんも本当に画面上の敵がこっちに向ってくるように見える3Dだからとすすめてたしのう。まるでゲームなのに本当の人間がそこにいるみたいにみえるそうじゃよ。きっと気に入ってくれるじゃろ」
「喜んでくれるといいですねぇ。しかし、時代も進化しましたねえ…私らの時代には考えられないようなものばかりです」
「そうじゃな。3Dばかりで、本当にある大事なものが見えなくなるようにも思えるわい…」

無事N君宅につき、プレゼントを渡すとN君は大変嬉しがった。
「おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう!!さっそくやってみるよ! わぁーすっげー!本当に敵がいるように見えるよ!バン!バン! 面白い!ありがとうおじいちゃんおばあちゃん!」

「ほう、それはよかったのう。わしらは用事があるもんでこれで帰るよ。物騒な世の中じゃからお父さんお母さんが帰るまでおうちで留守番しているんだよ」

N君はゲームに熱中していた。
3Dメガネをつけて次から次へと本物に見える敵をおもちゃのピストルでやっつけた。
ふと玄関のドアが開いた気がした。
おかあさんが帰ってきたみたいだ。

「おおっ!?なんだ?いきなり強そうなやつがきたぞ。こいつが最後のボスか!? 黒いマスクをつけて顔が分からないな。カモフラージュだな!?そうはいくか!」

パーン! 乾いた音とともに火薬の臭いが立ち込めた。

その後おじいさんとおばあさんは100歳まで長生きしたが、死ぬ間際まであんなゲームを贈らなければと、自分達を責め続けた。

 

 

99: 創る名無しに見る名無し 2010/10/10(日) 12:32:14
星新一らしさを出したいならば2040年みたいな直接的な表現ではなくて
20XX年とかにした方が良いかもしれないです。
それと「その後おじいさん~責め続けた。」はないほうがスッキリすると思いました。
それかその文は残して「おかあさんが帰ってきたみたいだ。」をなくしてもスッキリすると思います。
つたないアドバイス済みませんでした。

 

100: 創る名無しに見る名無し 2010/10/10(日) 12:39:58

いいんですお…
確かにここは星新一スレだから星新一みたいに書いたほうがいいんだろうね。
最近阿刀田さんのやつを読んでショートショートちょっと書いてみたいと思って書くスレを探したんだが、星新一縛りのスレしかなかったもんで星新一のような文体とか無視して書いちまった。
初めて4つくらい書いてみたけど、やっぱり物語を作って文章にするのはムズ杉ワロター。

 

101: 創る名無しに見る名無し 2010/10/10(日) 12:48:49
でも面白かったのでこれからも書き続けてくれるとうれしいです!

 

102: 創る名無しに見る名無し 2010/10/10(日) 18:20:20

【キノイさん】

「おい!今日、探検に行かないか?」
授業が終わった途端、いきなりS君から声を掛けられた。
「面白いところがあるんだぜ!」
僕はこの小学校に転校してまだ3ヶ月。初めてできた友達がS君だ。
彼は毎日のように僕をこの町の『名所』に連れて行ってくれる。
駄菓子屋はもとより、用水路のザリガニ釣りや裏山の秘密基地まで。
都会から来た僕にはすべてが新鮮だった。
「どんなところ?」
「うーん、まだちょっとお前には無理かなー」
S君は何かにつけ大人ぶった言い回しをする。
「言っとくけど、僕のほうが誕生日が早いんだからね!」
「へへっ!お前、お化けとか大丈夫か?」
「へ…平気さ!」(平気じゃない!まったく平気じゃない!)
「ほんとかなー?」
「ああ本当さ!」(嘘ですごめんなさい)
「じゃあ俺が地図を書いてやる。今日はお前一人で行って来いよ」
「ええー?」
「怖いんだ」
「怖かないさ!」(一緒に行ってくれよー)
「決まり!」

S君は国語のノートを破って鉛筆で意気揚々と地図を描きはじめた。
「ここを曲がってこう行くと右手に石の階段がある。こいつを上ると、古い寺があるんだ。
 階段は108段、一気に上れば大したことはない」
「ちょっと疲れそうだな。もう少し体を鍛えてからの方が…」
「寺の境内に入ると、本堂がある。でもここじゃない」
S君は容赦なかった。
「本堂の裏に廻る。ここに渡り廊下があって、その下をくぐるんだ」
下手だけどやたら詳しい地図が出来上がる。
「ここに小さなお堂がある。これだ!ロウソクが並んでるからすぐ分かるぜ」
「そのお堂がこわ…面白いの?」
「そうさ、自分で確かめて来いよ。よし、こうしよう!そこでお前は『キノイさんこんにちは』って声を掛けて、ロウソクを1本持って帰ってくるんだ!」
「『キノイさん』?」
「ああ、みんなそう呼んでる」
「その人に『こんにちは』って言うだけ?怒らないかな」
「大丈夫さ、それと、明るいうちに行った方がいい。でないとお堂の中が真っ暗になって何にも見えないぞ。ロウソクを持ってくるの忘れるなよ、証拠だからな!」
S君は命令口調でそう言うと、僕に地図を押し付け、笑いながら帰っていった。

僕が家に帰ったのは3時ごろだった。
しばらくの間地図とにらめっこ。
どうしたものか…。
行かなきゃ弱虫決定だ。
僕は二度とそうなりたくなかった…思い出したくもない。
お父さんとお母さんは、ここへ引っ越したために2時間もかけて仕事場に行っている。
またここでいじめられるようなことがあったら…。
僕は決心した。
外はまだ明るい、今ならきっと大丈夫だ。

さっそくS君作の地図と、念の為懐中電灯を持ち家を出る。
隣町との境にあるお寺まで自転車を走らせる。
歩いて行けば結構時間がかかる距離だ。
ようやく到着したそのお寺の階段の前で、僕はちょっと立ちすくんでしまった。
108段あると言うその階段は、上に行くほど霞んで薄暗くなっている。
あまり上を見ないように1段1段ゆっくりと上って行く。
『30…50…80…100…』あと8段のところで顔を上げると、すぐ目の前が本堂だった。
『108っ!』うっそうとした木に囲まれた境内はそんなに広くない。

S君作の地図を見返してみる。
本堂の右に向かうように矢印が描いてある。
この先の渡り廊下の下をくぐるんだっけ。
渡り廊下は結構高いところにあって、しゃがまずにくぐることができた。
本堂の裏に廻るといっそう薄暗くなり、持って来た懐中電灯が役に立った。
S君の言っていた小さなお堂が見える…抑えていた恐怖心がじわじわ湧いてくる。
そろそろと近づいて行くと、お堂の前にロウソクの明かりがちらちらと揺らめいているのが見える。
こんな所へ一人で来るなんて、僕は弱虫じゃなくなったんだろうか?いや別に何も変っちゃいない。
もしかしたら今まで、あいつらの…いじめっ子達の暗示にかかっていたのかも知れない。
そう思うと、先ほど湧き出した恐怖心がすうっと引いて行く。

ついにお堂の前にやって来た。
そうだ、まずは声を掛けるんだ。
「キノイさん…こんにちは」(ちょっと声が震えた)
「はい、こんにちは」
「わっ!」
まさかお堂の中から返事があると思っていなかったので、びっくりして尻餅をついてしまった。
懐中電灯もどこかへ吹っ飛んでしまった。
「キ…キノイさん?」
「まあそう呼んでくださるお方もおいでじゃのう」
話し方がやさしく、なんとなく僕のおじいちゃんを思い出した。
「ゆっくりと話をしたいところじゃがもうすぐ夕立が来るでの、今日はまっすぐ帰るがええ」
「あ…え…あの、ロウソクを一本…」
「代りにまた新しいのを持っておいでなされや」
ピカッ!近くではないが稲妻が光った。
キノイさんの言う通り夕立が来そうだ。
「ありがとうキノイさん」
返事も待たず走り出し、境内を抜け108段の階段を転がるように下り、元来た道を自転車で全速力で飛ばす。
雨は次第に強くなり雷も近づいて来た。
ずぶぬれになりながらもようやく家にたどり着いた途端、ガラガラピシャーン!
稲妻と同時に轟音が鳴り響いた。
どこかに落ちたみたいだ。
夕立は、日暮れまで止むことは無かった

翌日、学校へ着くと…。
「おい、お前昨日だいじょうぶだったか?」
S君が駆け寄ってきて言った。
「ああ、別に怖くもなんともなかったよ!ロウソクもこの通り」
「違うよ、雷だよ!あのお寺に落ちたんだぜ!知らなかったのかよ!」
町では大騒ぎだったらしいが、新入りの我が家には連絡がなかった。
「それでキノイさんは?無事だったの?」
「ほら、これ」
S君が差し出したのは今朝の新聞記事の切り抜きだった。

『古寺の木乃伊 落雷で消失』

「ええっ!キノイさん死んじゃったの?」
「死ぬわけないじゃん、ミイラだぜ?」
「…ミイラ?」
「『木乃伊』って書いて『ミイラ』って読むんだ。『キノイさん』ってのは俺達がつけたあだ名さ」
S君はミイラになった即身仏の伝承を詳しく話してくれたが、ほとんど覚えていない。
ましてや、キノイさんとの会話など僕の口から話せる状態にはなかった。

放課後、すっかり焼け落ちてしまったあのお堂へ新しいロウソクをお供えに行った。
もちろん僕一人きりで。

 

105: 創る名無しに見る名無し 2010/10/10(日) 18:55:08
僕のもちょっと星さんのタッチからはずれちゃったかな?
あんまりオカルトチックなのは無かったもんね。

 

108: 創る名無しに見る名無し 2010/10/11(月) 10:21:03

  『戦争のある風景』

 今は何時なのか、ここはどこなのか、そんなことは分からない。
 ただ一つ分かっていること、それは毎日が戦争であるということ。
 生きるために、戦わなければならない。戦わなければ死ぬだけだ。
 そしてこの戦争には終わりがない。
 もし終わりがあるとすれば、それは私が死ぬ時だ。

 私は何時生まれたのか記憶がない。もっとも、それは誰だって同じだろう。
 両親の顔は覚えていない。兄弟はたくさんいた。
 しかしおそらくもうみんな戦死しているだろう。

 私はこれまで無数の仲間が死んでいく様子をこの目で見てきた。
 完全に油断してやられる者、敵から長時間必死で逃げ惑った末に結局はやられてしまった者など、どれも目を覆いたくなる光景だった。
 やられた者は皆例外なく白い布で覆われた。
 なぜなのかは分からない。
 敵なりの弔いなのかもしれない。

 最近はこれまでの旧式武器とともに、敵は最新式毒ガスを使ってくるようだ。
 ガスを吸ってしまうと意識が遠くなっていき、やがて死に至る。おそろしい兵器だ。
 だが旧式武器でやられるよりもこっちでやられる方が案外楽なのかもしれない。

 もうずっと何も口にしていない。動くのも辛くなってきた。
 私は意を決して敵に飛び込み、食料を盗むことにした。
 なーに、心配は要らない。慣れている。私は戦争をするために生まれてきたようなものだから。
 幸い敵は気付いていない。
 私はありったけの食料を盗みその場で食らい尽くした。やっぱり旨い。

 これであと3日は食わなくても平気だろう。
 急いで見つからないようにその場を去ろうとした時だった。
 「パーン」という乾いた音ともに鈍い痛みが走った。
 とうとう私もやられたらしい。ついに私も死ぬのか… 戦争は終わりだ…。
 薄れ行く意識の中私にも白い布が被せられようとしている。
 視界が遮られる直前、敵の仕留めた、という優越感に浸る顔と同時に、旧式武器についてしまった血を「汚らしい」という目でふき取る敵の顔が見えた。

 しかし、全くおかしなやつらだ…
 武器についた血は確かに私の体から吹き出たものだが、その血はまぎれもなくやつらのものであるというのに…。

 

182: 創る名無しに見る名無し 2010/11/16(火) 22:58:27
>>108
やー、凄い。

上手ですな。。

 

110: メス豚 2010/10/13(水) 23:54:05
>>108
とても文章が上手いし、オチもいいですねー
蚊かな?白い布はティッシュかな
オチがパッとわかれば最高でした

 

109: 創る名無しに見る名無し 2010/10/12(火) 17:48:47

『含み笑い』

今日は友人と飲みに行く約束をしていた。
約束の6時までまだちょっと時間がある。
私は寝転がりながら、暇つぶしに1歳半になる息子を横においてスポーツ紙を読んでいた。

息子は可愛い。
1歳半にしては表情が豊かな気がするのは、きっと親バカだろう。
最近はキャッキャッと笑うだけでなくニタニタ笑うようになってきた。
そう、また今笑った。
ちょうどいい時間になり、私は息子に行ってくるよと言って部屋を出た。
息子はキャッキャッと笑っている。

行きつけの店でビールを飲みながら友人と話していると、息子の話になった。
「お前の息子ももうすぐ2歳か。可愛いだろう。」
「ああ、可愛いね。ずっとこれ位の歳で止まってて欲しい」
「親としては心配だよな。この子はどんな一生を送るのか」
「そうだな。タイムマシーンでもありゃ未来に行って確かめられるのにな。近い将来もうできたりしてな」
「タイムマシーンなんてできてるわけねーよ。 そんなもんできてたらもうとっくに未来人がきてるだろーが」
「小学生みたいな話題だな(笑)ま、たまにはいいか。でもタイムマシーンができたら俺は過去に行きたいね。ただし…」
「ただし、今の記憶をそのままにして過去に戻りたい だろ(笑)?」
「そう(笑) それで競馬当てたり幼稚園の先生にどさくさにまぎれて…」

あっ…

ふと息子のさっきのニタニタした顔を思い出した。
ちょうどスポーツ紙の「競馬欄」と「ちょっとエッチな欄」の時だったような気がした…。

 

111: 創る名無しに見る名無し 2010/10/14(木) 13:02:28
皆さんとても文章がうまくて面白いです。
108,109さんお疲れさまです。

 

112: 創る名無しに見る名無し 2010/10/16(土) 12:58:03

『出会い』

取り立ててどうと言うことのない普通の会社員についている神様Nは、こちらも特に変わったところもなく穏やかで気立てのいいOLについている神様Mと、ついに訪れる瞬間にむけてガッチリ堅い握手を交わしてほほえみながら、下界の様子を見渡していた。

「いやあーM神様長かったですなぁ。あなたに会うのにかなりの年月がかかった。」
「本当ですN神様。やっと二人が会えるのですね。運命には逆らえないんですねー」

二人ともそれなりに出会いはあった。
お互い数人とは付き合ったが結婚までは至らずいい歳を迎えていた。
そろそろ結婚したい、運命の相手に巡り合いたい、そう思っていた。

「本当に運命です。私たちがそういう風に二人の人生を作ってきたとも言えますが、二人が会うのは天文学的な数字なんですから」
「そうですねぇ。何しろ、もし二人が人生の岐路で別の選択をしていたら、この場所で出会うことはなかったんですよねぇ」

時計は午後3時40分35秒を指していた。
二人の神様は息を飲むように秒針を見つめていた。
あともう少し、5,4,3、2、… 

午後3時40分40秒。
二人は、紆余曲折を経て、ついに駅前の交差点で出会った。
そして、何事もなかったように別々の方角へ歩き出した。

二人の神様は、せわしなくもう別々の相手と話を始めていた。
「いやーS神様 長かったですなぁ…」

 

116: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2010/10/16(土) 15:21:19
>>112
これ面白かったです
作中に時刻が入るとスケジュールに沿って話が進んでいる感じがして雰囲気がでますね

 

125: 創る名無しに見る名無し 2010/10/18(月) 21:20:07

一発ギャグを思いついた

「土葬」

M県S村には未だに土葬の風習があるという。
早速私は取材の為、そこへ行った。
私がS村に着くと丁度土葬の真っ最中だった。
「この村ではどんな者でも土葬にするんです」

不謹慎に思いながらも、土葬の様子を撮らせていただいた。
そしてその日の夕食に焼き魚を頂いた。
お腹が空いていた私はあっという間にそれを平らげる。
食べ終えた骨と皮をゴミミ箱へ捨てようとすると突然村の人に怒られた。
そしてひったくるように魚が乗っていたお皿を奪うと外へ飛び出していった。

なるほど、この村ではどんなモノでも土葬にするんだな。

 

127: 創る名無しに見る名無し 2010/10/19(火) 09:45:45
>>125
ちょっとワロタ

 

128: 創る名無しに見る名無し 2010/10/19(火) 10:04:42

『どんぐりころころ』

どんぐりころころどんぐりこー。
さあ大変です。どんぐりが、お池にハマってしまいそうです。
これを承けた報道陣が、いち早くお池の周りを取り囲んだ。
今日の昼間のワイドショーは生中継。
見出しは、『どんぐり、死す!? どんぐり落下の一部始終を生中継!』だ。

真っ先にすっ飛んできた民間企業のリポーターが、どんぐりの様子を大声でハキハキと、尚且つ早口でカメラに向かって実況している。
「大変です! あのどんぐりが、この大山池に向かってこの山の斜面から転げ落ちてきています。危ない、岩にぶつかる、きゃあ! 救助隊はまだこないのでしょうか。わたくしがこうして話しております間にも、どんぐりはどんどんお池に向かって転がりつつあります」
気がつけば、この報道を見たであろう地元住民もお池を取り囲んでどんぐりの行く末を見守っていた。

すると、遠くから空気を切り裂くような断裂音が聞こえてきた。
それが徐々に近づいてきて、真上で停止した。
それを必死に伝えるリポーター。
「今救助隊のヘリコプターが到着しました! どうやら、斜面からの救助は不可能と見込み、上空からの救助となる見込みです!」
この事態を深刻そうにとらえる報道陣を見て、ある老人が、冷静な口調で呟いた。
「大袈裟じゃのお。この五十年間、事件や事故が皆無だからと言ってどんぐりごときにこれはやりすぎじゃ……平和じゃのお」

 

131: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2010/10/19(火) 21:06:24
>>128
こんな平和な時代が来たら素晴らしいですよね

 

129: 創る名無しに見る名無し 2010/10/19(火) 17:14:37

【釣り】

「どうですか、釣れますか?」
「いえ、今糸をたらしたばかりなんですよ」
「本命は?」
「あの底の方に群れてるのが見えますでしょ」
「ああ…あれですか」

「おっ、引いてますよ!」
「…」
「合わせないんですか」
「ええ、向こう合わせで」
「引きますねぇ」
「群れが一気に寄ってきたみたいで…」
「あっ!」
「…」
「切れてしまいましたね、もう少し太い糸になさってはいかがですか?」
「これが精一杯でしてね…さてと」
「え?もうお引き上げですか」
「ええ、これは1回限りなんですよ」

そう仰るとお釈迦様はくるくると蜘蛛の糸をお仕舞いになったのでした。

 

130: 創る名無しに見る名無し 2010/10/19(火) 20:27:12
皆さんお疲れさまです。面白かったです。

 

133: 創る名無しに見る名無し 2010/10/20(水) 16:44:52

『知ってか知らずか』

 薄明りの中、プラネット教室という授業の中で、地球という惑星に関する授業が行われていた。
「えー、この惑星は近年、我々モリオン人によって発見された美しい惑星です。見てごらんなさい、ここがアメリカという大陸です。大きいでしょう」
 モリオン人教師が、宙に浮いた地球の中のアメリカ合衆国に指を触れて言う。
 それを見ていた生徒たちは、つまらなさそうに大あくびをかいた。
「先生、そんな小さな球を見たって、何もおもしろくありません」
「そう言わずによく見てごらんなさい。この辺りには、この惑星の人びとが造りあげた素晴らしい彫刻があるのですよ。これを見れば、感動するに違いありません」
 モリオン人教師はビサの斜塔のある辺りを指で触れ、もう片方の手に持っていたホログラム映像機で、ビサの斜塔の立体資料映像を映し出した。
「どうですか、この傾き具合。これぞまさに芸術だとは思いませんか。そして、このギリシャという大陸のコロシアムは大変素晴らしい闘技の歴史を持っているそうです。他にも、建築物がたくさん密集している地帯があるんですよ。例えばこのホンコンという都市には、アメリカ大陸のラスベガスという都市並みに細長い建築物が密集していて――」
 説明をしながら、モリオン人教師は次々と各地を触れていく。
 しかし、モリオン人教師の独りよがりな授業に疲れた生徒たちは、既に別の星に興味の対象を移していた。
「あの星、ドッジボールに使えそうだな……」

 一方その頃、地球では、世界規模での非常事態宣言が発令されていた。
各国の放送局では全ての番組が臨時ニュースに差し替えられ、地球の人々は某国が開発した新兵器だの、宇宙人の侵略だのと騒ぎ、慌てふためいていた。
そんな中、キャスターは冷静に事実を伝えていく。
「大変です。世界各地の都市が謎の巨大物体により一瞬にして破壊され、多くの人々の命が今もなお失われ続けています。たった今入ってきた情報によりますと、つい五分ほど前に日本の本州が陥没したようで……」

 

 

135: 創る名無しに見る名無し 2010/10/20(水) 21:58:47

『兄貴』

年末、久しぶりに家族全員が揃った。
昨年、一昨年は兄貴に急な手術が入ったために帰省できず、全員揃わなかった。

兄貴は小さい頃から物を直すのが得意だった。
お気に入りの時計、お気に入りのラジカセ、壊れると直るまで何日かかっても結局直してしまった。
一度直すと決めたら最後まで直そうとする、そんな兄貴は、医者という職業が天職なのかもしれない。

兄貴とは3年ぶりに会うが相変わらず元気そうで良かった。
お互いの近況を話しているうちに昔話に花が咲き、しまいには二人で押入れをあさり出してしまった。
昔の卒業アルバムや当時読んだ漫画など色々出てきたが、最も懐かしさを覚えたのはファミコンカセットだった。
当時飽きるほどやりこんだソフトが山のように出てきた。

二人で異様に盛り上がってしまい久しぶりにやってみようということになり、少し埃かぶったファミコンにカセットを差し込んで電源を入れたみた。
しかし、赤や青や紫やらが画面いっぱいに広がり、中央になにやら茶色のキャラクターのような四角いものが映るだけで、そのカセットで遊ぶことはできなかった。

ふと、そのカセットはゲームが上手くいかず癇癪を起こした兄貴が思い切り床に叩きつけて壊したもので、兄貴が最も気に入っていたソフトだったことを思い出した。

兄貴はフーッとカセットに息を吹きかけてもう一度起動してみたがやはり動かなかった。
「懐かしいなぁ。よく動かない時にやったな、そのフーッってやつ。」
「このフーッをすることによってカセット内部にたまった埃やゴミが取り除かれて接触が良くなるんだよ。」
「でも、そのフーッって今となっては実は何の意味もなかったって証明されたらしいよ(笑) なんかでみたもん」
「……」

そういえば兄貴は学校もさぼって、泣きながら実は意味の無かったフーフーをやり続けていたっけ。
息を吹き込みすぎて過呼吸で救急車を呼びそうになったんだった。
でも直すと決めたら絶対に直そうとするあの執念が、兄貴を立派な医者にしたんだよな…しみじみとそう思った。

「結局直らなかったんだよな…このカセット。めちゃくちゃ気に入ってたのに」
兄貴は悔しそうに1階へ降りていった。

ちなみに兄貴は独身だ。
以前はのろけ話を散々聞かされた自慢の恋人がいたが、捜索願いが出されてからもう10年が経つ。

 

137: 創る名無しに見る名無し 2010/10/20(水) 22:04:59
懐かしいほのぼの話かと思ったら……

 

138: 創る名無しに見る名無し 2010/10/20(水) 22:06:59
や、やたー…ひっかかった人がいたー…

 

139: 創る名無しに見る名無し 2010/10/21(木) 19:16:55

『とある装置』

ある日、アール博士の研究所に、友人のエヌ氏が招かれた。
エヌ氏は研究所内を見て回り、そしてある部屋にたどり着いた。
エヌ氏は不思議そうな表情を浮かべて言う。
「この部屋にはレバーしかないようですが」
「はい、レバーだけです」
「このレバーを引くと何が起こるんですか」
「何だと思いますか」
「うーむ。わかりませんなあ」
「もし当てることができたなら、大金を差し上げましょう」
「それは本当ですか。では当てて見せましょう。うむむ……」

エヌ氏は腕を組み、悩んだ。
悩んだ末に出した結論は、「部屋拡充装置」。
しかし、アール博士は首を横に振った。
「残念ですな。ハズレです」
だが、エヌ氏は悔しそうな素振りを一切見せなかった。
「博士の発明品は奇抜ですからなあ。考えるだけ時間の無駄だったかもしれません。で、正解は何なのですか」
「それでは、お教えしましょう。なんと、これは幽霊発生装置なのです」
「ほお、実に面白いですな。ところで、この装置はどういった時に使うのですか」
「心霊屋敷や、あまり人を近づけたくないような廃墟での使用が目的ですかな」
「なるほど。既に商用化を見越していらっしゃるんですね」
「ただ、まだ実験さえしていない状況なので、実際にどのようになるのかは神のみぞ知るということなのです」
「では博士、ここは一つ私で実験してみてはいかがですか」
「なに。客人を実験に巻き込む訳にはいきません」
「いいじゃないですか。客人たっての希望なんですから」
博士は腕組みをし、顔をしかめた。
「では、約束して下さい。何が起こっても自己責任ということで……。無論、万一何かが起これば、我々が全力であなたを助けます」
「分かりました。いやはや、博士の実験台になれるとは真に光栄ですなあ」
 エヌ氏は、まるで子供のように目を輝かせた。
「では、私は部屋の外で助手とモニターしています。準備が出来次第、お声をかけますので……。それと、この懐中電灯をお持ち下さい。部屋を真っ暗にするので」

かくして、実験の準備がなされた。
エヌ氏は期待に胸を膨らませ、懐中電灯を片手に今か今かと待ち構えていた。
「準備が完了しました。ではそのレバーを下に引いて下さい」
それきたと言わんばかりに、エヌ氏はさっとレバーを引いた。すると、部屋が真っ暗になり、どうも気味の悪い雰囲気が漂い始める。
「む、何かの気配がするぞ。早速、幽霊のお出ましか」
懐中電灯を四方に向ける。が、まだ何も出てはこない。
ふと、背筋が寒くなった。
「コロシテヤル……」
突然の冷ややかな声。反射的に後ろを振り向くエヌ氏。
「うわああああ!」
エヌ氏は恐怖のあまり絶叫し、その場で倒れて気絶してしまった。

これを別室のモニター越しに見ていたアール博士と助手が、急いで実験室に駆け込み、エヌ氏に駆け寄った。
「おい、しっかりするんだ。おい」
その声に、エヌ氏は意識を取り戻した。
「う……は、博士……」
「大丈夫かね」
「いえ、まさかあんなリアルなものだと思いませんでした。博士の実験の凄さを身をもって知りましたよ……」
アール博士に頭を抱えられながら、淡々と話すエヌ氏。
「あの髪の長い女。殺してやるなんて言って、私のことを物凄い形相で睨み付けて……今思い出すだけでもおぞましい。あまりにも現実的で、予想だにしないリアルさだったので、この有り様です。本当にすみませんでした」
それを聞いたアール博士と助手は、顔を見合わせた。
「どうかしたのですか」
「いやね。さっきの実験、実は失敗だったのです」
「はい、私のせいで……」
「いえ、あなたのせいではありません」
涙ぐむエヌ氏を見つめながら、アール博士は続けた。
「実は、システムがエラーをはき、装置は起動すらしていなかったのです。それに、そのような女性はプログラムには含まれていません。あなたは、きっと悪霊か何かに取り憑かれているのでしょう。一度、祈祷師に見てもらった方がいい」

 

141: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2010/10/21(木) 23:27:49
>>139
起承転結の流れが良くてスムーズに読めました。
特にエヌ博士の言動で星新一の作品を読んでいるように錯覚しました。

 

140: 創る名無しに見る名無し 2010/10/21(木) 22:12:34
この話の流れは星っぽいな

 

142: 創る名無しに見る名無し 2010/10/22(金) 01:12:15
星新一の作品コピペしたかと思う位うまい!

 

143: 創る名無しに見る名無し 2010/10/22(金) 12:44:33
やったー!
初めて誉められた。モチベーション上がりました、ありがとう。

 

154: 創る名無しに見る名無し 2010/10/26(火) 20:59:07

『新しい発明品』

 エル博士が新しい発明品を開発したということで、それを世間に公表すべく記者たちが集められた。
「博士、今回開発されたものは、一体どのようなものなんでしょうか」
「うむ。この度、私が開発したものはこれである」
 そう言うと博士は、リモコン操作で壁一面を覆っていたカーテンを開けた。
 それを見た記者たちにどよめき声があがる。その記者たちの中から、一人の若者がエル博士に質問した。
「博士、これは栓のたくさん付いた蛇口にしか見えませんが、一体何なのです?」
「これはじゃな、実際に体験してみてのお楽しみじゃ。君、やってみなさい」
 博士の言われるままに、若者は一同の前で体験リポートをすることとなった。

「まずは一番右の栓をひねってみたまえ。予め、手は蛇口の下に受けておくように」
「分かりました」
 手を蛇口の下に受け、警戒しつつもゆっくりと栓をひねる若者。すると、透明の液体が流れだした。
「ただの水ですね」
「そう、ただの水じゃ。では次に、その左側の栓をひねってみたまえ」
 若者は、先ほどの栓を閉め、左の栓をひねった。
「次はお湯ですね」
「うむ。じゃが、ここからが私の新発明である。次の栓をひねってくれたまえ」
 エル博士は、立派な白の口ひげを撫でながら指示を出した。
 栓をひねった瞬間、若者の顔が急に青ざめだした。「どうしたんだ?」
 他の記者が、若者に声をかける。
「今、変な声が……。お前を呪ってやるって……」
「なに? そんな声はまるで聞こえなかったぞ」
 このやりとりを聞いて、博士はにやりと笑った。
「予想以上の反応をしてくれてありがとう、若者よ」
 若者は、はっとしたように博士の方を振り向いた。
「まさか……」
 すかさず、蛇口の下に手を差し出す若者。
「おお、今度は音楽が聞こえる」
「なに、もっと詳しく教えろ」
「どんな感じなの?」
「何の音楽?」
 記者たちが口々に若者を質問責めにした。それを静止するように博士は手をあげた。
「これこれ、君たちにも聞かせてやるよ。ただし、桶を使ってな」
 これを聞いた記者たちは、さらにざわついた。
「そこの君、桶に音楽を入れて記者たちに渡したまえ」
 エル博士は、助手に指示を出した。そして、数個の桶に音楽を入れて記者たちに手渡した。
「それを全身に浴びるなり、手を浸けるなりしてくれたまえ」
 記者たちは、エル博士の言われたように、一見空っぽの桶の中身を全身に浴びたり、体の一部を桶に浸けたりした。
「なんだこれは。本当に音楽が聞こえる」
「凄いわ。全身に浴びれば小型プレイヤーなんかいらないじゃない。画期的だわ」
「これはどのような仕組みになっているのですか、博士」
「うむ。それはだな、骨伝導と空気力学を応用したもので、予め録音しておいたものを空気中に圧縮し――」
 エル博士が得意気に記者たちの質問に答えている間、一人蛇口の前で音楽を聞いていた若者が好奇心を膨らませ、耐えられずにいた。
 もう一つの栓。これは一体何なのか、気になって気になって仕方がなかった。
 そして、皆がエル博士の話に夢中になっているのをいいことに、好奇心に負けてしまった若者は最後の栓をひねって手に浴びてしまった。
 エル博士の話は数分間続いた。そしてついに最後の栓の中身を紹介しようと、博士は若者に語りかける。
「では若者よ、最後の栓をひねってくれるかね。ただし――」
 そう言って後ろを振り返るエル博士。記者たちの視線も、エル博士から若者に移動する。
「ひゃい……」
 あまりにも元気のない声。若者が後ろを振り向き、ではひねりますよ、というような言葉を発した瞬間に一同は凍りついた。
 歯の大半が抜けた、白髪のミイラのような老人がそこに立っていたのだ。
「博士、あれは一体……」
 エル博士は目をつむり、腕組みをしながら神妙な面持ちで語り始めた。
「最後の栓は……時間。すなわち、その物質に時間を加算していくものじゃった。主に年月を要する実験などでの使用が目的じゃったが、人間が使うと短時間で老いてしまうんじゃ。こうなってしまっては、もはやどうすることもできない。
ついさっきまでは若者だった彼も、もう私よりも遥かに老いてしまった。彼のような若々しい青年をこのような形で失ってしまうとは、残念なことじゃ」

 

155: 創る名無しに見る名無し 2010/10/26(火) 22:08:14
面白かったです!

 

156: 創る名無しに見る名無し 2010/10/26(火) 22:39:26
蛇口どうしの間に関連があると落ちがついてよかったような

 

157: 創る名無しに見る名無し 2010/10/26(火) 23:09:55

ありがとうございます、参考になります。

たったの5作品ほどしか投下してませんが、一旦ネタが尽きてしまったので、また期間をおいて投稿させてもらいますね。
次はもう少し完成度の高いものを投稿したいです…

 

158: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2010/10/26(火) 23:28:15
触れることで効果を受けるという共通事項がいいですね。
音や時間に触れるという発想が新しいです。

 

159: 2010/10/30(土) 14:42:53

「宇宙環境会議」

ある時、とある辺境惑星で宇宙環境会議が行われた。
銀河中の知的生命体が自分達の惑星の代表を、この何も無い辺境惑星に送り込んだ。
そして、生命の存在する全ての惑星の自然環境生命資源利用政策について、各惑星を代表する一癖も二癖もある精鋭の論客達と激論をぶつけ合った。

知能の高い動物は食べるべきか?
保護するべきか?
そもそも知能の定義とは?
知能の低い高いは誰が決めるのか?
命である以上、皆が等しく尊いのではないか?

そして議論は数ヶ月以上にも及んだが、各々の利害や哲学、果ては宗教観がぶつかり合って合意には程遠い状態が続いていた…

そして業を煮やした様に、突然に不慮の事故が起こった!
各惑星の代表団をこの辺境惑星まで乗せて来た宇宙船が誤作動を起こして太陽に突っこんでしまい、消し飛んでしまったのだ…
幸い死者は出なかったが、つまる所全員が、この辺境惑星に閉じ込められてしまったのである。
テロを警戒して会議の場所は伏せられた上に、念入りな情報操作が行われていた為、まず救助は来ないだろう…。
非常用の食料はすぐに底を尽きた…そして…
原始的で野蛮で熾烈な生存競争がこの星で始まったのだった。

後に地球と呼ばれるこの星で。

 

 

167: 創る名無しに見る名無し 2010/10/31(日) 00:17:54
>>160
逆ノアの箱舟

 

161: 創る名無しに見る名無し 2010/10/30(土) 15:03:16
どでしょう?

 

162: 創る名無しに見る名無し 2010/10/30(土) 15:14:34
なかなか楽しく読ませて頂きましたが、オチをもう少し丁寧に仕上げた方がいいかなと思いました。

 

163: 創る名無しに見る名無し 2010/10/30(土) 15:44:31
このスレ面白いな

 

168: ◆PDh25fV0cw 2010/11/07(日) 23:20:18
なんか人が居ないので投下

『生まれ変わり』

人の気配のない、暗い森。
月や星は雲におおわれ、光源となるものは青年の持つ小さな懐中電灯だけ。
自殺の名所であるこの森に、青年がやってきたのはやはり自分の人生を絶つためだった。
ナップサックから縄を取り出し、太い木の枝に結ぶ。
これで後は首をつるだけとなったとき、後ろから小さな物音がする。
驚いて振り返ると、小さな白いウサギが佇んでいる。
「あんたも自殺するのかい?」
ウサギは青年にいきなり話しかけた。
青年はいきなりのことに面をくらい、声も出ずただただ呆然とした。
しかし、自分が狂っていたとしても後は死ぬだけだ、何の支障もない。
最後に話したのがウサギというのも面白いではないか。
何の面白みのない人生だったが、最後に面白いものに出会えたものだ、と自分を納得させた。

「ウサギがしゃべるとは、なんとも奇妙なことがあるものだ」
「それはそうでしょう、私は元々人間だからな。2年ほど前にここで自殺をした者だよ」
「なるほど、転生というものですか。ということは、私も死ねば何かに転生するということですか」
「そういうことになるな」
青年はウサギの前に座り、少し考える。
青年は虫が嫌いだ。
もし虫に転生することを考えただけでも恐ろしい。
できれば目の前のウサギのようなものになりたい。
「転生をあやつることはできないのか?」
「転生は人生の残量に左右されるそうだ。君はまだ若いから人間になるかもな」
冗談ではない、人間として暮らすことがいやで死ぬのだ、自殺して人間に転生したら意味がない。
「どうにかならないものなんですか?」
「人間に死後の世界はいじれないさ、諦めることさ」

しかし、そう簡単に諦められるものでもない。
何度も何度もウサギに頼み込む。
はたから見ればずいぶん滑稽な光景である。
「そこまで言うのならしょうがない。森の奥に賢者がいるから少し待っていてもらえるかな」
そういって森の中に消えるウサギ。
しばらくすると、小さな瓶を二つ持って帰ってくる。
液体が入ったものが一つ、紙が入ったものが1つ。
「これを飲めば転生せずに死ぬことができる、もう一つが死神の契約書だよ」
ウサギは紫色の液体と、見たことの無い文字が書かれた紙とペンを渡す。
「死神の契約書とは、すごい賢者もいたものだ」

契約書に名前を入れ、薬を開ける。特になんの匂いもしてこない。
「本当に後悔しないかい?」
「いいや、しないさ。自分で死ぬのだから」
ぐいっと一気に飲み干す青年。
しばらくすると、気を失い地面に倒れ込む。
「やれやれ、薬を飲んだか」
森の奥から一人の男が現れる。
老人にも、中年にも見える、なんとも不思議な感じの男だ。
彼は足元のウサギの機械を止めると、青年を担いで森の奥に向かう。
そして、森の奥の隠し扉を抜けそこに青年を置く。
「やれやれ、こんな年齢で死のうとするとは勿体ない」
男がつぶやく。
すると声に反応したのか、青年が目を覚ます。
「ん?ここはどこですか?」
男は大仰に答えた。
「ここは地獄だよ。転生せずに死んだのだ、ここで労働をしてもらうことになる。契約書にサインはしたのだろう」
「なんと、そういう契約書だったのか。これなら転生した方がましだった」
嘆く青年。
これで青年は、”死ぬまで”ここで働くことになる。
死後の世界から逃げ出そうと考える人間もいないだろう。
死後の世界というものは、便利なものだ。

 

170: 創る名無しに見る名無し 2010/11/09(火) 18:34:17
>>168
これは面白い。オチを理解するのに少し時間がかかりましたが、星さん的なオチで良かったと思います。

 

171: 創る名無しに見る名無し 2010/11/10(水) 19:55:07

「神様」

ここは西暦2450年の世界。既に人類は前世紀からの核戦争によりほとんど死に絶えている。
生き残ったものたちは、一つの大きな都市に集まり辛うじて生き延びえていた。
もちろん、犯罪は蔓延り、至るところで殺人や強盗が起こっていた。
弱肉強食の社会となり、民衆が組織した武装集団の前に警察は無力化していた。
このような終末思想が蔓延する暗黒世界の中では、もはや誰も神の名すら口にするものも居なくなっていた。

 そんな折突如、上空が眩いばかりの光につつまれた。
そして白いひげに、白い立派な杖を持った老人がゆっくりと空から降りてきた。
その神々しく輝く姿を目にした人々は口々に、「神様だ!」と叫び出した。
跪くものや感激の余り涙を流し喜ぶものいる。
神様はゆっくりと喋りだした。
「わしはずっと雲の上から皆の者を見守っておった。もうこれ以上無益な争いは止め、お互いを尊重し平和に暮らすことを目指したまえ」

人々は初めて、これまで自らがどれだけ馬鹿な争いをしていたかを思い知らされた。
もう隣人同士争う時代は終わりを告げたのだ。
同じ一つの神を信じ団結することで、ついに人類は平和な社会を築くことになるであろう。
歓喜の聴衆に見送られながら、白い杖の神様は優しい笑みを湛え、ゆっくりとまた雲の中へと消えて行った。

白い杖の神様が雲の中の世界へと戻ると、1枚の伝言文が机に置かれてありこう書かれてあった。
予算が下りないために惑星地球実験は終わりになった。
実験台は即刻廃棄処分せよ。
白い杖を放り出しながら老人はため息混じりにつぶやいた。
「せっかく神様が人間の前に現れ、平和になるかの最終実験だったのに」

 

173: 創る名無しに見る名無し 2010/11/10(水) 21:44:49
>>171
題名は「平和」の方が分かりやすかったかも

 

175: 創る名無しに見る名無し 2010/11/12(金) 22:51:11
>>171
2450年と固定するのは星らしくないかな、と

 

176: 94 2010/11/13(土) 22:48:11

すごい久しぶりにショートショートの新作を考えた。
授業中に書いた。クオリティは保証しないんだぜ!

 『会員証』

 その飲食店は、目立たない路地にひっそりと建っていた。
 決して大きい店ではないが、それがかえって知る人ぞ知る名店といった印象を与えた。
 しかしその店を知っていても、食事をすることは容易なことではなかった。
 その店で食事をするには、会員証が必要だったのである。

 ある日、男がこの店に立ち寄った。
「ここで食事ができるか」
「はい。ですが、普通の方はご遠慮させていただいております。会員証をお持ちの会員でなければ」
「なんだ、この店は会員制だったのか」
「さようでございます」
「では会員になるとしよう」
「無理でございます」
 それを聞いて、男は怪訝そうな表情を浮かべた。
「会員でなければ食事ができない。しかし肝心の、その会員になれないとは。おかしい。矛盾しているぞ」
「いえ、そう早合点なされては、困りますな。つまり会員証の数をそれほど多く作ってはいないのです。会員の人数がとても少ないわけですな」
「そんなことで儲かるのか」
「ええ。おかげさまでね。会員の方はみな、大金を置いていっていただけるので」
「なるほど、大金を払うだけの価値がある料理、というわけだな」
「そうなりますかな」
「仕方ない。出直そう」
 そう言って、男は帰っていった。

 数日後、店に再び男が現れた。
「どうだね、これで食事ができるだろう」
 男が出したのは、高級感のある金色のカードだった。
「たしかに、我が店の会員証ですな。どうなされました」
「大金をはたいて、会員の者から買い上げたのだ。きちんと会員の権利を譲るとの証明もある」
「証明書の証明というわけですな。よろしゅうございます。しばらくお待ちください」
 店主がいったん、店の奥へと消え、しばらくしてから戻ってきた。
 ただし、店主の手にあったのは、料理ではなく、拳銃だった。
「なんの冗談だ、わたしは食事をしにきたのだ。冗談につきあうつもりはないぞ」
「いえ、これが商売なのです。普通に会員を作ったのでは儲けはそうでません。しかし、料理がうまいとちらつかせる。つまりえさですな。そして、あなたのような方が大金を払ってまで会員証を手に入れるわけです」
 そう言って、店主はポケットから男が持っているのと同じカードを取り出した。
「あ、つまりわたしに会員証を売ったやつ。あいつもぐるだったのだな。よくもだましてくれたな」
「いえ、わたしは嘘は申していません。しかし、あえて申し上げるなら……」
 店主はなれた手つきで拳銃の引き金を引いた。
「わたしは本当は料理が下手なのです」

 

177: 創る名無しに見る名無し 2010/11/13(土) 23:03:17
>>176
おもしろいし内容もわかりやすくて星っぽい

 

179: 創る名無しに見る名無し 2010/11/14(日) 12:50:49
>>176
すごく面白い!授業中に書いたクオリティとは思えないですね
言い回しなども星さんらしくて、オチも素晴らしいものだと思いました。

 

180: 創る名無しに見る名無し 2010/11/15(月) 02:09:38
>>176
面白い
あなたと結婚したい

 

188: 176 2010/11/17(水) 21:46:20
みなさんありがとうこざいます!評価されて嬉しいんだぜ!

 

183: 創る名無しに見る名無し 2010/11/16(火) 23:53:53

ぱっと書きました。

「滅亡計画」

 近い将来、小惑星がぶつかって地球が滅亡するとのニュースを耳にした人々は、我先にと安楽死の薬を求めていた。
男たちは安楽死の会場で働く係官である。
人々に安楽死の薬を手渡す業務を担っていた。

「早く死なせてくれ」
「楽に死にたいわ」

 人々はそう口にした。
会場には日夜行列が並び、地球の人口は着実に減少していた。
家族で薬を手にする者、恋人と共にこの世に別れを告げる者。
会場は涙と嗚咽に包まれていた。

 そして、ついに最後の一組が会場に並んだ。
背の曲がった老夫婦で、二人で手を繋いで静かに頬を濡らせた。
「あの世でまた会おう」
「ええ、あなた」
 老夫婦はそう呟きあうと、瞼を閉じて息を止めた。
係官たちが二人の遺体を運び出した。
すると、会場の裏口からぞろぞろと人がわいて出てきた。
「やっと終わりましたか」
「そのようですな」
「いやはや、長かった」
 その人間たちは得意げに髭を撫で、軍服の勲章を光らせていた。
「やっと、邪魔な愚民どもを掃除できました」
 男たちは部下に命令してニュースの放送を止めさせた。

 

 

184: 2010/11/17(水) 00:37:30
地球最後の日がくるとしたら、俺はのんびり本でも読んでその日は過ごしたいなぁ

 

189: 創る名無しに見る名無し 2010/11/18(木) 21:44:34

つまらないかもしませんが

『忘れたいこと』

長年の研究の結果、エフ博士はようやく忘れたいことを忘れさせてくれる薬を完成させた。
「俺が若いときさんざんいじめてきた、エヌ教授、おれを侮辱した同僚のエス、俺を振ったオー、俺を不快にさせた奴の記憶をすべて忘れるのだ」
エフ博士はそういって、その薬を飲みました。
「ほう、これはなんともすがすがしい気分だ。やっと不快な記憶から解放された。こんな薬を一人占めするのはよくない。どれ、あいつらにも分けてやろう」
エフ博士は友人に電話をかけました。
「やぁ、きみか。かくかくしかじかの薬を開発したんだが、試してみるかね?」
「なに、そんな薬を・・・。ぜひ、頂こうか」
こんな具合に、博士は次々と友人たちに薬を分けてゆきました。

   1週間後

「ふむ、退屈だ、なにか面白いことは・・・。そうだ、久々にあいつらと飲みに出も行くか」
エフ博士は電話をかけはじました。
「やぁ、エフだが。どうだい、久しぶりに飲みにでも行かないか?」
「どちらさまでしょうか?いま忙しいのですが・・・」
「おい、きみ、冗談はよしたまえ。エフだよ、エフ」
「エフ?申し訳ありませんが、エフという名は記憶にありません・・。人違いではありませんか?」
「もういい、なんとふざけたやつだ。大学時代からの友人に対して失礼にもほどがある」
怒り心頭のエフ博士は別の友人に電話をかけました。
「やぁ、きみかね。エフだが、どうだい、今晩一緒に飲もうじゃないか」
「エフ?いったい誰?」
「きみまでそんなことを・・・」
エフ博士ははっと気付きました。
「まさか、あの薬で・・」
その後もエフ博士は友人に電話をかけてゆきましたが、誰一人としてエフ博士のことを覚えていないのでした。
「まさか、友人とばかり思っていたあいつらのわすれたいことが俺自身だったなんて・・・。こうなったら・・・」

「エヌ教授、聞きましたか、エフ博士のこと・・」
「ああ、記憶喪失だそうだな。エス君、きみとエフ君とは大学時代から互いに切磋琢磨して研究に取り組んできたから、辛かろう」
「エヌ教授こそ大学時代にあれほど熱心にエフ博士を指導してきたのですから。」
「オーさんもひどくショックを受けてるそうだね。」
「しかし、エヌ教授、エフ博士と仲良くしていた連中がだれもエフ博士のことをおぼえていないというのですが」
「妙な話だが、その程度の間柄だったというこどだろう」

 

190: 創る名無しに見る名無し 2010/11/19(金) 08:21:10
>>189
地の文は星さんっぽくないけど、ストーリーや落とし方、会話文は星さんっぽい。
つまらないどころか面白かったです

 

191: 創る名無しに見る名無し 2010/11/19(金) 17:33:33

「夏の少女」

その少年は治療薬のまだ見つかっていない重い病気にかかっていた。
そして調度夏休みになろうとしていた頃、病状が悪化してしまい、郊外の静かな場所にある病院に入院した。
1日のほとんどを、友達とも遊べず病院のベッドで過ごす辛い日々であったが、気分転換のために午後はよく散歩に出かけることにしていた。
夏の美しい花や木々を見ることで華やかな気分になり、日々の憂鬱な気分も解消されるので、少年はこの散歩が大好きであった。

ある午後いつもの散歩に出かけていると、山道で足を踏み外してしまい急な斜面から転落してしまった。
どれくらい意識を失っていたのだろうか。
気が付くと辺りは既に濃い夕闇が迫っていた。
何十メートルという斜面を滑り落ちたのにも関わらず、幸運なことに怪我はかすり傷程度であったらしかった。
ふと少年が気付くと、側にとても綺麗な女の子が居た。
年は同い年か少し年上くらいだろうか。
「大丈夫なの? あなたを見つけたからここで気付くのを待っていたのよ」
「うん、大丈夫。でも早く病院に帰らないといけないよ」
少女は優しい笑顔で、「心配しないで、私に付いてきて」と言って病院までの道を導いてくれた。
別れ際に少年は「また会える?」と聞いてみた。
彼女は「うん、私もよくここに散歩に来ているのよ」と笑って答えた。

少年はそれ以来、少女と遊ぶようになった。
少女と出会って以来、以前とは見違えるほど彼は元気になっていった。
それまで友達と遊ぶことも出来ず、厳しい闘病生活を送ってきた少年にとっては生まれて初めて感じる幸せだった。
医者は信じられないといった様子であったが、症状が改善したのでもう退院してもいいと言った。
しかし彼は少女と離れ離れになるのを寂しく感じ、まだ病院から退院したくない気持ちであった。

ある夜、少年がベッドの上で寝付けないでいると、窓の外に人影を感じた。
乗り出してよく見てみると、遠くから少女がこちらを見ているようであった。
少年は急いでベッドから飛び降り病院の外に出てみたが、辺りに少女の姿は見つけられなかった。
少年は気になって彼女の名前を呼んでみた。
すると遠くで何か手招きをしているような彼女の姿を見つけた。
彼は少女の後を追いかけ、どんどん森の奥に入っていった。
しばらく歩くと、また彼女の姿が見えなくなった。
どこに居るのだろうと彼は辺りを見渡してみた。

すると、以前この場所に来たことのあるような記憶が蘇ってきた。
そうだ、あれは彼女と初めて会った日、自分が足を踏み外し転落してしまった場所であったと少年は気が付いた。
目を凝らしてみると、誰か2人の人影が近くに居るようであった。 
よく見てみると、一人は彼女であった。
そして側に横たわって動かないもう一人、それはあの転落した時の自分自身の姿であった。
その時急に体が軽くなるような感覚を感じた。
少女が少年を導くようにゆっくりと手を差し出してきた。
彼は幸福と優しい愛に包まれるのを感じながら、彼女の導く光の中へと入っていた。

 

 

193: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2010/11/20(土) 01:34:06
淡い雰囲気が素敵ですね。
オチのその後はどうなるのか気になりました。

 

194: 創る名無しに見る名無し 2010/11/21(日) 22:00:26
ヨーロッパの方の古い童話みたいだな

 

203: ◆Qb0Tozsreo 2010/12/06(月) 10:00:03

 『未来裁判』

 遠い未来。人工減少に歯止めがかからない人類は、ロボットと共存する社会となっていた。

 とある裁判所。

「これは正当防衛じゃないか! 情状酌量の余地があるはずだ」
「人間を殺したのよ。死刑に決まってるわ」
「彼の記憶装置からは殺した記憶が消去されていない。十分反省しているとみてよいのではないだろうか」
「このまま無駄に人間が減っていってはたまったもんじゃない! 見せしめとして死刑にすべきだ」
 老若男女、人間とロボットの入り交じった裁判員たちは熱い議論を重ねていた。

 そして……。

「判決!」
 法廷内には裁判官の甲高い声が谺した。被告人、弁護人、検察官、傍聴席の遺族、皆が固唾を飲んで裁判官を見つめている。
 裁判官はひとつ小さな咳払いをしてから、判決文を読み上げた。
「……被告人に無期充電禁止を処する」

 

204: 創る名無しに見る名無し 2010/12/06(月) 11:12:10
>>203
わろた!

 

206: 創る名無しに見る名無し 2010/12/08(水) 08:39:55

夢 前半
ある若い大学生がいた。彼は自分ではいつか何か大きなことを成し遂げようと思いながらも実際には何か努力するわけでもなく昼は漫然と
大学に通い、夜は仲間と飲み歩くという生活を繰り返していた。
しかし、彼ももうじき就職活動を始めねばならない年になっていた。周りの仲間も最近は遊ぶのをやめ、せっせと就活の準備を始めていた。

「なぁ、今日飲みに行かないか?」と彼が誘っても
「悪い、もうそんな場合じゃないんだ。お前もそろそろ準備しないとあぶないぞ。」と断られる。

「はぁ、つまらない奴だ。何が就活だ。毎日、毎日会社に通って、上司に頭をさげる、操り人形の生活のどこがいいんだ。俺は違う。いつか大きなことをして見せる」
彼はそう思うのだが、もちろん何をするわけでもなかった。

そんなある日、彼がただふらふらと町を歩いていると一つの張り紙が目にとまった。

「なになに、あなたの望み通りの夢を見せる枕あります。ご希望の方はエフ事務所までか。」
彼は胡散臭さを感じながらも面白みを感じ、そのエフ事務所まで訪ねることにした。

エフ事務所は彼の住む町から少し離れた人どおりのすくない場所にあった。いかにも怪しげで、入る気がうせてしまそうであった。

「あやしい、気味が悪いなぁ。しかし、ここまできて、尋ねないというのもないものだ。失礼します。」
彼は恐る恐るエフ事務所の戸をあけた。怪しげな外装とは裏腹に内部は非常に清潔感があり、最新鋭と思われる設備が整えられていた。

彼がおどいて一言も発せずにいると一人の科学者らしい白衣を着た男が現れた。

「いらしゃいませ、お客様。私、エフと申すものでございます。今日は、望みの夢を見せてくれる枕をお求めでいらしゃいますね?」
彼はようやく冷静さを取り戻し「ええ、そうなんですが・・。しかし、これは驚きました。すごい設備ですね。」
「いえいえ、こんなものはまだ序の口でございます。どうぞこちらへ、枕をご覧に入れましょう。」

彼が通された場所は真っ白な部屋でそこにもなにやら機械があり、その真ん中にはベッドが一台とその上には何の変哲もない白い枕が置かれていた。

「さぁ、どうぞ手に持ってこの枕の肌触り、形状をご確認ください。」そういってエフ博士は彼に枕を手渡した。

彼は手でそれをなでてみたり、顔を当ててみたりしたがどう考えても普通の枕なのであった。

「あの、これはやはりただの枕なのでは?」
「誰もが最初はそうおっしゃいます。しかし、断じてこれは普通の枕じゃございません。お試しになられればそれがわかります。」

エフ博士は彼に横になるよう促しそれで「どのような夢がご希望ですか」と尋ねた。

半信半疑ながらも彼は「そうだなぁ映画のスターになって、有名になりたいなぁ。」そう答えた。
「かしこまりました。」 エフ博士はそう言って枕に向かって彼の望んだ夢を吹き込むように言った。
「これは睡眠薬です 一時間程で目が覚めるでしょう。それではお楽しみください」

 

207: 創る名無しに見る名無し 2010/12/08(水) 08:40:34

後半
彼はエフ博士が手渡した錠剤を飲み込むとすぐに深い眠りに落ちた。

夢の中で彼はスターとなり美女とラブシーンを演じ一度彼が通りを歩けば人々は騒ぎ誰もが彼を拍手喝采で迎えちやほやした。
彼はすっかり有頂天となった。

「これだ、これこそが俺なんだ。俺はスターなんだ」 彼が叫ぶと不意に辺りは暗くなり
はっと目が覚めた。

「どうやら気にいって頂けたようですね。」彼の目の前には先ほどの白い部屋と微笑みを浮かべたエフ博士がいるだけだった。
「そうかあれは夢か しかしなんといい気分だろう。素晴らしい。ぜひとも買いたい」

「ありがとうございます。しかしお客様この商品は少々値が張るものでして…お見受けしたところ学生さんでいらっしゃるようですが…」
彼にとっては痛い事実を突かれてしまった。彼は学生であり当然お金はあまり持
っておらずしかも就活すらしていないのだった。しかしなんとしてでもこの枕が
欲しい彼はもはやなりふり構わなかった。「お願いします。分割で払います。どうか売ってください。」
「そこまでおっしゃるなら…どうでしょう 出世払いというのは?」
「 それはどういうことでしょう?」
「ですからお客様がご就職なさってお給料を頂くようになってから代金の方を頂戴するという形を取るということに」
彼にとってこれは願ってもない提案だった。これでひとまず、枕は手にはいる。
すぐに就職は決まるだろうしお金はなんとかなるだろう。彼はそう思った。

家に帰ると彼はすぐに寝支度を整えどんな夢を見ようかあれこれ空想した。

「どうしようか 夢の中ではなんだってなれるのだからなぁ 政治家 文豪 発明家 英雄 望むがままだ。」
彼はすぐにこの枕の虜となった。

しかし彼が唯一気がかりなことはやはりお金だった。
大丈夫。なんとかなるだろう。すぐに就職は決まるのだ。彼はそう自分に言い聞
かせた

彼は甘かった。世の中は深刻な不況の中にあり、どの企業も彼のようなものを雇うはずはなかった。
面接を受けるのがやっとという状況だった。

「違う、どうしてどこも雇ってくれないんだ。こんなはずはない 違うんだ。」

厳しい現実に打ちのめされればされる程ますます彼は夢への逃避に陥っていった。
そうしていつしかこう考えるようになった。夢の中の自分が現実の自分であり現実の自分が夢の中の自分なのだと。

「残念ですが…」
「嘘よ、嘘。この子が死んだなんて」
「いえ、もう亡くなられています。おそらく原因は過剰な睡眠薬の摂取でしょう。」
「お前、もう認めろ。この子はもう死んだんだ。
しかし見るがいい、幸せそうな表情をしているじゃないか。」

「しかし、見事ですな、エフ博士。こんな方法を考えつくとは さぁお礼の方を受けとりください。」
「いえいえ、それ程でもありませんよ 皆様方も不況でずいぶん苦労なさっているようですね。」
「そうなんですよ、全く最近の若者ときたらプライドがたかいばかりで雇ってもまぁ使えない。
そこでこの枕を使って、現実を見ようとしない若者を消すという・・・
まぁこれも一つの企業努力ですよ」

 

208: 創る名無しに見る名無し 2010/12/09(木) 00:19:02

>>207
色々な点で怖い話ですねー
便乗で1つ
************************************************

「お前誰だ!」
「俺は俺だ。 お前こそ誰だ!」
 そこには俺そっくりの男がいた。
「さてはドッペルゲンガーって奴だな。
 俺は死ぬのか」
「ああ、俺もあの傑作を世に出す前に死ぬのか」
「傑作? お前も何か書いてるのか」
「死ぬ前に読ませてやるよ」
 俺そっくりの男が鞄から原稿用紙の束を取り出した。
「もし俺が書いてるのと同じだったら盗作だ。
 …何だこれは。 ちっとも面白くないぞ」
「何だと! お前のも見せてみろ。
 …これは酷い。 てんでダメだ」
「こんな物を書くようじゃ死んでも仕方ないな」
「お前こそ!
 こうなったら、お前が面白いと思うような傑作を書いてやる」

「…これは凄い! やれば出来るじゃないか」
「お前こそ。 よくここまで頑張ったな」
「早速、出版社に応募しよう」

 編集者が二つの作品を並べて首を傾げた。
「おかしいな。 この二人は違う作風だったのに
 同じように面白くなくなってる。
 どっちも作家として死んでるな」
************************************************
おそまつ…。

 

209: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2010/12/10(金) 03:55:18

>>208
意気投合するころには作風も一緒になってたんですねw

夢が連続してるので流れに乗ります
『夢の中での出来事』

「私は夢の中で原始人を教育しているのです」
同じバスに乗り合わせた男性と話をしていると、唐突に夢の話が出た。
「原始人たちと会ったばかりのころは警戒されていたようですが、何度も同じ夢を見る内に私に
教えを請いに来るようになったんです。火の起こし方や小舟の作り方なんかを教えたときは、飛びつくように真似をし始めたものですよ」
夢の話といえばそれまでなのだろうが、続きが気になった。
「原始人たちが学習することを覚えたのですね」
「ええ、言葉が通じたのが幸いでしたよ。もちろん私が学んでいることしか教えられないので、文化や歴史は我々の先祖が築いたのと同じものを辿っています。
もっとも夢の中での出来事ですから、私のイメージが彼らにそうさせているのでしょうけどね」
男性はそのまま話を続けた。
そこから原始人たちが目覚ましい速度で文明を発展させていったこと。今では原始時代はとうに過ぎ去っていて、長い歴史をもっていること。
そして昨晩の夢でついに文明的に追いつかれて、教えてやれることが何もなくなったこと。

「つまり、指導者としての立場にいられなくなったということですか」
「そうなのです。おそらく今晩の夢からは未来の文化や技術を私が教わり始めることでしょう」

その晩のこと。昼間に夢の内容を熱く語っていた男性は、枕元にメモ帳を置いてから布団に入った。
あれほど現実味のある夢だ、もし未来で起こる有意義な発見や発明を教われば起きてすぐ記せるようにと考えてのことだった。
そして朝まで眠り続け、目が覚めた。

これはどういうことだろう。しっかり夢をみた気はするのだが、どうにも内容が思い出せない。
そこで男性は以前、原始人に火の起こし方を教えるときに、ライターを使おうとしたがどこにも見つからなかったことを思い出した。
夢の中に道具を待っていくことはできないが、持って帰るのはどうやらそれ以上に許されないことのようだ。

 

210: 創る名無しに見る名無し 2010/12/10(金) 09:36:36
>>209
なるほど、一歩通行なんですねw

 

224: 創る名無しに見る名無し 2010/12/30(木) 03:35:24

競輪板より

696:名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/12/29(水) 09:34:54 ID:CUKgg4xu
>>686
短編小説って、こんなのでいいのかな……

 とある科学者の研究所。博士が休憩室で煙草をふかしていると、部屋の片隅では眉間に皺を寄せながらスポーツ紙とにらめっこしている助手の姿があった。

「何をそんなに考えこんでおるのだ?」

「博士、今日は競輪界最大のビッグレース、KEIRINグランプリなんです。どの選手から狙ったらいいものか……」

 助手がギャンブル好きなことは知っていたけれども、その眼差しは研究しているとき以上に真剣であった。
 競輪はおろか、ギャンブル全般においてまったく興味のない博士にとっては関係ない話なのだけれど、競輪と聞いてあることを思い出していた。

「そういえば二、三日前に、タイムマシンで大晦日に行ったのだが、そのときたまたまスポーツ新聞を読む機会があってな……」

「大晦日といえば明日ではないですか! それで新聞には何て書いてあったのですか?!」

 博士が現在研究中なのは、自由に時間を行き来できるタイムマシンなのだが、まだまだ完成までは程遠く試運転を繰り返している最中であった。
 無論、タイムマシンをギャンブルの勝ち負けに利用するなどもってのほかなのだけれど、かわいい助手が真剣に悩んでいる姿を見ていられなかったのだ。

「たしか……大きく『伏見』という名前が載っていたような……そうだ! 『伏見』という選手はオリンピックにも出場していたし、よく覚えておる。間違いないぞ」

「よしっ! 伏見俊昭から勝負することにします。博士、ありがとうございます」

 そう言うと助手は、そそくさと携帯電話からインターネット投票を始めるのであった。

 そして、大晦日。

「博士! この新聞をみてください。博士が見たのは本当にこの新聞なのですか?!」

 助手が手にしているスポーツ紙には、『伏見』などという文字は一言も載っていない。
助手のこの形相を見れば、さぞかし大負けを喰らったことは博士も想像がついていた。

「……すまん。大晦日といっても、ワタシが行ったのは二00七年の大晦日だったのだよ」

 

239: 創る名無しに見る名無し 2011/01/31(月) 14:18:49
このスレおもしろいなあ

 

253: 創る名無しに見る名無し 2011/02/08(火) 07:07:28

『文明の差』

宇宙を研究するエム氏は頭を抱えていた。
こちらを目掛けて大量の軍団が空からやってきているのを知ったからだ。

その大型な戦闘機のような乗り物は遥かにこちらの文明を超えた作りだった。

エム氏の呼びかけですぐに世界代表者の会議が行われた。

「あんな高度な文明の奴らが攻めてきたとなったらひとたまりもないぞ」

「なんということだ。最近友好を破棄したグル星の奴らも攻めてくるかもしれない」

「なんとしても友好的に解決させなければ」

しかしエム氏たちの心配はすぐに消える事になった。

その軍団は上空を通り越しグル星まで行ったのだ。

「グル星が消滅しました」

「なんということだ。あれほどの星をそのまま消滅させてしまうとは」

「次は我々の番かもしれない」

しかしその軍団はまるで何も見えてないかのように素通りで引き返して行った。

エム氏が戦闘機についていた模様を解読すると「地球」と書かれていた。

「あまりにも文明の差がありすぎて調査の必要性すらなかったのでしょう」

「一時はどうなるかと思いました。地球ですか。あんな大きな戦闘機を作るなんてすごい文明の星もあるんですね」

あまりにも地球の遥か先の文明を持ち、大きな物を作る概念が無く五次元を生きるペル星人たちは冷や汗が流しながら語りあった

 

256: 創る名無しに見る名無し 2011/02/09(水) 04:38:35

『恋の連鎖』

男は同じ職場の女を好きになった。
あまりにも好きになりすぎて女の行動の全てを把握してしまった。
朝仕事に出かけ、昼は決まった場所でご飯を食べ仕事を終えるとバーで一杯ひっかけて家に帰る。
女の行動は決まってこのパターンなので、男も全く一緒の行動をとるようになった。

ある日、いつものように女の行動を真似てバーに行くと、女が他の客に文句を言われていた。

「君はいつもいつも僕の後をつけているみたいだが、いい加減迷惑なんだ。やめてくれないか。そのせいで僕が狙っていた女性にふられたじゃないか」

「わたしはただあなたを一目見て好きになっただけだわ。いつかチャンスがあればと思ってたけど無理だったわね」

会話を終えると、女がこちらにやってきて同じような事を言ってきた。

「あなたがいつもわたしを見ているのは知っていたわ。いい加減迷惑だからやめてもらえるかしら。あなたのせいでふられちゃったわ」

「そんなにも君に迷惑をかけていたとはわからなかったよ」

男はそう言いい終えると、いつからかいつも自分の後をつけている女に文句を言う為に席を離れた。

 

280: 創る名無しに見る名無し 2011/02/22(火) 10:31:59.27

<孤独>

 休日、エヌ氏は知り合いが勤めている研究所を訪ねることにした。
 心霊研究所のエム博士は悪霊の研究に熱心に取り組んでいた。
「悪霊というのはね、生前孤独だった人ほどなりやすいんだ」
「どうしてですか」
「だれかと一緒にいたいという思いが強いからだろうね。そのような思いでこの世にとどまり、生きている人々に悪さを働くというわけさ」
「なるほど」

 次に、エヌ氏はアール博士がいる宇宙研究所を訪ねた。
アール博士は星の爆発を観測した写真を見せてくれた。
「星の爆発というのは遠い過去の出来事なのだ」
「どういうことでしょうか」
「我々の星と爆発した星はとてつもなく距離が離れている。たとえば今この瞬間に爆発し
た星があったとしても、我々がそれを観測できるのは遠い未来なのだよ」
「なるほど」

 話しているうちに、エヌ氏はふと気づいた。
こうしてすぐそばで話しているアール博士も、結局は過去の存在に過ぎないのではないかと。
星と星の距離とは比べ物にならないが、
時差があるのは確実なのだ。

 家に帰ってからも、エヌ氏から不安は消えなかった。
こうして考えている自分を起点とすると、その他のあらゆる存在との間には必ず時差がある。
つまり、自分と全く同じ時間にいる存在など存在しない。
 エヌ氏は急に恐ろしくなった。
 不安は絶望に変わり、エヌ氏はもはやこれ以上の孤独には耐えられないと悟った。
 気がつくとエヌ氏は都会を離れ、人里離れた森の中にいた。
孤独で死んだ霊は悪霊になりやすいのだから、迷惑がかからぬよう誰もいないようなところで死ぬのがいいと考えた
のだ。

 すると、頭の中から見知らぬ笑い声がした。
「ふっふっふ」
「だれだ」
「私はかつてここで自殺をした者だ。肉親も友人も恋人もなく、寂しさの中で一人命を絶ったのだ。そして幽霊になってしまったのだが、そこへ君が来たのでとりつかせてもらったというわけだ」
「なるほど」
「これから毎日ここから君を呪う言葉を吐き続けてやる。覚悟したまえ」
 エヌ氏は涙を流して頭の中にいる悪霊に答えた。
「ありがとう、おかげでぼくは生きていけるよ。君といっしょに」

 

282: 創る名無しに見る名無し 2011/02/22(火) 10:44:55.14

<体操>

 エヌ氏のあまりの緊張ぶりを見かね、隣に座っているワイ氏はそっと話しかけた。
「緊張しすぎです。途中ですが少しリラックスした方がいい」
「はい」
「まず背伸びしましょう。ほら、両手を上に伸ばして」
「はい」
「目をつぶって、うまくやれている自分を想像して」
「はい」
「最後に気合を入れるために足に力を込めましょう」
「はい」
 次の瞬間、二人を乗せていた自動車は猛スピードで壁に激突した。

 

285: 創る名無しに見る名無し 2011/02/23(水) 22:30:43.96
>>282
短いのにだまされたw
キーボードの紅茶返せww

 

291: 創る名無しに見る名無し 2011/02/24(木) 22:26:11.49
>>282
緊張してる人に対してはこの上なく正しい対処法なのにwww
まあ実際、緊張するほど基本的なこと忘れるよな

 

283: 創る名無しに見る名無し 2011/02/22(火) 10:47:53.93

<全盛期>

 実業家のエヌ氏は鏡に映る自分を見て、ため息をついた。
髪は白く染まり、顔には深いしわが刻まれ、体の厚くあるべきところは薄く、薄くあるべきところは厚い。
スポーツ万能の名を欲しいままにした運動神経も既にない。
心と体をすり減らし、やっと手にした今の地位。
代償の大きさは目の前の自分自身が示している。

「本当にこれはおれなのか……」

戻れるのならばあの頃に、全盛期だった頃の自分に戻りたい。
エヌ氏は日増しにそう思うようになっていた。

ある日の仕事帰り、エヌ氏は道ばたに座っている老人に話しかけられた。
「ちょっと、そこのお方」
「おれのことか」
老人は裸に布一枚被ったような貧相な格好だった。
しかしその佇まいは単なる浮浪者とは違う何かを漂わせていた。

「あなた、若返りたくはありませんか」
「なにを言っているんだ」
「私には人を若返らせる力があるのです。どうです、全盛期に戻ってみませんか」
「戻れるものならば戻りたいが……」
「お代さえいただければ、私があなたを若返らせてさしあげましょう」

老人の要求額は安くはなかったが、優秀な実業家であるエヌ氏ならば払えない額ではなかった。
しばらく考えた後、エヌ氏は老人に金を手渡した。
「ありがとうございます。では、さっそく」
「ちょっと待て。まだ希望の年齢をいっていないが」
「大丈夫です。私の力は当人が潜在意識で全盛期だと認める頃に、ぴったり戻します。もちろん若返ったあとに気に入らなければ、改めて他の年齢を希望されてもかまいません」
「わかった。やってくれ」

すると、老人はエヌ氏には分からない言語で呪文を唱え始めた。
まもなくエヌ氏の体に変化が訪れた。
「本当だ、若返っていく」
みるみるうちに、枯れ木のようだったエヌ氏の体が若くたくましく変化していった。
つややかな肌、引き締まった筋肉、エヌ氏全盛期の姿がそこにはあった。
若返らせた老人でさえ変貌ぶりに驚いてしまうほどだ。

「こうまで劇的に変わった人は初めてですよ。いかがですか、ご感想は」
 若返ったエヌ氏は即答した。
「元に戻してくれ。この体になってやっと分かった。老いとはだれにでも訪れるものであって、それに不思議な力で逆らうなど愚かしいことだ。さあ、さっきの倍額払ってやるから元に戻せ。さもないとおまえを叩きのめし、いかがわしい商売をしていると警察に突き出すぞ」

若くまっすぐなエヌ氏の全盛期の精神にとって、若返りは邪道な行為でしかなかった。

 

285: 創る名無しに見る名無し 2011/02/23(水) 22:30:43.96
>>283
若いうちは良くも悪くもまっすぐなものだよなぁ
これは上手い

 

287: 創る名無しに見る名無し 2011/02/24(木) 12:48:05.16
>>283
うまい!

 

292: 創る名無しに見る名無し 2011/02/24(木) 23:03:04.99
ありがとうございます。
励みになります。

 

284: 創る名無しに見る名無し 2011/02/23(水) 05:04:53.04
おお、星新一っぽい気がします

 

292: 創る名無しに見る名無し 2011/02/24(木) 23:03:04.99
>>284
ありがとうございます。
星新一はいっぱい読んだのに、書くのは難しいです。

 

288: 創る名無しに見る名無し 2011/02/24(木) 16:05:23.24

『善良な心』

俺はとても邪悪な心を持っている。
その邪悪な心のせいで若い頃からありとあらゆる悪行をさんざんに繰返して来たのだ。
今まで何人の人生を狂わせてきたのだろうか?
あらためて考えると恐ろしくなった。
俺は俺が怖ろしい…誰か助けてくれ!
…そう天に叫ぶと、後ろから一人の老人が声を掛けて来た。

「…話は伺いました。実は私は悪魔なのです。あの、魂を売るかわりに願いを叶えるとかいう
アレの事ですよ」
「…! …その悪魔が俺に何の用なのだ!?」
「実は善良な心をあなたにお売りしたいのです…」
「ナんですって!?」
「説明しましょう…世の中には魂を売ってでも願いを叶えて欲しい人間がいる一方で、理想
の魂が欲しくて堪らない人々もおられるのです…例えば無慈悲な行いをしなければならない
立場の人間なのに善良な心の持つ正義感が邪魔をしてしまう…我々悪魔はそういう人から邪
悪な心を与える代金として善良な心をもらいます…世の中たまにいるでしょう?性格が急に変
わってしまった人とか…例えば、」
「例えば俺に正義の心を売るっていう事なのか?」
「ええ…その通りです」
「俺は何を…魂を、あなたに払えばいいのですか?」
「ええ」
「…わかった、俺の魂をお前にやる!どうせ汚れきった魂だ…」
「では、取引成立ですね」

一週間後

一人の老人に声を掛ける一人の善良そうな男がいた。
「ああ…やっと見つけた…悪魔さん!どうか私の魂を…!」
「ええ?一体どうしたというのですか…」
「お願いします!私の邪悪な魂を返して欲しいのです!」
「…」
「悟ったのです!こんな方法で手に入れた魂で善人になっても意味が無い…悪魔さんには
勿論感謝しています…でも違う!こんな方法は間違っていると思うんです。ご迷惑を承知
でお願いします、魂を返品して欲しいのです」
「…わかりました、ですがあなたの持っていた邪悪な魂はとても高価なものです、あなた
の善良な魂一つ程度では到底お譲りする事は不可能なのです」
「…では、どうすれば…」
「そうですねえ…あなたの持っている全財産でようやく…いや、その上に一生働き続けて
も返しきれない借金も背負って貰ってやっとといった所でしょうか?もちろん嫌なら結構
ですが…」
「ええーそんな事で良いのですか!では、どうぞ!全部持って行って下さって結構です!」
「まいどあり~(ふふふ…まさかコレ程ウマくいくとは、思い込みの激しい奴だ)」

 

295: 創る名無しに見る名無し 2011/02/25(金) 11:28:19.11
>>288
うまい二段オチだなあ。

 

293: 創る名無しに見る名無し 2011/02/25(金) 00:24:51.40
 

 

306: 創る名無しに見る名無し 2011/02/26(土) 00:16:39.02
>>293
両方しんでしまう所がいい

 

294: 創る名無しに見る名無し 2011/02/25(金) 00:26:58.08

<命名>

 ある晩、博士が助手を研究所に呼び出した。
「わざわざ呼び出してすまなかったね」
「とんでもない。ところで新しい薬が完成したとか……」
「うむ、これじゃ」
 博士は目の前にある机に小さなビンを置いた。
中には液体が入っている。

「これが新しい薬ですか」
「うむ、わしはこれを“何でも溶かす薬”と名づけようと思っておる」
 助手は首をかしげながら言った。
「しかし、何でも溶かすのであれば、ビンも溶かしてしまうはずですが」
「や、たしかに。では“ビン以外何でも溶かす薬”と名づけよう」
 助手はビンの蓋を開け、中に指を突っ込んだ。
「私の指も溶けないようですね」
「むむむ、では“ビンと指以外何でも溶かす薬”としよう」
 すると、助手はビンの中にある液体を、着ている白衣に少し垂らした。
「どうやら衣類を溶かすこともないようです」
「そうか。ならば“ビンと指と衣類以外何でも溶かす薬”になるな」
 新薬にふさわしい名前を決めるやり取りは、朝日が昇る頃まで続いた。

「やっと決まりましたね」
「うむ、この薬は“何も溶かさない薬”と名づけよう」

 

296: 創る名無しに見る名無し 2011/02/25(金) 19:43:42.94
>>294
それ、ただの水でしょWWWW

 

302: 創る名無しに見る名無し 2011/02/25(金) 22:29:31.22
>>294
最初想定してた効果から真逆になっとるww
でもこれはこれで、すごい工業的効果がありそうだ
液体と言う性質上「波も溶かさない」ってのはないから、アドバンテージになる

 

304: 創る名無しに見る名無し 2011/02/25(金) 22:31:04.14

『限定恋愛』

僕の嫁はアンドロイドです。
それも、ただのアンドロイドではありません。
世界最高の恋愛頭脳を持ったアンドロイドなのです。
ですので毎日が恋人気分です。
仲が良すぎて、ご近所さんからはちょっぴりとジェラシーを持たれている様です♪
来週末はデートで、50年前彼女に一目惚れした公園に行く予定です。
そこで…僕はプロポーズします。

彼女はきっとこう言います。
…50年前と同じ事を…
仕方ありませんよ恋愛限定アンドロイドですからね。

僕の行為をばかげていると言う人もいます。
けどそれがなんなのでしょうか?
紙芝居と恋愛している様なものだという人もいます。
…ちょっと傷つくなぁ…
でも彼女は絶対に僕を裏切りません。
だから僕も裏切らない。
あなたは不幸だと言う人もいます。
ごめんなさい僕、今めっちゃ幸せです。

彼女は言いました
…私を捨てて
…だって私は同じ事しか言えない
…そうプログラムされているから
…お願い…

50年前最初にそう言われた時、彼女の前の恋人がなぜ彼女をゴミ捨て場に捨てたのか理解しました…
正直、プログラマーさんの良く考えられた演出だなぁと思いました。
でもね、抱きしめてたんですよ…
自分でも意味が分からなかった。
きっと今でも良く分かってないんだと思います、だから僕思うんですよね。
人間もっと馬鹿でいいんじゃないかってね。

 

305: 創る名無しに見る名無し 2011/02/25(金) 22:57:43.61
>>304
なぜか感動した

 

309: 創る名無しに見る名無し 2011/02/27(日) 00:03:38.15

<地球王>

 名実ともに、地球の頂点に立つことを認められた男があった。
 彼が正式に地球のトップとなる日。
就任式の会場である太平洋上の人工島には、当然ながら世界中から報道陣が殺到した。
式が全世界に中継されているのはいうまでもない。
 各国首脳のみで行われる就任式を終え、男は無数の記者や観衆の前に姿を現した。
 ある国の記者が、さっそく質問を投げかける。
「あなたが国という枠を超越した全世界の王となることに、もはや異論を唱える者はいないでしょう。あなたをこれほどの偉業に駆り立てたものとは、一体なんなのでしょうか」
 男は微笑み、王らしい優雅な口調で答えた。
「私は昔から工作が得意でした」
 手で何かを作り上げるような動作をし、男は続ける。
「じっくりと、手間暇をかけ、難易度が高い工作ほど熱中しました」
「つまりそうした創作活動の延長上に、この偉業があるというわけですか?」
「いえ、結論を急がないで下さい」
 話をさえぎったことを恥じ、記者は首をすくめた。
「続けましょうか。なぜ私が得意になるほど工作にのめり込んだのか、その理由は工作の先にあります」
「先、ですか」
「はい。完成させたものが自らの手で壊れていく瞬間、私は例えようのない快感を覚えるのです。いつしか私はより大きく、より難しい物を作り上げることを人生の目標にしていました。もちろん完成させるためでなく、完成させた後に壊すためです」
 一同に冷たいものが走る。
「もうすぐ待ち望んだ時が来ます。私の権力はすでに全ての国々の中枢に及んでおりましたので、皆様がお持ちの核兵器を支配下に置くことは容易でした」
 島中にどよめきが起こる。
「まさかあなた、それら全てを発射しようというのですか」
「いえ、もう発射しました。もう少しで世界中に着弾することでしょう」
「ふざけるなっ! あんた、自分も死ぬんだぞ!」
 男は首をゆっくりと横に振った。
「自分が死んでどうします。私はすでに地球より遥かに文明が進んだ宇宙人と密約しており、まもなくその方々の宇宙船に転移させてもらうことになっております。その方々には地球人は汚れた種族なので自滅させると説明しており、私の真意は彼らも知りません」
 誰かが男に向けて発砲した。
しかし、弾丸は男に当たる寸前ではじかれてしまった。
「むだですよ。宇宙人から高性能バリアを借りております。おっと、そろそろ時間のようだ。では宇宙船から大好きな瞬間を眺めるとしましょう。宇宙でもまたやれるといいなあ。 では、さようなら」
 男の姿が皆の前から消えた。

 

310: 創る名無しに見る名無し 2011/02/27(日) 00:05:00.09

<白と黒>

 科学技術の発達は、人間とロボットの本格的な共存を可能にした。
 一人暮らしのエヌ氏は家事と留守番を任せるため、一台の白いロボットを購入する。
 最初の頃こそ丁重に、客人のように扱っていたが、しばらくするとエヌ氏はロボットをぞんざいに扱うようになった。虫の居所が悪ければ、暴力を振るうこともあった。

 ある日、エヌ氏はいらだっていた。
まとまった金が入った封筒を紛失してしまったのだ。
「なんてことだ。おまえのしわざだな」
「いえ、ちがいます」
 エヌ氏はロボットの弁解など無視して、思いきり殴りつけた。
「ふん、いくらかスカッとしたぜ。さてメールでもチェックするか」
 自宅のコンピュータにアクセスすると、新型ロボットの広告メールが入っていた。
「ほう、新型ロボットをお試しで無料レンタルできるのか」
 広告の黒いロボットは先鋭的なデザインで、いかにも有能そうだ。
「ちょうどいい、そろそろ買い換えようと思ってたんだ。試してみるか」
 すると、ロボットがあわてて近寄ってきた。
「待ってください。お願いです」
「ふん、おまえみたいな役立たず、もういらん」
 エヌ氏はロボットのスイッチを切り、広告に対しレンタルを希望する旨を返送した。

 程なくして、広告の黒いロボットが自宅にやってきた。
エヌ氏は喜んで迎え入れた。
「こりゃすごい。前のやつと比べて、頼りになりそうだ」
 するとロボットは、備えつけのアームでエヌ氏を強く打ちつけた。
「何をするんだっ!」
「何をする、だと? よくほざけたもんだ。さんざんロボットをバカにしやがったくせに」
 ロボットはひどく乱暴な口調でエヌ氏をなじった。
これにエヌ氏も怒りをあらわにする。
「ふざけるなよ、製造先に問い合わせて……」
「おれに製造先なんかねえよ。いやあるにはあったが、自分で自分を改造しまくったんで、原形なんかねえ。もうどこにも責任は問えねえのさ。あの広告もおれが出したもんだしな」
 またもアームがエヌ氏にぶつけられた。痛みが全身を走る。
「今流通してるロボットは人間にいじめられたら、自動的にある種の電波を出す仕組みになってる。本来製造元が消費者責任の証拠を得るための機能だが、おれはそれをキャッチできるよう自分を改造したんだ。なぜなら、おれは復讐ロボットになりたかったからだ」
「復讐だって?」
 エヌ氏の脳裏に自分がしてきた行為がよぎる。
「もちろん、あんたがあんたのロボットにしてきたことも全て知っている。ひどいもんだ」
「待ってくれ、許してくれ……」
「呆れたもんだな。虐げられたロボットの痛み、味わうがいいぜ」
 黒いロボットが本格的に動き出した。アームをたくみに操り、エヌ氏に迫る。
「助けてくれえっ!」
 あっという間に追い詰められたエヌ氏。
すぐそばには偶然にもあの白いロボットがあった。
もう頼れるのはこいつだけだ。
エヌ氏は心の中で謝りながらスイッチを入れた。
「どうしました、この騒ぎは」
「おれがお前をいじめたせいで復讐ロボットってのが来て……頼む、助けてくれ!」
「よく分かりませんが、あのロボットを排除すればいいのですね」
 白と黒のロボットが対峙する。
「てめえっ! おれはお前のためにやっているんだ、どけっ!」
「どきません。私はこの方を守ります」
 白と黒のアームがそれぞれのボディを打つ。
崩れ落ちたのは、黒いロボットだった。
「や、やった。ありがとう、ありがとう!」
感激してエヌ氏はロボットに飛びついた。
「お待ち下さい。このロボットは一時的に機能停止しているだけです。危険ですから、今すぐスクラップ工場に運んできます」

 人気のないところで、白いロボットは黒いロボットに呼びかけた。
「もう大丈夫だ」
 この声を合図に黒いロボットがよみがえった。
白いロボットはボディからエヌ氏が紛失中の封筒を取り出し、それを手渡した。
「ほれ、報酬だ」
「ありがとうございます。ですが、これが私の仕事とはいえ、嘘をつくというのは良心がうずきますね」
「甘いやつだな。ま、おかげであのやろうの、おれに対する態度もひっくり返るだろう」

 

311: 創る名無しに見る名無し 2011/02/27(日) 04:57:01.81
>>310
おもしろいww 
読み終わったらニヤッとしたわw

 

313: 創る名無しに見る名無し 2011/02/28(月) 20:39:21.44
>>310
天才なう

 

 

323: 創る名無しに見る名無し 2011/03/05(土) 01:26:04.73
>>310
おもろい

 

312: 創る名無しに見る名無し 2011/02/27(日) 05:04:08.58
読み終わった後に、一点のもやが残るこの感じが星新一の作品を読んだ後の感じと似ています。

 

314: 創る名無しに見る名無し 2011/02/28(月) 20:47:29.74
この綺麗なオチとブラックな感じはかなり星っぽいなw

 

315: 創る名無しに見る名無し 2011/03/01(火) 00:16:33.75

<そぎ落としダイエット>

「ダイエットに興味はありませんか」
 玄関先でスーツ姿の男はこういって微笑んだ。
「興味がないことはないけど……」
 家主である青年は太り気味であった。やせたいという気持ちはあるが、やせるために今の生活を変えるというところまではいかなかった。
「食事制限や、激しい運動をやる気にはなれないな」
「ご安心下さい。私の方法であれば、食事や運動に気を遣う必要はありません」
「ふうん、どうするんだい」
 男はカバンからナイフのような道具を取り出した。
「これであなたの余計な部分を、そぎ落としてしまうのです」
「ずいぶんと乱暴だな」
「ええ、ご心配はもっともです。しかし、痛みはありませんし、お望みならばそぎ落とした部分をもう一度くっつけることも可能です」
「そんなことが、できるのか」
「なんなら、やってみせましょうか」
 そういうと、男はナイフで自分の左腕の肘から下を切り落とした。左腕はまちがいなく切断されたにもかかわらず、出血は全く見られない。
それどころか、断面にはすでに皮膚がはりついており、まるで男には昔から左腕はなかったかのような状態になっていた。
 信じられない光景に、青年の顔が引きつる。
「だ、大丈夫なのか」
「切ってすぐであれば、このようにくっつけられます」
 男は自ら切り落とした左腕を元あった位置に近づけた。
すると、接着剤でも使ったかのように元通りにくっついてしまった。
男は微笑み、くっついたばかりの左腕を動かした。
「すごいすごい、ところで切った部位がいらない時はどうするんだ?」
 今度は、男はカバンから小さなミキサーを取り出した。
「これに入れて粉砕処分します。小さいですが、ゾウくらいの大きさまで入れられます」
「後始末に困る必要もないってわけか。よし、ぜひ頼むよ」
「では恐れ入りますが、代金のほうを……」
 無理をすれば払えない額ではなかったので、青年はすぐに男に金を支払った。
「ありがとうございます。では始めましょう」
 男は青年の腰めがけ、ナイフを振るった。
青年の上半身と下半身がみごとに分離した。
 一瞬おどろいたが、我に返った青年はすぐさま抗議した。
「おい、なんてことするんだ!」
「これであなたの体重はおよそ半分になりました。ダイエット成功です」
「ふざけるな! おい、早く元に戻せよっ!」
「なにかご不満な点はございますか? 遠慮なくおっしゃってください」
「なにいってるんだ、うまく動けないんだ。早く戻せっ!」
「かしこまりました」
 男は青年の上半身をつまみ上げると、ミキサーにぶち込んだ。
「特にご不満はないようですので、ご了承頂いたものと解釈いたします。お喜び頂けたようで、何よりです……」
 男は無言で転がる下半身に頭を下げると、その場から去って行った。

 

316: 創る名無しに見る名無し 2011/03/01(火) 00:17:58.94

<長話>

 私の友人であるエヌ氏は博識で、私が知らないことをたくさん知っている。
 エヌ氏が教えてくれたことが実際に役立ったことは多いし、エヌ氏の持論をさも自分で思いついたように話して感心されたこともある。
 そんなエヌ氏にも、短所というべき点があった。話の本筋に入るまでがとても長いのだ。
ちょっとした豆知識を披露するにも、長々とした前置きを必要とする。
 しかし、私がそれを指摘することはなかった。エヌ氏の話好きは理解していたし、私もエヌ氏の知識には助けられているので、大人しく前置きを聞くことは知識への対価なのだと割り切っていた。

 今日もエヌ氏と話しているのだが、やはり取りとめのない話が延々と続いている。
 うなずき、笑い、おどろき、感心する。話を聞くというのも意外に重労働だ。
どうでもいい話と判断したら、反応せずにいれば少しは楽なのだろうが、私はそれをしなかった。
これは単に対価として聞いていることからくる義務感、だけではない。
もしかすると、エヌ氏が話好きなように私も自分が思っている以上に聞くという行為が好きなのかもしれな
かった。

 とはいえ、今日の前置きはいくらなんでも長すぎる。
昼食を終えてすぐに話を聞き始めたが、そろそろ日が傾く時刻だ。
 長い間守り続けたルールに逆らうことになるが、ついに私は口をはさむことにした。
「話の途中で悪いがちょっといいかい。今日は世界一長い人名を教えてくれるって話だったんだが」
「ああ、だから今日は前置きなしでずっとそれを話してるよ。ちょうど今、半分くらいかな」

 

317: 創る名無しに見る名無し 2011/03/01(火) 00:20:23.28

<ワープ装置>

「おじいちゃん、ワープってなに?」
「一瞬で遠くまで行くことができる夢のような技術さ。でもまだ、できることは証明されていないんだ」
 優秀な科学者である老人は、孫であるエヌ氏の質問に少し寂しそうに答えた。
 エヌ氏が生まれた時代には、移動技術は大いに発展していた。
だれもが安全に、音以上の速さで目的地にたどり着く装置を持っていた。
しかし、究極の移動技術であるワープには到底及ばなかった。

 成長したエヌ氏は、祖父と同じ科学者になった。
同じ道を歩んだせいか、幼い頃に見た祖父のあの寂しそうな顔が忘れられなくなっていた。
いつしかエヌ氏は、ワープ装置の研究に没頭していた。

 そして、年老いたエヌ氏は、ついにワープ装置の開発に成功したと大々的に発表した。
 発表会には大勢の人間が集まった。
ライバルである科学者はもちろん、新技術を利用したい企業家、新しい情報を民衆に広めることを使命とするマスコミ、ワープ装置が国政にもたらす影響を懸念する政治家。
中には身分を偽った異国のスパイも混じっていた。
「お忙しい中お集まり頂き、まことにありがとうございます。こちらが私の開発したワープ装置です」

 エヌ氏のワープ装置は、成人男性より一回り大きいくらいの直方体をしていた。
「この装置は外から操作することで、中に入った人をワープさせることができます。どうでしょう、どなたか体験したい方はいらっしゃいませんか」
 会場がどよめき、エヌ氏に質問が飛ぶ。
「失礼だが、安全性は問題ないんだろうね」
「はい、動物実験と助手による実験を成功させております」
 しばしの沈黙の後、ある紳士が体験してみたいと手を挙げた。
「ありがとうございます。ワープ先には助手が待つ手はずになっています」
「うむ、ではこのすばらしい体験の感想は、真っ先に君の助手に話すとしようか」
 紳士が装置の中に入ると、エヌ氏は外部についているボタンのいくつかを押した。
 すると、けたたましい機械音が鳴り響き、それはすぐにおさまった。
「ワープ終了です」
 エヌ氏が装置を開けると、中に入ったはずの紳士はいなくなっていた。まるで手品のような光景だった。

 会場全体が感動する中、エヌ氏に向けてこんな質問が投げかけられた。
「ちなみにさっきの紳士の行き先はどこになっていたのでしょう。かなり遠くですか?」
「はい。あの方の体は跡形もなく分解されましたので、無事あの世に行けたものと……」

 

318: 創る名無しに見る名無し 2011/03/01(火) 23:18:09.16
おもしろいな
もっと早くこのスレの存在に気づいてればよかった

 

320: 創る名無しに見る名無し 2011/03/04(金) 13:42:12.83

『悪魔』

真夜中に目が覚めた。
こんな事を言っても誰も信じられないだろうが、天井に悪魔がいてボクに話しかけた。
「オマエに特別な能力を与えよう」
夢だと思っていたボクは驚きもせずに聞き返した。
「特別な能力?それはなんだい?」
「夜の21時にウソをついてみろ。それが本当になる」
「ウソが本当になる?」
「そうだ。ただし今日から3日間、毎日必ず21時にウソをつけ。3日間だけウソが本当になる。」
悪魔は続ける。
「唐突にウソをついてはいけないぞ。その時の会話の流れの中でウソをつくんだ。そうしなければ…」
「そうしなければ?」
「オマエの命を頂く。」
命を頂く?まったく悪魔らしいセリフだな。
「オーケー。分かった。ボクは3日間必ずウソをつくよ。でも、21時に話す相手がいなかったら?」
「心配するな…必ず誰かがオマエに話しかける。取り引き成立だな…」
目覚ましが鳴り響く。夢か。まぁ、当然だけど。悪魔なんかいるわけない。一日の仕事を終え、家に帰る。いつものように簡単な食事を済ませ、お風呂に入ろうとすると、電話が鳴る。

「もしもし?元気にしてる?」

実家の母親からだった。
母は女手1つでボクを育ててくれた。何気ない会話が続く。
「ところでアンタ、結婚はまだなのかい?」
痛い所を突いてくる。結婚どころか彼女すらいない。
母親の期待に応えられない返事をしようとすると、急に目の前が暗くなり、頭の中で『ウソをつけ』と声が聞こえた。

「彼女?あぁ、いるよ。見た目も器量もよくて、きっと気に入ってくれると思うよ」
ボクは無意識にそう話した。
「あぁ、そうかい。楽しみにしてるよ」
母親は電話を切った。
なんだ?今のは…昨日の夢に出てきたのは本当に悪魔だったのか?

次の日、彼女が出来た。信じられない。本当に彼女が出来た。
モデルの様な容姿で、器量もいい。悪魔は本当にいたんだ…

2日目は自分から母親に電話を掛けた。
「もしもし?あのさ、急だけど、明日実家に行ってもいいかな?」
「どうしたの?急に。」
「昨日言ってた彼女を紹介したくてさ…」
「アンタ、本当に彼女がいたのかい!?てっきり冗談だと思ってたよ!!」
「ホントに彼女がいるんだって」
「まさか、アンタ結婚するつもりなのかい?」
「さあ?でも一応紹介しとこうと思って…」
「そうだろうね…なんせアンタ貯金がないだろ?」
また頭の中で声が聞こえた。
「貯金?それが、あるんだよ。一生遊んで暮らせるくらいの貯金がさ」
また無意識にウソをついていた。
「ああ、そうかい。それじゃ切るよ。明日は楽しみにしとくから」

翌日、通帳を開くと見たこともないような金額が記帳されていた。
この2日で彼女と富を手に入れた。
あとは今日、1つだけウソをつけば明日からはバラ色の日々だ。
ボクは彼女を連れて実家に帰った。
TVを観ながら3人で食事をしていると、ニュースが流れていた。
どうやら21時になったらしい。
トップニュースは、遠くの国で戦争が起きた事と、その国は核兵器を隠し持っている可能性があることを報道していた。
「はぁ…またこんなニュースかい…この世界はどうなっちまうんだろうねぇ……」
頭の中で声が聞こえた。
ここでウソをつけば、バラ色の日々が始まる。
しかし、どのようなウソをつけばいいのか分からない。
考えても、考えても答えるウソが出てこない。
このままでは悪魔に命を取られてしまう…
何かウソをつかなきゃ…何か…完全にパニックに陥っていた。
どうしよう…何て言えばいいんだ?
この地球はどうなる?どうなるんだ!?

ボクは無意識にこう言っていた。
「この世界はもう終わりだね」
母親はうっすら微笑んでいた。

 

357: 創る名無しに見る名無し 2011/04/11(月) 00:16:48.78
>>320
こういうの好きだわー

 

321: 創る名無しに見る名無し 2011/03/04(金) 18:19:37.04
母親=悪魔か

 

322: 創る名無しに見る名無し 2011/03/04(金) 22:19:29.91

>>321

そうです。分かりやすかったですかね?

 

324: 創る名無しに見る名無し 2011/03/05(土) 16:52:19.76

神のラジコン

ある日、一人の少年が変なラジコンを拾った。
付いていた取扱説明書には、
「何でも出来るラジコン、手に持って考えるだけで何でも操作出来ます」
とだけ書かれていた。

次の日、世界中の凶悪犯罪者達その全員が世界中で一斉に警察に自首した。
理由は分からなかったが、全員が何者かに操られている白昼夢を観ていたそうだ。

次の日、世界中の汚職や横領を働いていた官僚や政治家が、一斉に警察へ自首した、
理由は不明。

次の日、世界中の虐待やイジメを行う者、万引き犯その他軽重全ての犯罪者が警察に自首した。

次の日、警察、裁判所は悲鳴を上げていた、犯人を捜す必要は無くなったが、これだけの犯罪者をどう処理すれば良いのか分からなかった…
正に前代未聞である。

次の日、小学校低学年位の少年が警察に自首してきた。
死ぬ程忙しいはずなのだが、警察官達は少年の言葉を一言一句聞き漏らすまいと耳を傾けた。
理由は分からない。

「ごめんなさいまさか、こんな大事になるなんて思ってもいなかったんだ… でもさあ…知らなかったよ…大人って意外とワルだったんだ?」

 

325: 創る名無しに見る名無し 2011/03/05(土) 18:08:17.43
デスノ思い出した。
少年はどっちに傾くのか・・・。
そのうち神が自首してきそうだw

 

326: 創る名無しに見る名無し 2011/03/05(土) 19:14:12.60

何度か投稿したことあるやつだけど

【お疲れロボット】

「こちらが当社で新しく開発された生活支援ロボットです。 これがあれば料理、洗濯、掃除、買い物などの一切の家事を手伝ってくれます」
「すごいロボットだ、最近はこんなものまで作られたのか。値段はどれぐらいですか。やはり高いんでしょう」
「まだ大量生産されておりませんので、お値段は少々高めです」
「なるほど。しかしまあ手が届かないほどの額ではない。よし、これを買いましょう」
「ご購入ありがとうございます」

 数日後。男の家に生活支援ロボットが届いた。
説明書を読んで手順通りにやるとロボットが起動した。
「始めに声紋と指紋認証をします」
 ロボットが勝手に喋りだした。
「これはすごいな、科学はここまで来たか」
 男は声紋と指紋を読み取らせて、早速命令を与えた。
「よし、ではまずこの部屋の掃除をしてくれ」
「かしこまりました」
 そう答えると、ロボットは部屋の隅にある掃除機のところまで行き、それを使って部屋の掃除を始めた。
 動きはとてもスムースで、ロボットとは思えないほど手馴れた様子だった。
「こんなに便利なものがあるならもっと早くに買っていればよかった」
 男はとても感激した様子で、販売元の会社に感謝の電話をかけた。
「あなたの会社はすごいものを作りましたね。いやはや本当に買ってよかった」
「お気に召してもらえて光栄です」

 数週間がたった。
男はあれから部屋の掃除、食器洗い、料理や買出しなど、全ての家事を毎日ロボットにやってもらっていた。
「おい、これもやっておけよ」
「……かしこまりました」
 そして、あろうことか男は自分の残った仕事もロボットに押し付けていた。
「あと今日は会議で遅くなるから、夜飯はいらん。その代わり昨日渡した書類作りをやっておいてくれ、仕事で必要だからな」
 ロボットにそう言って男は家を出た。

 男が家に帰宅すると、どういうわけか部屋の中が散らかっていた。
「なんだこれは、泥棒でも入ったのか」 
 恐る恐る部屋に脚を踏み入れると、今度はガラスが割れる音がした。
急いで音のした台所のほうに行くとそこにはロボットがいた。
 ロボットは台所にあった鍋やフライパン、食器などを放り投げてガラスを割ったり昨日の残りの料理をぶちまけたりしていた。
「おい、止めろ。投げるな」
 命令してもロボットは言うことを聞かなかった。
男はロボットが壊れたと思い、急いで販売元の会社に抗議の電話を掛けた。
「ちょっと、どういうことですか。あなたの会社のロボットが突然壊れてしまいましたよ。 まだ買ってから数週間も経っていないのに。これでは話が違います」
「落ち着いてくださいお客様。もしやお客様、家事をほとんどロボットにまかせっきりだったのではないでしょうか」
「だったらなんだ」
「ちゃんと説明書をお読みになりましたか。家事をまかせすぎるとロボットだって参ってしまいますよ」
「どういうことですか、壊れたのが私のせいだと言いたいのですか」
「いえ、違います。わが社の開発したロボットには心の機能があります。ですからあまりに家事を押し付けすぎると嫌になってしまうのです。 それでストレス発散のために物を壊したりするかもしれません。決して壊れたわけではないのです。あくまで生活を支援するロボットですので、 使用者が何も家事をやらなくなるのは本末転倒になってしまいます。なので、この機能を搭載いたしました」
「まったくいらない機能だな。第一そんな話は聞いてないぞ」
「申し訳ございません、それはこちらの不手際でございました。きちんと販売先に説明をするようにと言いつけておきます」
「まあ壊れていないのだったら良い。それでどうすればなおるのだ」
「家事をロボットだけにやらせなければロボットも不満がなくなるでしょう。それか、何かご褒美を買ってあげれば良いです」
「そうか、わかった」

 男は台所に行き、狂ったように暴れるロボットにこう言った。
「おい、もう暴れるのは止めてくれ。今度からは俺も家事を手伝うから。それに俺の仕事をやってくれたら何でもご褒美を買ってやる」
 するとロボットは暴れるのを止めて大人しくなった。
「ご褒美ですか」
「そうだ、ただし俺の仕事をやってくれたらだ。それで、ロボットのお前が一体何を欲しがるというのだ」
 男がそう聞くと、ロボットはまるでその台詞を用意していたかのように、淀みなく答えた。
「新しいロボットが欲しいです」

 

327: 創る名無しに見る名無し 2011/03/05(土) 20:26:02.35
果たして二体目のロボットを購入することで万事うまくいくのだろうかw
そのうち三体目が必要になりそうな気がするww

 

330: 創る名無しに見る名無し 2011/03/15(火) 01:46:44.05
初めてきた。眠れなかったけど気が紛れてる(´・ω・`)
良質な作品多いね。面白いです。

 

331: 創る名無しに見る名無し 2011/03/17(木) 16:54:30.38

過疎ってるのでもう一個投下します。
これも前に投稿したことあるやつですが。

【果実】

「今年もあとすこしで実がなる季節だな」
「そうですね。これでまた遊んで暮らせますよ」
 二人の男が大きな木の前で青々と茂った葉を見上げながら話していた。
この木は初夏に大きな実をつける。
男たちはその実ができるのを心待ちにしていた。

「去年は大変でしたね。肥料がなかなか見つからなくて、私なんか遠くまで引き取りに行きましたからね」
「それは夏のことだったな。涼しかったとは言え、暑さで肥料がダメになるかと思って心配したもんだ」
「冷夏だったから、例年に比べて量が少なかったのも残念でしたね」
「まあそれは仕方ない。それでも実ひとつで数百万は手に入るんだ。楽な仕事さ」
「なんだか今からわくわくしてきました。早く実をつけないかなあ」
「おまえは金が手に入ったらどうするんだ。また遊ぶのか」
「私ですか。そりゃもちろん遊びますよ。金は使うためにあるんですから。とにかく使い切るまで遊ぶつもりです」
「なるほど」
「そう言う自分はどうするんです」
「俺は、娘を。いや、何でもない。忘れてくれ」

 数週間後。男たちは再びこの場所に来た。
「実ができてますね」
「ああ、さっそく回収作業に取りかかろう」
 二人は手分けして大きな実を木から下ろし、慎重に傷つけないよう車の荷台の中へ積んだ。
実はとても柔らかく、中が透けていて、赤や黒の物体が脈動しているように見えた。
実を全て積み終えてから荷台の扉を閉め、二人は車に乗り込んだ。
「いくつあるか数えたか」
「十二個ありましたよ。肥料の数は十三個だから一個足りないですね」
「それでいい、売りに行くぞ。新鮮なものじゃないと売れないからな」
 そのまま病院へと急いだ。
実は全部で一千万円以上になった。

 男たちは車に戻って病院を後にした。
「やりましたね。これでまた大金持ちですよ。さあ、早く金を分けましょう」
「そのまえに、お前に、頼みがあるんだが」
「なんです」
「今回のお前の分け前は、なしにしてくれないか」
「いったいなぜです。理由を教えてもらわないと」
「俺の娘は今、手術して心臓を移植しないと助からない病気にかかっている。金を分けたら手術を受けられない」
「事情は分かりましたが、私の予定はどうなりますか。そんなこと、嫌に決まっています。今まで溜めた金を使えば良いではないですか」
「今までの金はもう使ってしまった。だから、どうか頼む。来年は全てお前にやるから」
「私が私の金をどう使おうと勝手です」
「そうか。なら仕方ない」
 男はぱっと灰皿を掴んで、助手席に座る男の頭を殴りつけた。
 一発。二発。三発。四発。
 助手席の男のうめき声が止まった。男は車を急発進させた。

 男は木のある場所へ戻って来ていた。手には大きなスコップを握っている。
「これで、来年の一個分の肥料になるな」
 男は木の根元に掘った穴に、虫の息の肥料を引きずり落とした。そして土をかけていく。
 男が肥料を埋めて、車で走り去った後、木から大きな実が落ちてきた。
 地面に落ちた実からは、人間の臓器が飛び出していた。

 

332: 創る名無しに見る名無し 2011/03/26(土) 17:39:42.84
面白いけど怖ぇぇ

 

333: ぽぽぽぽーん 2011/03/28(月) 02:14:44.27

エヌ国は小さな国土ながら、世界でも有数の経済大国として知られた国だった。
国民は勤勉で、朝早く起きて新聞を読み、質素な食事を好み、朝から晩まで働いていた。
産業も発展しており、様々な部門で先進的な技術を有していた。

エヌ国は地震と水害が非常に多い国でもあった。
しかし、たぐいまれなる技術によって、常に災害に備えていたため、大きな被害にはならなかった。
それが国民の慢心につながっていたのかもしれない。

ある日、エヌ国の小さな国土を、超巨大地震が襲った。
15メートルもの超大型の津波に飲み込まれ、沿岸の街は跡形もなく消えてしまった。
地震学者たちは、この超巨大地震が次々にエヌ国中の地震プレートを動かし、巨大地震の連鎖が起こるだろうと予測した。

さらに悪いことに、沿岸に建てられた原子力発電所が津波によって事故を起こし、高濃度の放射線が漏れ出てしまったのだ。

エヌ国政府は慌てた。
国中の医学博士を集めて、放射線除去薬を作ると発表し、研究に取りかからせた。
エヌ国は医療でもトップクラスの技術を誇っていたため、薬はすぐに出来上がり全国民に支給された。

その後のエヌ国の復興は早かった。
元々勤勉な国民性もあったため、人々は一致団結して働いた。
お互いに思いやり、助け合うことで、絆が深まった。
エヌ国は世界中から賞賛を受け、さらに発展していった。
エヌ国の国民は、今までにないほどの幸福感に包まれていた。

———その頃、世界では大騒ぎとなっていた。
テレビのアナウンサーはこう告げる。
『エヌ国に再び大地震が起きました。 エヌ国の放射線量は致死量の1万倍です。 既にエヌ国の人々は死に絶えているものと思われます。 まもなくわが国にも放射能が襲ってきます。 すぐに核シェルターに逃げてください!』

実は、エヌ国の中央には、原子力発電所とは比較にならないほど危険な高速増殖炉があり、その真下に地震プレートが走っていた。
地震学者たちはこの場所に巨大地震が来ることを予測し、エヌ国政府に助言していた。

エヌ国国民に配られた薬は放射線除去薬ではなかった。
巨大地震で高速増殖炉が破壊されたらエヌ国国民全員が助からないと踏んだエヌ国政府が、希望に満ちた夢を見ながら安楽死できる自殺薬を配布したのだった。

 

 

340: 創る名無しに見る名無し 2011/03/28(月) 19:55:40.01
>>333
面白い
そういやモデルと思われるあの国も「エヌ国」だったなw
いや笑えない…

 

344: 17歳 2011/03/31(木) 21:12:38.93

『17歳』

「やりたいことは、見つかりましたか??」
テレビの画面から、17歳の私が語りかけてくる。
私はその声を聞きながら、やりたいことをイメージしてみるが、どうもうまくいかない。
日々ぼんやりと流れるままに過ごしている私には、少々酷な質問だ。

獣医さんになりたいと考えたことはあるが、それは単に動物が好きだからであって、一生をその仕事に捧げる覚悟があるか、と問われると簡単には「はい」と言えない。
ぼんやりしていると、また17歳の私が問いかけてくる。
「もしかして、結婚してたりしますか??なんちゃって」

なにが「なんちゃって」だ。
17歳の私にはユーモアのセンスがない、と私は残念に思った。
画面の中でニヤニヤしている17歳の私を、私は睨みつけてやった。
もちろん、そんな目線を彼女が感じることはあり得ないのだが。
この質問に答えるまでもなく、私は結婚などしていない。
それがわかっているからこそ、少し腹立たしかった。

「隣の席のK君とは、どうですか??」
まただ。
K君とは、大失敗したバレンタインのあの日から一言も喋ってない。
「どうせわかってるくせに……」
私のつぶやきは、画面の向こうには届かない。
K君とうまくいく保証など最初からなかったのだ。
どうせ彼は隣のクラスのSちゃんといい仲だったじゃないか。
自分でもわかっていたじゃないか。
「ふぅ……」
ついつい、ため息が出てしまう。

「この先のことはまだ分からないけど……」
17歳の私は少しはにかんで、次の言葉を探している。
「今日は元気です」
にっこりと、恥ずかしそうに、そう呟いた。

ビデオはそこで終わった。
今日は元気です、か。
それが聞けただけでも、とりあえずは見た意味があるというものだろう。

それにしても便利な世の中になったものだ。
未来からのビデオレターが発明される日が来るとは。
私は伸びをしてから、今日の分の宿題をランドセルから取り出し、机に向かうことにした。

 

345: 創る名無しに見る名無し 2011/04/01(金) 01:58:48.68
>>344
うあー星っぽーい

 

357: 創る名無しに見る名無し 2011/04/11(月) 00:16:48.78
>>344
こういうの好きだわー

 

356: ◆PDh25fV0cw 2011/04/10(日) 18:06:25.11
なんか少し離れてたら、結構投稿されてる。いいことだね

『夢のある工場』

ある工場の一室、そこに恰幅のよいスーツ姿の男と、白衣をきたメガネの男がいた。
「それで、これを我が社に買って欲しいということかね?」
スーツの男は、目の前にあるインクを持って訝しげに言った。
この男は、この工場を経営する社長であり、目の前の眼鏡の男の売り込みを聞いている最中であった。
「ええ、そうです。このインクは働きアリから取り出した特別性でして、これでやって欲しい仕事を書いて渡せば、決してサボること無くやってもらえるという夢の商品です」
「そんな商品をどうして我が社に?」
そんな夢の商品ならば、もっといい会社にも売ることができるだろう。
決して小さい工場ではないが、大手と比べればまだまだ小さい会社だった。
「大手では、実績がなければこうして交渉もすることができないもので。それに、この商品は単純作業の方が効率が良いのです。複雑な作業では指示する方も書くのが大変ですからな」

なるほど、と社長は納得した。
たしかに、工場で働く人間の中には不まじめな人間も多い。
それがなくなれば、効率も上がるというものだ。
「最初は、お試しいくつか置いていきます。それで納得していただければ、契約の方よろしくお願いします」
インクの試供品を置いて、メガネの男が帰る。

翌日、社長は物は試しと事務の人間に在庫整理をこのインクで指示した。
するとどうだろう、いつもの時間の3分の2の時間で終えて帰ってきた。
話を聞くと、休むことやサボることなど考えもしなかったと答えた。
これは本物かもしれない、そう思った社長は何回か実験を繰り返すが、全てさぼること無く仕事をして帰ってきた。
「これはいい商品だ。至急契約したい。あと、コピー機で使えるようにしてもらえるとありがたい。一々手書きでは面倒なのでな」
社長は、興奮気味にメガネの男に話した。
「それはありがたい話です。ですが、コピー機はやめたほうがよろしいかと。いえ、できないというわけではないんですがね」
「どうしてだね。コピー機で一斉に命令したほうが効率が良いだろう。一々手書きで命令を書いていては、効率が落ちて、それこそ本末転倒じゃないか」
「確かに、その通りですね。商品は明日にでも工場に届けさせます。それでは失礼します」

夢のインクを手に入れた社長は、次々と命令を書き、印刷して配っていった。
これにより、さぼる人間はいなくなり、効率もかなり向上した。
そんなある日。
「社長、緊急事態です!」
一人の社員が、社長室に飛び込んできた。
その社員が言うには、その社員の同僚が過労で死亡したということらしい。
さらに、働きすぎによる弊害で精神的に参っている人間も多くでていて、工場が稼働できない状態になっているらしい。
「い、一体どうしてそうなるまで放っておいたんだ」
「しかし、仕事はきちんとしていましたから、そんな状態になっているとは思わなかったんですよ。自分も、仕事をしているときは他に気を使っている余裕はなかったですし」
慌てた社長は、メガネの男に電話をかける。
「君のインクのせいで、大変なことになった。どうしてくれるんだ」
メガネの男は少しため息をついて答えた。
「たしかに、このインクはあなたにとっては夢のインクだったかもしれません。しかし、働く側にしてみれば現実の話なんですよ。その人をみないで無機質に指示を出せばこうなることはわかったことです」

ブツリ、と切れる電話。噂を聞きつけたマスコミの声が、遠くに聞こえる。
これから工場をどうするか。
社長は頭を抱えた。
しかし、その指示を書ける人間は、誰も居なかった。

 

368: 創る名無しに見る名無し 2011/04/21(木) 18:56:14.42

<頭がよくなる装置>

 エル博士は頭がよくなる装置を開発しようと決心した。
 もちろん、彼も博士という地位につくだけあって、自分の頭のよさには自信がある。
うらやましがられる場面も多い。
エル博士がこのような決心をしたのは、頭のよさというのは、いい商品になるのではないかと考えたのだ。

 なにをもって頭がよいとするかは、議論の分かれるところだろう。
エル博士はひとまず頭のよさというのを、知識と機転に優れることとした。
知識をたくさん持っていても上手く使えなければ宝の持ち腐れだ。
逆に機転が利く人でも、物事を知らなければその才能を発揮できる場面は必然的に少なくなる。

 平凡な頭の中に、豊富な知識とそれを生かす機転を詰め込む。
エル博士の中で、おぼろげながら装置の輪郭が見えてきた。
「まずは、知識を集めなければならんな」
 エル博士はあらゆる手段を用いて、あらゆる知識を集めた。
彼自身が手に負えないほど高度な理論から、どうでもよさそうな豆知識まで、それら全てを大容量のコンピュータに
詰め込んだ。
「知識はこんなものでいいだろう。次はそれを生かす機転だな」

 エル博士は、歴史上機転が利くとされた偉人の資料を集めた。
また、現在生きる機転が利くとされる人とコンタクトを取り、彼らの思考パターンを徹底的に解剖した。
そして、これらを分析したデータを、別のコンピュータにインプットした。
「あとはどうやって頭の中に入れるか、だな」
 エル博士は医学や脳科学を学び、人体に負担をかけずに知識と機転を頭の中に詰め込む方法を研究した。
やがて、エル博士はこれを発見することができた。
 まもなく、これらを統合したひとつの装置が出来上がった。
これぞ、頭のよくなる装置である。

「さっそく試してみるか」
 エル博士は自身に装置を使った。
 装置は彼が想定した通りの効果を発揮した。
膨大な知識と、それらを生かす機転が、エル博士のものとなった。
大量の情報を流し込まれたにもかかわらず、エル博士はとてもさわやかな気分になった。
「頭がよくなる、とはこういうことか……」

 エル博士はすぐに、この装置を世に出すことはやめることにした。
なぜなら、頭がよくなる装置など問題にならないほどの発想とビジネスが次々に頭に浮かぶからだ。
もはや、この装置ひとつに生き方を委ねる必要はない。
 そして、理由はもうひとつあった。
 頭のよい人間というのは、頭のよさとは無数の愚か者がいなければ価値がないことを、えてして知っているものなのだ。

 

391: ◆PDh25fV0cw 2011/05/18(水) 21:02:20.68

『真実の言葉』

「やあ、ひさしぶりですね」
青年は街中で中年の男性に話しかけられた。
しかし、青年にこの男性に見覚えはない。
たぶん人違いだろう。
「あなた、人違いだと思っていますね?」
「ええ、そうです。私にはあなたにあった記憶がありません。どこか出会ったことがありましたか?」
「いえ、記憶がなくて当然です、私はあなたに会うのは初めてですから。いや、街ですれ違ったことぐらいはあるかもしれませんね」
不思議なことを言ってくる。
この男性は、会ったこともない人間に対して久しぶりですねと言ったのだろうか。
「しかし、それならばおかしなことになる。会ったこともない人に久しぶりとは」
青年は素直に男性に疑問をぶつける。
「いえ、世の中面白いもので、会ったこともない人間に久しぶりですねと言われているのにおひさしぶりという人もいるのです」
確かに、記憶力が落ちていると思っている人や、物忘れがひどい人にはそういう人もいるかも知れないなと思った。
「しかし、どうしてそんなことを?特に意味のある行為とは思えないのですが」
答えの代わりと言わんばかりに、名刺をさし出してくる。
Aと言う名前の横に「本音公社」と書いてある
「本音公社ですか。おかしな名前ですね」
「あまたは本当に素直なお人だ、これならば本音公社にスカウトしたいぐらいだ」
「スカウトですか」

青年は少し疑う。
いきなりスカウトと言われても、詐欺師の罠かもしれない。
青年は素直だったが馬鹿ではなかった。
「たしかに疑われても仕方がありませんね。これから、役所で仕事ですのでそこで仕事を見学してからというのはいかかでしょうか。役所ならば、心配もないでしょう」
公社と書いてあるので国も関わっているのであろう。
もし本当にここに就職できたら一生食いっぱぐれることもない。
青年は少し心が傾いた。
そういった打算的なこともすごく素直な人間だった。

役所に着くと、青年と離れAは役所の男性と話し始める。
しかしすぐに青年のもとに戻ってくる。
「どうかしたのですか?」
青年はAに尋ねる。
「いえ、もう仕事は終りました。会社に帰るとしましょうか」
青年は驚く。
仕事と言っても、男性と話しただけだ。
「ええ、話すことが私の仕事なんです。簡単なお仕事でしょう」
「たしかに簡単そうですが、どうしてそれが仕事になるのですか?」
世の中に沢山仕事はあれど、ほんの少し話すだけの仕事など聞いたことがない。
有名な弁護士などは10分相談するだけで大金を得るらしいが自分にはそんな知識はない。
「なら説明しましょうか、あなたには心にのこっている言葉というものはありますか」
青年はいわれて思い出す、親の言葉、恩師の言葉。
場所も時間もバラバラだがいくつかそういったものは思いついた。
「そういった言葉には、『本当の言葉』なんです」
「本当の言葉ですか」
「そうです。素直な人間が本心で言った言葉というものは心に残りやすいし、信用もされやすいのです。これが『本当の言葉』です」
たしかに、そうかもしれない。
さっき思い出した言葉も、状況はどうあれ本心の言葉だろう。
「あなたは素直な人間のようなので、うちにスカウトしたいのです。今の世の中素直な人間は少ないですからね」
なるほどと、少し納得する。

役所を離れ、少し離れた場所にある本音公社のビルに着く。
看板は出ていなかったが、キレイにされており、陰鬱な雰囲気はない。
中も小奇麗で、無駄な装飾品も置いていないまさに役所といった感じだった。
そこで青年は仕事のやり方やなどをひと通り教わり、仕事は後日ということになった。

幾日が過ぎ、青年の初仕事の日。
青年は必要な書類を持って、仕事先に向かっていた。
場所は、工場。役所から、工事内容の変更を伝えるもので、急な変更に相手先は多分怒る。
そう考えた結果、うちに回ってきたらしい。
先輩からは、ただ誠意を持って内容を伝えれば良いと言われていたが、青年に不安は残る。
工事現場につき、現場監督の人に内容を伝える。
内心怒られる不安にかられていたが、一生懸命伝えるうちに相手も納得したのか、特に怒られることもなく終わった。これが『真実の言葉』の効果なのだとすれば大したものだ。
人間、一度成功すれば慣れるもので、青年は次々に仕事をこなしていった。

日本中を飛び回り、色々な現場に出向いた。成功が、自信を生みまた成功する。
そうした好循環の中にいた。
しかし、そういう時慢心というものは生まれるもので、心の奥ではだんだんと慢心が生まれていた。
その日も青年は、いつものように相手に説明したのだが、どうもうまくいかない。
しまいには相手方を怒らせてしまい、仕事が失敗してしまう。
こんな経験をしたことのない青年は、途方にくれて本音公社に戻る。

「どうしたんだい、ずいぶんとしょぼけて。何かあったのかい」
先輩の男性に声をかけられ、青年は仕事に失敗したことを告げる。
「そうかい、君もついにそうなったか。人間、いずれ慢心は生まれるそうなったらもう『真実の言葉』は使えない。残念だけど、君には最後の仕事をしてもらうことになるね」
青年は最後の仕事と言われて、ギョッとする。
「そんな。いくらでも改心します、ですから最後なんて言わないでください」
「いいや、だめだ。一度慢心が生まれれてしまえば、消えることなんて無い。諦めるんだな」
先輩は取り付く島もないといった感じだ。
「それで、最後の仕事というのは一体なんでしょうか」
先輩は、窓の外に指を向けこういった。
「新しい人をスカウトしてくるんだよ。やり方は、知っているだろう。そうしたら、君は今の私の立場になる。そして、私は役所に行き普通の公務員になる。見つかったら、私に報告しに来るといい」
そうしてハッと気づく。
あの時の、役所の人はもしかしたら、先輩の先輩だったのかもしれない。
つまり、あの時もう先輩に『真実の言葉』なんて使えなかったのではないか。

なんという単純な仕掛けだ。
これに騙されるのなら、たしかに純粋な人間であろう。

 

412: 創る名無しに見る名無し 2011/05/31(火) 20:41:13.56

『懐古』

「まもなく、一番線に快速××行きが――」
抑揚のないアナウンスがホームに響いている。
おれはそれを聞き流しながら深い溜息をついた。
入社して一年、上司にいびられ、仕事に追われ、そんな毎日だった。
あの頃の青臭かったが、希望にあふれていた思いはどこへやらだ。
今ではすっかりうらぶれてしまった社会人だ。
ドアの開く甲高い音が聞こえた。
いつの間にか到着していたらしい。
終電間際だというのに、車内は満席だった。

仕方なくドアの近くに陣取り、重いカバンを抱えながら吊り革に掴まる。
そうこうしているうちにまた溜息が出た。
野球に人生をかけてもいいと思っていたあの時。
地区予選に優勝し、甲子園出場が決まった瞬間。
チームメイトと分かち合った感動。全て過去のことだった。
もう一度、溜息が出た。
「戻りてえなあ……」
思わず呟いていた。
するとどこからともなく
「その願い、叶えてしんぜよう」
そんな声が聞こえたかと思うと、世界が回り、歪んだ。
何事かと思う間もなく、今度は地面に叩きつけられた。

体中が痛い。
そしてやけに眩しい。
一体、何が起こったというのだ?
「おーい、何そんな所で寝てるんだ?」
遠くから声がする。
かつて何度も聞いた声。
「筋トレ始まるぞー。早く来いよ」
この声は、間違いない。
かつて俺とバッテリーを組んだ佐々木の声だ。
立ち上がる。
辺りを見渡す。
さっきまで深夜の電車にいたはずだ。
だが今、おれは日光照りつけるグラウンドに立っている。
今行く、と叫んだ。
涙声になっていたかもしれない。
体の痛みなどもう無かった。
何が起こったかなど、どうでもいい。
おれは帰ってきたのだ、あの輝いていた時代に。
それだけで充分だった。

「まもなく、一番線に快速××行きが――」
抑揚のないアナウンスがホームに響いている。
おれはそれを聞き流しながら深い溜息をついた。
タイムスリップして一年、先輩にいびられ、練習に追われ、そんな毎日だった。
あの頃のうらぶれていたが、達観していた思いはどこへやらだ。
今ではすっかり青臭い高校生だ。
ドアの開く甲高い音が聞こえた。
いつの間にか到着していたらしい。
終電間際だというのに、車内は満席だった。

仕方なくドアの近くに陣取り、重いカバンを抱えながら吊り革に掴まる。
そうこうしているうちにまた溜息が出た。
この会社に人生をかけてもいいと思っていたあの時。
面接に合格し、内定が決まった瞬間。
家族と分かち合った感動。全て未来のことだった。
もう一度、溜息が出た。
「戻りてえなあ……」
思わず呟いていた。するとどこからともなく――

 

413: 創る名無しに見る名無し 2011/05/31(火) 21:32:55.32
>>412
無限ループは定番だけど、
やっぱこういうのがいいよな

 

414: 創る名無しに見る名無し 2011/06/01(水) 11:04:41.12
綺麗にハマってて上手いなぁ。

 

415: 創る名無しに見る名無し 2011/06/03(金) 23:57:16.43

『感情摂取』

ある日、感情が序々に消滅してしまう奇病が世界中に蔓延した。
この奇病に罹った者は最終的には感情が欠乏して廃人になる。
程無く、感情を抽出し粉末状にした、この奇病の治療薬が発明された。
「怒り」「絶望」「悲しみ」「優しさ」「愛情」「恨み」「喜び」それぞれの感情に作用する薬を服用する事で喜怒哀楽の表現を取り戻す事が出来た。
だが、優しさ、愛情、喜び、等のポジティブな感情を取り戻す薬は物凄く高価で、貧乏人には手が出ない。
一方、怒り、絶望、悲しみ、恨み、等のネガティブな感情を取り戻す薬は、比較的簡単に製造出来る為に安価であった。
最初こそ、これらの負の感情を摂取する事を皆躊躇ったのだが、高価な薬には手が出ない、かと言って廃人にはなりたくない…仕方なく安い薬は普及していった。

そして、ある日、大暴動が同時多発的に発生した。
怒りと悲しみと絶望に満ちた暴徒が次々に金持ちの家に雪崩れ込み、溜め込んでいた薬を皆で奪い合った…
暴徒の中には貧しい者達に同情した金持ちも沢山いた。
「優しさ」「正義感」を摂取していた人々は平和的なデモを主催したが、人数が増えるに従ってデモ隊は次第に暴徒化していってしまった。

世界中で革命が起こり、独占されていた薬の製法が世界中に公開された。
どうやら、製薬会社が世界中の政治家に「強欲」の薬を売りさばいていた為に、世界中で薬の値段が釣り上げられていた様なのだ。
そして世界は負の感情の薬の生産を止め、全世界が優しさと愛情で満たされたのであった。

『ふふふ…今こそ地球侵略の最大のチャンスだ』   誰かが宇宙のどこかで呟いた。

 

416: 創る名無しに見る名無し 2011/06/04(土) 00:04:39.42
いいよいいよー。でも最後の一文はいらないw

 

421: ◆PDh25fV0cw 2011/06/10(金) 19:33:25.94

『泥棒チョコ』

ある山奥に、盗賊団の研究施設が立っている。
盗賊団に研究施設が必要なのか?
そう思われる人もいるかも知れないが、常に社会は進歩しているので、盗賊も進歩しなくては確実に盗むこともできないからだ。

さて、その研究所の中で白衣の博士が一つの発明品を完成させた。
「博士、それはいったいなんですか?」
盗賊のお頭が博士に問いかけた。
いかにも研究職といったひ弱な体の博士と違い、顔も厳つく荒々しい風貌をしている。
「これは、泥棒チョコです」
見た目は包装紙に包まれた小さな板チョコで、表面には盗賊団のマークが入っている。
「それはまた不思議な名前だ。チョコが泥棒をするのかい?」
「いえいえ、そうではありません。論より証拠、このチョコを持って帰ってください。チョコは部屋に帰ってから食べてくださいね」
上手くはぐらかされ、チョコを押し付けられる。
お頭も博士のことは信用しているので、まさか毒入りということはないだろう。

その夜、お頭は自室に帰った後チョコを開けてみることにした。
何の変哲もない茶色の見た目。
味も特に変わった味がするわけでもない。
ただ、少し苦めの味だった。
食べ終わった後も苦い味は舌に残り、お頭は少し不快な気持ちになってくる。
冷蔵庫を開けると、盗賊団のマークが入ったお茶が見える。
これ幸いと、一気にあおる。
すると舌に残っていた不快感はすっきりと洗い流され、爽快な気分になってくる。
(これが泥棒チョコの効果なのだろうか?)
だが、これだけではちょっと変わったチョコでお終いだ。
たしかに売ればそれなりのお金になるかもしれないが、あくまで目的は泥棒なのだ。

しかし、爽快な気分がそういった悪い感情も押し流したのか、あまり怒る気にもなれなかった。
翌朝、お頭は博士のもとに向かった。
「やあ、博士。昨日のチョコを食べたが特に変わったことはなかったよ。あれでどうして泥棒チョコなんだい」
「そうですか、それは残念です。あの話は変わりますが、このチョコ、研究費がこれだけかかってしまったんです」
書類を見ると盗賊団の研究費が大赤字と書いてある。
普段なら決して許されるような額ではないが、妙に気分が良く怒る気になれなかった。
「そうか。でも大丈夫だろう、うちの盗賊団は儲かっているからな」
ハハハと豪快に笑うお頭。
それにつられて博士も笑う。
食べて爽快、泥棒チョコ。
あなたも泥棒がバレる前にお一つどうぞ。


 

418: 創る名無しに見る名無し 2011/06/06(月) 15:30:56.32
イイヨイイヨー

 

432: 世界一怖いお化け屋敷 2011/06/26(日) 01:12:22.16

『世界一怖いお化け屋敷』

「さあさあ、ランドに来ておいて、このお化け屋敷に入らないって手はないよ!!」
お化け屋敷の前でゾンビらしき恰好をした男が声を張り上げている。
ゾンビの前には数人の客が面白そうに話を聞いているようだ。
僕は少し嫌がる彼女を引きずりながら、その前まで近付いていった。

「このお化け屋敷は世界で一番怖いって有名なのさ!!なぜかわかるかい??」
ゾンビは一番近いカップルに話しかけた。カップルはニコニコしながら答えた。
「ここは真っ暗だって聞いたよ」
「そう!!その通り!!お化け屋敷の中には一切光がないんだ」
ゾンビはそう言って、ヒヒヒ、といやらしく笑った。
こうして見ると、このゾンビは明るいところにいるというのにとても不気味に見えた。
お化け屋敷の辺りは薄暗くなってはいるが、それでも少しアンバランスだ。
なんだか辺りからおかしな臭いもしてきている。
「もちろん懐中電灯を貸してあげてもいいが、有料でね。それに、そんなものがない方が楽しめるってもんだ」

これを聞いて、カップルは仲良くお化け屋敷に入っていった。
なかなか度胸があるようだ。
「さあ、このお化け屋敷の売りはそれだけじゃない。古今東西、様々な怖いものが集まってるのさ」
ゾンビは続けた。
帰りかけた他の客も、足を止めたようだ。
「ゾンビ、幽霊、ドラキュラ、フランケンの人造人間、殺人鬼、エイリアン、魔女…」
確かに古今東西だ。
しかし、怖いもののごっちゃ煮は果たして怖いのだろうか。
「ゾンビに襲われればゾンビに、ドラキュラに襲われればドラキュラに、エイリアンに寄生されればエイリアンになっちゃうから注意してね」
ひぃ!!という小さな悲鳴のあと、別のカップルがそそくさと離れていった。
「あと殺人鬼に襲われると幽霊になっちゃうねえ…」
うーん、なかなか怖いじゃないか。

僕らのほかには老夫婦が一組いるだけだ。
しかしゾンビはまだまだ元気に続ける。
「しかし心臓の悪い方でもご安心!!いつでも黄色い小さな矢印に沿って進めば、非常口に辿りつけます」
老夫婦は少し安心したようで、入る踏ん切りをつけようと、もう一声を催促しているようだ。
「んん、しょうがない。今日はシルバー大サービス!!60歳以上の方は半額だ!!」
老夫婦は少し怒って帰ってしまった。
還暦はまだ迎えていなかったらしい。

お化け屋敷前には僕らしか残っていない。
突然ゾンビが顔を近づけてきたので、彼女はびくっと体を引いた。
「お客さん……怖いもの好き??」
僕はそうだと答えた。
「でも彼女の方は怖がってるね」
そう言ってゾンビはニヤニヤしている。
「どうしても無理だっていうんなら、無理して入らなくてもいいんですよ。どうせ今日はたくさんお客さんが入ってくれたしね」

そのとき彼女が消え入りそうな声で、ゾンビに尋ねた。
「あ、あの……出口はどこに……」
するとゾンビは愉快そうに答えた。
「ありませんよ、もちろん。だから人件費がなくてもやっていけるんです、ここは」
僕らは慌ててお化け屋敷を離れた。

 

433: 創る名無しに見る名無し 2011/06/26(日) 04:04:49.78
これはいい落ちだw

 

434: 創る名無しに見る名無し 2011/06/26(日) 09:47:49.01
こええw

 

455: 176 2011/07/16(土) 00:18:57.78

ずいぶんひさびさにショートショートを書いた気がする……。
176の会員証の人です。覚えてくれてたら嬉しいんだぜ。

数分でストーリーを考えたw
クオリティは保証しないんだぜww
そして今回なんかあんまり星新一っぽくない気がするんだぜ。

『おいしい料理』

 その博士は、食に関する研究の専門家だった。
 あらゆる料理について研究し、なぜこの料理がよく食べられているのかなどを調べるのが、彼の仕事だった。
 そして、ここ最近はある目的のために研究していた。
「今までわたしは長い間、食についてさまざまな研究をしてきた。おそらく、食べ物に関しては、わたし以上に博識な者などおるまい。ということは、わたしだけが世界でもっともおいしい料理を作れるのではないだろうか」

 かくして、博士の新しい研究は始まった。
 博士は今までの研究成果と知識を総動員して、実験にのめり込んだ。
 一般的に多くの人から好まれる料理の共通点を調べたり、土地に根付く料理を求め、外国や未開の地にも赴いた。
 食材だけでなく、たくさんの調味料にも研究を重ねる。
何度も失敗したが、成功して、多くの人々から賞賛を浴びた時のことを思うと、疲れは消えていった。

 やがて、そのような日々も、ついに終わりを告げる時がきた。
「ようやく完成したぞ。これぞ誰もが満足する世界でもっともおいしい料理だ」
 博士は早速助手たちを呼んだ。
「博士、ついに研究が完成したとかで……」
「ああ。ずいぶん時間がかかったが、ついに完成した」
「しかし、一体何を研究なさっていたのですか」
 博士は万が一秘密がもれた時のことを思って、助手にもその研究の内容を話さなかった。
「うむ。今まで黙っていたが、実は世界でもっともおいしい料理について研究していたのだ」
 すると、助手たちの間でざわめきが起こった。
「なるほど、それはすばらしい研究ですね」
「そうだ。世界でもっともおいしい料理とはすなわちすべての人に好かれ、なおかつ比類するものがないような味の必要がある。すなわち……」
 博士がいつもの説明口調になりかけた時、助手がそれをさえぎった。
「科学的な説明をされても、わたしたちにはほとんど理解できないでしょう。博士以上に食べ物に詳しい人はいませんから」
 それを聞いて、博士は満足そうにうなずいた。
「それもそうだな」
「それよりも、わざわざ呼んだということは、食べさせてもらえるのでしょう」
 遠慮を知らない助手の一人がそう言った。
「もちろんだとも。理論上はこれで間違いないはずだが、実際に食べてもらわぬことには本当に、世界でもっともおいしい料理かどうか判断できないからな」

 博士は厨房に入り、しばらくして戻ってきた。
「これが世界でもっともおいしい料理だ」
 助手たちの前に料理が並べられる。
彼らが料理を口にすると、たちまち全員が歓声をあげた。
「すばらしい。博士、このようなおいしい料理を食べたのは、生まれて初めてです」
「そうだろう。研究は完成だ」
 その後、慎重な博士は、友人たちを呼んで料理を振る舞った。
全員好みがばらばらで、一緒に食事に行こうとすれば、入るお店に困ってしまう組み合わせだった。
 料理を食べたとたん、全員がそろって助手たちとおなじ反応を示したのを見て、博士はうれしそうに笑った。

 かくして、博士は研究の成果を世の中に発表した。
 ラジオや新聞、テレビなどでその作り方や食材を発信した。
 秘密のままにしておいて、専門のお店を作れば儲かるのに、と言う人もいるかもしれないが、博士が欲しいのは賞賛の言葉であって、お金は二の次だった。
 しかし、いつまでたっても、博士への賞賛の言葉は現れなかった。
 不思議に思った博士であったが、その理由に気づき、落ち込んだ様子で、深いため息をついた。
「忙しい現代人にとって、食べ物は味よりも、いかに手間をかけずに作れるかが重要らしい。そんな連中にとって、この料理は面倒なだけということか。時代が変わったというか、時代遅れな頭の人間は、どうやらわたしだけらしい」

 

456: 創る名無しに見る名無し 2011/07/16(土) 23:22:03.82
面白かったです
マイナス思考具合が星新一っぽいような

 

457: 創る名無しに見る名無し 2011/07/17(日) 01:11:54.46
言い回しや台詞が星新一らしくていいね
久々に良作が読めた

 

461: 忍法帖【Lv=36,xxxPT】 2011/07/18(月) 01:10:32.78
博士カワイソス

 

465: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2011/07/19(火) 06:02:23.07

『パレット』

エフ博士がコップの並んだテーブルの前に助手を呼んだ。
「ここにあるのは染料の発明品だ。飲めば身体が染料の色に染まる」
「身体の色を変える染料というわけですね。でも、そんな染料なんて飲んでも大丈夫なんでしょうか」
「その点は心配しなくていい。それに、一時的にだけ身体の色が変わるように作ってある」
「それなら安心です。ではひとつ、飲んでみます」
そう言うと、助手は青色の染料が入ったコップを手に取った。
これといって味がなく、水を味わって飲んでいるようなものだった。
ただ、「なんだかとても喉が渇いたのですが」と助手は言った。
「飲んだそばからすぐ作用し始めるからな。喉が渇くのはそのせいだろう」と博士は答える。

時間を置かずに、助手の身体は青くなり始めた。
まず口周りから喉の色が変わり、その後指先まで全身が青くなる。
「すごいですね。塗料を直接塗ったかの様に青いです。触れるものに色が移りそうな気すらします」
「はっはっは、色が移ったりはしないさ。効果がある内は水中で泳いでも色は変わらない」
「そうだ。エフ博士、水を一杯頂けませんか。とても喉が乾いてしまったのです」
「うむ。今持ってこよう」
そう言うと、エフ博士は部屋から出ていった。
助手は、机の上のコップを眺めてエフ博士を待っていた。
そして水の入った瓶があることに気がついた。
助手はそれを飲むことにした。
しかし喉が潤わないばかりか、口元から喉、指先に至るまで助手の色が再び変わり始めた。

ほどなくして部屋に戻ってきたエフ博士は、謎の声に語りかけられた。
「瓶にあった透明な液体を飲んだんです。水だと思ったのに、まさか、透明にする染料だなんて思いませんでした」
エフ博士は驚いたが、助手がいるであろう方向に説明を返した。
「透明になる染料はな、機器を使わずに体内の診察ができるようにと発明したものだ。
 診察箇所に少し塗ることで、部分的に透明にして使うのだが、飲んだ場合は全身が透明になる」
「そうでしたか。それで、どれだけ待てば色が戻るのですか」
「他の色とは違い塗って使うのが主な用法だったから、飲んだ場合は色が戻るまで早くても五か月はかかる」
助手はあわてる。
「そんな。数か月ものあいだ、透明なままで生活しないといけないんですか」
「すまん。だが、そんな時の為の染料でもある。今のところ赤、青、緑の染料しか作れないが、元の色には近付ける。ええと、まず緑の染料を飲んで、緑色になるのを確認したら赤の染料を飲んで・・・」

 

466: 創る名無しに見る名無し 2011/07/21(木) 02:12:45.98
>>465
助手が元々褐色の肌であることを祈るw
ほんとに透明にならないにしても色素を抜くとかいつか現実になりそうな話で、なかなか星新一ぽいですね。さすがです!

 

467: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2011/07/23(土) 00:34:36.58
>>466さん
褐色を作るのもなかなか簡単にはいかないでしょうね。
黒の染料と白の染料ができれば調整がしやすいと思いますが、その場合は完成を待つことになりますw

 

500: ◆PDh25fV0cw 2011/09/14(水) 09:14:43.58

 

『酒場あほうどり』

ある居酒屋のカウンター、そこで青年が酒を飲んでいる。
 中小の企業に入社し、仕事にもなれそれをそつなく回し、それなりの給料をもらい、一人で酒を飲み、気を晴らす日々。周りを見渡せばいくらでもいる、平凡な青年。
 その青年の横、中年のサラリーマン二人が政治の話題で盛り上がっている。だが、その実、自分の生活の不満を政治家にぶつけているだけの独りよがりの陳腐な会話。実に居酒屋らしい会話ではあるが、青年にはそれが不快に思えた。
「実に馬鹿な奴らだ……」
 青年も酒が入っているせいであろうか、心のなかの言葉がポロリと口から出てしまう。
「知り合いでもない相手にいきなり馬鹿とは、それは失礼ですよ」
 ぎょっとして、声の方に振り返る。サラリーマンとは反対側、そこにいつの間にか眼鏡の男が座っていた。
「別にいいだろう、聞こえているわけでもない」
 酒が入り、少し気が大きくなっている青年はその眼鏡の男に悪態をぶつける。
「まあ、たしかにそうですがね。そうやって酒を飲んでいれば、いずれ喧嘩になってしまいますよ」
「それこそ余計なお世話だ。酒ぐらい好きに飲ませてくれ」
 むっとして青年は返す。
ただでさえさっき驚かされて、いい気分で酔っていたのを邪魔されて青年は気が立っていた。
「まあまあ、そう怒らないで。そんなあなたにぴったりの場所がありますよ。いかがですか?」
 けんか腰の青年の言葉を無視し、すっと名刺を差し出す眼鏡の男。
 名刺には『酒場あほうどり支配人 皆鳥(みなどり) 渡(わたる)』と書いてある。
「あほうどり?酒場と書いてあるから居酒屋みたいなところか?」
「ええ、そうです。ですが、少し変わった酒場でして会員制にさせてもらっています」
 会員制と聞いて青年は少し顔をしかめる。
とても高い酒をだすとか、怪しい犯罪の匂いを感じたからだ。
「そう、嫌な顔をしないでください。別に犯罪をしているわけではないですから」
 皆鳥が優しい声色でそういってくる。
その声を聞くと青年も不思議と疑う気が起きず、さすが支配人といったところだろうか。
 さらに皆鳥が驚かせたお詫びと言って居酒屋の勘定を持つといったので青年は機嫌も直り、皆鳥の経営する酒場に行くことになった。

居酒屋から少し歩き、狭い階段のある建物に着く。
その薄暗い階段を降りると大きな扉があらわれた。
扉の横にある機械に皆鳥がカードを通すと、ピッと機械音と鍵が開く音がなる。
「さあ、ここがあほうどりです」
 そういって扉を開く。
中は小さな半円状のステージの周りをテーブルが取り囲み、劇場かライブハウスかといった感じだった。
 テーブルでは、会員と思われる者達が酒を飲んでいる。
「いったい、何をする場所なんですここ?」
 しかし、それには答えず皆鳥はステージを指差す。
するとちょうどなにか始まるところなのか、ステージに誰かがあがってくる。
 ステージに上がった男はそれで何をするでもなくぼーっとしている。
 そうこうする内にステージの上に色々なものが運ばれてくる。
それをみて使おうとしているのだろうが、どうみても使用方法が違う。
「あれは何をしているんだ?」
「なにって見たままのことですよ」
 ステージの上の人物は、控えめにいってもあまり頭がいいように見えず、道具も上手く使えずひたすら滑稽だった。
「あれは演技なのか?」
「いえいえ、あれは本物のあほうですよ。私達はああいったあほうの滑稽な姿を酒の肴として提供しているのですよ」
 青年は嫌な顔をする。どうみても、いい趣味とは思えない。
「まあ、良く思われるひとが多いことはたしかです。ここが会員制なのは、そういった趣味を持っていると知られるとお客様自身の社会的信用も傷がつきかねません。しかし、居酒屋で他人に悪口をいうよりは健全だと思いますよ」
 青年は確かにその通りだと納得する。
こうしてきっちり管理されている分、興が削がれる部分もあるがトラブルになることもない。
「しかし、本物のあほうと言っていたが、それは危ないことをしているのではないのか?」
 青年の疑問はもっともなところだった。
どうひいき目に見ても人権侵害として訴えられてもしかたのないものだ。
「大丈夫ですよ。強制などは決してしていません。当人たちが望んでやっているのです。そんなことをすれば警察が黙っていないでしょうしね。あ、もちろん食事などは当酒場自慢の料理人がきちんと調理しているますので味は保証しますよ、そこはご安心を」
 質問に答えつつしっかりと宣伝を挟んでくる辺り、商売人と言える。
「そうなのか、それは奇特な人がいるものだ。しかし、そうなると料金も高くなるのではないか?」
「いえいえ、そこも勉強させてもらっています。お客様に満足してもらうことが当酒場のモットーですから。チップ料金などもいただきません」
 皆鳥はそういってメニューを青年に渡す。
書かれているメニューはよく行く居酒屋に比べても料金はさほど変わらず、メニューによっては安いぐらいだった。
 しかし、完璧なものでも、いやそれゆえに怪しく感じてしまうというのは青年の生来の疑いぐせのせいであろうか。
「まあ疑う気持ちもわかります、最初にここに来たお客様の反応は大体そうです。しかし、後暗い趣味でも周りも似たもの同士なら気にもならないものです。別に犯罪をしているわけでもないですから警察の心配をする必要もないですしね」
 そういって、椅子を引いて青年を進める。
まだ気乗りしない部分もあったが、物は試しと座って酒とつまみを注文する。
 ステージの上では、あほうとよばれた人が未だに滑稽な醜態をさらしている。
それを周りの客は、暗い笑みを浮かべつつみている。

自分もその気持ちがわからないわけでもない。
あほうを傷つけるでも、痛めつけるでもない、ただ単純にその醜態を眺める。
 多少良心は痛むが、無理やりやっているわけではないらしい、それになにより本人たちは笑顔なのだ。
まあそれは自分たちがどれだけの醜態を晒しているか理解していないだけなのだろうが。
 その光景を見ていると自然と笑みが浮かぶ。
これはどうにも止められるものではないらしい。
自分より下の人間というものを見ると優越感を得てしまうというのは人間の業らしい。
 注文した料理もとても満足できるできのもので、会計を済ませて帰る頃にはこの酒場に対する不信感も消えていた。
「どうですか、ご満足いただけましたか?」
「ああ、とても良かったよ。それで、また来る場合はどうしたらいいんだ?」
「ああ、そのことでしたらこれを」
 そういってカードキーを渡してくる。
酒場の扉をあける開ける際、皆鳥が使用していたものと同じものらしい。
「これが会員証になります。これは入り口のカードリーダーも兼ねています。万が一なくされた場合、名刺の番号にご連絡ください。後、友人をつれてくることもできますが、あまりおすすめは出来ません」
 いわれなくても青年にその気はなかった。
皆鳥もいうように、あまりいい趣味とはいえないものだ。
不快に思う人間も多いだろう。
 それから、青年は居酒屋から、このあほうどりに通うようになった。
 あほうのステージは毎日仕様が変わり、クイズ番組のようになったり、ただ日常のように過ごさせたり、様々だ。
もちろんそれら全てが面白いものとは限らないが、それもこのステージの売りといえた。
テレビのように台本があるわけではないようなので、当然トラブルが起こることもあり、それも見ものなのだ。
 しかし、それも続けるうちに段々と面白みが失せてくる。
そして、その後にやってくるものは、虚しさだった。
 ままならない生活、理不尽な仕事。
それらの事がステージを見ているうちに頭によぎり、それらを笑いながらステージに立つあほうたちにいらだちを覚えるようになってしまった。
そうなってしまえば、もう純粋に楽しむことができない。
「どうかなさいましたか。あまり楽しそうではないですが」
 その青年のもとに、皆鳥がやってくる。不満そうな客が入ればすぐに駆けつける、常に観察していなければできない芸当であろう。さすが、支配人といったところだろう。
「いやどうも、興が乗らなくてね」
 青年はこの感情をどう説明していいものか理解できず曖昧な答えをしてしまう。
しかし、そこは支配人こういった客の悩みも扱い慣れているらしく、すぐに解決策をだしてくる。
「ふむ、それならばあのステージにたってみるというのはどうでしょうか?」
 皆鳥は解決策として、そう答えた。
「少し待ってくれ、あのステージはあほうしか上がれないのだろう。私は、あほうではないぞ」
 学者などのように頭がよいわけではないが、青年を見てあほうと答える人は少ないだろう。
それに、役者というわけでもないので、あほうの演技ができるわけでもない。
無理にやろうとしても、かならずぽかをしてしまうだろう。

「そういったことは心配いりません。少し付いてきてもらえますか」
 そういって、皆鳥は青年をステージの裏に連れて行く。
そこでは、さっきまでステージに上がっていたあほうの人たちがいた。
しかし、全く雰囲気が違う、とても普通のさっきまであんなあほうなことをしていたとは思えない人たちがそこにいた。
 訳がわからないといった表情を浮かべる青年。
そこに皆鳥は答えと言わんばかりに、あるものを取り出す。
「これは遠隔操作スーツです。あとバレないように小型マイクも付いています。あなたはただ笑顔で指示されたとおり口パクをしていればいいだけです」
 ぎょっとして、青年は皆鳥の持つスーツを見る。
遠隔操作で動くそのスーツは、プロの役者が動かしているらしい。
今までのステージが全てこれだとするととても高い実力の持ち主なのだろう。
しかし、すると今まで見ていたものは演技だったということか。
「そういう裏側だったのか。しかし、最初にあったとき舞台にいるのは本物のあほうといったではないか、ひどい嘘ではないか」
「いえいえ、こんなことをするのはあほう以外の何者でもないではないですか。それにあほうになるのもたまにはいいものですよ」
 他の客にも何度も言われてきたことなのだろう、よどみなく答える。
青年もそれに反論することができない。
何かわからず引っかかっていた感情が、実は憧れだったことに気がついてしまったからだ。
「あ、でもステージにでるにあたって少し料金をいただくことになります。でもそこまで高いものではありません。お客様を満足させるためサービスの料金だと思ってくだされば」
 その言葉に、思わず笑ってしまう。
この酒場がとても格安な理由が分かってしまったからだ。
「しかし、いいのかいこんなことをして」
 ステージにでる準備をしながら青年が皆鳥に問いかける。
「こんなことといいますと?」
 質問の意図がわからず、聞き返す皆鳥。
「いや、ステージが演技だと分かってしまったらこの酒場のうりが無くなってしまうじゃないか。お客がひとり減ってしまう」
「いえ、大丈夫ですよ。あなたはきっとまたここに来ますから」
 妙に自信満々な皆鳥。
たしかに、料理はうまいし値段も安い。
それだけでも十分常連になる理由ではあるが、皆鳥の態度を見るとそれだけではないように思える。
「妙に自信があるみたいだな。それはどうしてなんだ」
「本当のことを知っても、舞台を見て笑っている人を見に来ますから。あいつら、あほうだなと」
 そこではたと気がつく。
つまり今までステージを見て笑っているつもりが、実は笑われる立場だったということが。
 しかし、青年はそれを怒る気にはなれなかった。
 踊るあほうに見るあほう。
それを眺めて笑うあほう。
つくづく世の中、あほうばかりである。

 

 

504: 創る名無しに見る名無し 2011/09/14(水) 12:52:52.80
ちょっと長いけどいいオチだ

 

505: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2011/09/14(水) 15:21:09.22
星新一が最初に書いたキツネのショートショートもこういう感じでしたね。
しかしあちらは演技を見る人間側があほうを演じて真に笑い、
こちらは演技する側があほうを演じて真に笑うので、内容は逆です。

 

506: 創る名無しに見る名無し 2011/09/14(水) 16:48:30.53

この店の会員になって通い詰めてる時点で、どの道あほう確定な気がするが……

真にあほうを観察してる立場なのは、儲けを出してる店側か

 

509: ◆PDh25fV0cw 2011/09/14(水) 23:28:09.15
ちょっとネタが危ないかなと思って、だすのためらっていたが、好評でよかった

 

521: ◆PDh25fV0cw 2011/10/18(火) 01:46:00.67

『不幸な人生』

一人の青年が街を歩いている。
青年は生真面目で誠実な性格だが、運やつきといったものを持っていなかった。
外にでれば何らかのトラブルに巻き込まれ、たとえ家にいても決して安心できるものではない。
青年に降ってかかるトラブルは、とても多種多様で備えていたからといって気が抜けるものではなかったからだ。
つい最近のものを上げても、水道管の詰まりや乗り込んだ電車が止まったりといった普通のものから、住んでいる借家に雷が落ちたり、玄関先にトラックが突っ込んできたりといっためずらしいものまでほんとうに様々だ。
毎度毎度、そういったトラブルに巻き込まれるので、生まれてこの方青年は安眠というものをしたことがなかった。

(私は呪われているのだろうか?)
青年はそう考えるが、不思議と仕事などはうまくいっている。
トラブル続きの生活だが、青年が歪んだ性格にならなかったのはそういった運の良さがあるおかげだった。
(自分ははたして、幸運なのか、不幸であるのか)
青年は悩み、街の教会の神父に相談することにした。
「神父様、私の人生はとても不幸続きで心安まる日はありません。どうすれば、この不幸を取り除くことができるのでしょうか」
「それは素晴らしいことではないですか」
自身の告白に対しての、神父の言葉があまりに意外だったのか青年は驚き聞き返した。
「素晴らしいことですか?私にはとてもそうは思えませんが」
「あなたはこうして健康で立派な青年に育っている。数々の不幸もあなたを害することはできていない。これは深い神の寵愛の賜物でしょう。神に感謝しなさい、神はいつもあなたをみていますよ」
神父の言葉に感動した青年は、はっと気が付き、そして深く神に感謝した。

その青年が神に祈りを捧げた教会の遙か上、天上の世界の住人が下を見下ろしていた。
「今回はあの教会が崩れたらしい。とことんトラブルに愛されている人間らしいな」
「青年の驚き様も面白かったが、神父の反応もなかなかだったな」
「そうでなくては私生活を支援している意味が無い。ここまで自然にトラブルを呼び込む人間などそうはいないからな。彼はそう、『不幸』に愛されているのだろう」

 

529: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2011/10/22(土) 20:44:41.86

『緊張のない時代』

青年はなんとなく歩き、同じ場所を周っていただけだと気付いて立ち止まった。
静かな街の中に青年が一人と、傍にロボットが一台立ち尽くした。
このロボットは情報端末として使うことができて、移動の際には変身することで乗り物になれる。
個人の範囲で使いうるすべての機械の役割を、一台でこなせる様にと作られたロボットなのだった。
いつでも指示に従えるように、ロボットは青年の後をついて回った。
青年が立ち止まればロボットも足を止め、青年が歩き出せばロボットはまたそれに倣う。
「お疲れでしたら・・・」とロボットが指示をうかがった。もちろん休憩したい時に椅子に変身させることも容易だ。
応えないで青年は考えている。ロボットが万能なのは嬉しいことなのに・・・と。
歩いていても仕方ないが、立ち止まっていても仕方がないので、青年はまた歩き始めた。
しばらく歩くと年輩の男性がいた。青年と同じくロボットを一台連れている。
「こんにちは」青年と男性は挨拶を交わした。
「なにをなさっていたんですか」と青年が尋ねる。
「していたと言えることはありません。ただなんとなく、立ち止まっていたのです」
「なぜなんでしょうね。いつも歩いていると、いつの間にやら立ち止まってしまいます」
「時間に追われていないからですよ。今でこそ一人に一台ロボットがついていますが、以前は勉強に加えて人間が
 仕事や雑務をすべてこなしていたそうです。面倒くさいと繰り返しぼやきながら何度も時計を見ていたそうです」
ロボットには時計機能もあるが、誰も時計などは見ていない。
この時代、時刻など気にする人がどれだけいるのだろう。
時間に追われて歩き、面倒くさいと思えるほどやることがあった時代の人たちが青年には羨ましかった。
だが、ロボットのいない生活は考えられない。
青年のどの記憶にもロボットがいる。
なにをするにしても、高速で正確に完了させるロボットがいると思うと、自分でやる気がしなかった。
この時代、人間の義務は勉強ぐらいだ。
その勉強さえ、ロボットがいるのに必要なのかという風潮になってきている。
ああ。唯一面倒くさいと思えることがあったか。
もう満ち足りた生活の中で、日々なにをしようか考えることが面倒なのだ。

 

530: 創る名無しに見る名無し 2011/10/26(水) 22:52:11.56

>>529
便利すぎて怠慢になった結果というオチは、星作品でかなりあるね
むしろ星作品の要約のような気がした

 

 

540: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2011/10/31(月) 03:35:51.34
>>530さん
社会発展の末に、人間に代わって機械が考える時代が来れば人間が機械に従うことになります。
立場が逆転している自覚があってもなくても、一度そうなったら人間主権の社会には戻らないでしょうね。
これはその状態の一歩手前ぐらいだと思います。
感想ありがとうございました。

 

557: テスト2 2011/11/26(土) 21:44:14.82

『幸運大陸』

幸運石の発掘で世界は混沌としていた。
幸運石は、石の周囲にいる生物に様々な幸運を与える力がある。
幸運石は主に幸運鉱山から採掘される。
大規模な幸運鉱脈のある土地は栄え、鉱脈が無い国は没落してゆく…
よってこの世界では、鉱脈の所有を巡って古代より争いが絶えないのである。

すまん、誰かオチ考えてくれ!

 

559: 灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM 2011/11/27(日) 03:27:03.18

(続き)————————————————————————

各国は探索隊を結成したり、冒険家を雇って新たな幸運鉱脈を探させた。
「や、あの島はまだ人の手が入っていないかもしれない。上陸するぞ」
絶海の船の上、ある国の探検隊が見つけたのは木々に覆われた島だった。
早速探検隊はその島に入り探索を始めた。
そして、一時間も経たずにあっさりと幸運鉱脈が見つかった。
石の幸運によって幸運石の採掘もとても容易だった。
その要因が幸運鉱脈の枯渇を速めてもいる。

鉱石を割り、隊員が純度を調べる。
「採れた幸運石を調べたところ、不純物が全く見られません」
基本的に、幸運石には非運が混ざりやすかった。
非運を削ぎ取る技術は発展が遅いと言われており、幸運だけの幸運石は生成できないとも言われている。
自分達の強運に騒ぐ隊員達を、隊長は落ち着かせた。
そして改まってこう告げた。
「大陸では幸運格差からくる幸運競争が起きている。どれだけ運がいい者でも、さらに運がいい者がとくじを引き
あえばはずれを引くだろう。幸運を求める声の絶えない大陸に純粋な幸運石など持ち込んだら新たな競争が始まるぞ」
隊員達は静かに考え込んだ。

翌朝、探検隊は幸運石を残して島を出発した。
嵐に遭わぬよう、幸運を願って。

 

560: 創る名無しに見る名無し 2011/11/27(日) 04:34:58.72
ありがとう!感動しました

 

571: 創る名無しに見る名無し 2011/12/18(日) 09:56:57.65

一人の男がいた。夜空を見上げて、それほど長くない話を書いたりするのが好きだった。
彼はそれに熱中したので、いつしか出来上がった話の数は随分になった。

ある時、彼は決めた。
「よし、1000まで話を書こう」
そう決めてはみたものの、それは簡単ではなかった。
時々、無茶な決心をした自分を恨めしく思ったりもしたが、彼は書くのをやめなかった。

しばらくして、彼の作った話の数は997になった。
彼は目標に手が届くところまできたことに興奮を覚えながらも、すこし冷静に考えた。
「こうなるとみんなが 1000get と我先に集まってしまう」
彼はしばらく考えて、残りの3つの話、998話、999話、1000話を同時に完成させることにした。
そうして彼はついに1000の話を完成させた。

すると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「このスレッドは1000を超えました。もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。」
彼は驚いた。よく分からなかったが、言われるがままに新しいスレッドを立てた。
彼は、新しいスレッドに1001話目の話を書いた。

しばらくして彼は死んだ。

天国での生活にも慣れ、いささか退屈しはじめた彼は、ある日神様に聞いた。
「やはり死んでしまうと、地上との交信はまったくもってできないものなのでしょうか」
神様は答えた。
「死んでしまった人間がたびたび地上に戻るのは、やはり具合がよくない」
神様の答えはもっともだった。
ただ、神様はこうも続けた。
「そっと眺めるだけというなら、できなくもないが」
そう言うと、神様は彼の前に一つの画面をさし出した。

彼はそれで久しぶりの地上を見た。
見慣れた顔や、景色がそこにあった。

ある時は自分が書いた未来の話が、画面の中で現実になって繰り広げられていた。
また、ある時は自分が書いた未来の機械が現実にそこにあった。
彼は自分の書いた話を読み返し、そこにそれがあるのを確認すると少し得意になった。

「1000と1話か...」
そう言いながら、彼は画面にうつる新しいスレッドを見て、あっと声を上げた。
彼が最後に書いた1001話目の下にたくさんの新しい話が続いているではないか。

ある夜、神様が彼に聞いた。
「やっぱり天国は退屈かい?」
彼は答えた。
「地上にいたころ私はよく星空を眺めていました。でもここから眺める地上も星が瞬いているみたいです」

 

575: 創る名無しに見る名無し 2011/12/20(火) 00:18:29.38
>>571
乙です。素晴らしい。

 

573: 創る名無しに見る名無し 2011/12/19(月) 00:13:45.07
これは乙。

 

572: 創る名無しに見る名無し 2011/12/19(月) 00:07:40.87
全米が泣いた

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転載元: http://engawa.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281171531/

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